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第一話 待ちぼうけ

二十六時のベルが鳴る。


アタシ、深山那澄みやまなずみは中央公園の噴水前で、待ち惚けを食らっていた。


「―――ったく、来れないなら来れないって連絡しろよっ・・・!」


誰にともなく呟く。

・・・まぁ、別に期待してたわけじゃないし。そもそもが、互いを束縛しあえるカンケイなわけじゃない。そう望んだのもアタシだ。クリスマスイブだろうがなんだろうが、カンケイない。それはそうなんだけど―――


「―――あぁもうっ!」


妙に苛ついて、ブーツの先をベンチにぶつける。


彼―――御陵朔夜みささぎさくやが言い出した。イブの夜、時間が空いたから会わないか、と。別にクリスマスだからって誰かと一緒に居たいわけじゃなかったし、キリスト様の誕生日だかなんだか知らないけど、顔も見たことない他人のバースデーに浮かれてシャンパンを空けるほど、奇特じゃあない。

それでもまぁ?特に予定もなかったし、丁度その日はパパとママも揃って外出すって言ってたから二つ返事でOKしたわけなんだけど。

―――にしたって!自分から誘っといてすっぽかすたぁ、いーいご身分じゃないのアイツっ!

・・・いやまぁ、楽しみにしてたなんてわけじゃないんだけどさ?・・・待ち合わせの時間を二時間過ぎても現れない、クソ憎たらしいアイツの顔を思い浮かべるだけで、腹が立ってくる。

こっちから連絡するのもシャクだから、TELはしてない。一言くらい文句を言ってやろうと思って、この寒空の下、今まで待ってたアタシもアタシだ。

・・・手がかじかむ。コートのポケットに手を入れて、辺りを見渡すと、やっぱカップルだらけ。日付は変わって25日。奇特な人間たちで街が埋め尽される今日は、聖クリスマス。

・・・はぁ、なんだか虚しくなってきた。

馬鹿馬鹿しい、何がクリスマスだ。どーせやることはおんなじじゃん。

マフラーを深く巻きなおして、アタシは空を見上げる。

イルミネーションが照らし出す夜空は、どんよりと雲っているようだ。


(・・・雪になるかも。)


と考えつつ、冷えた体と苛立たしさで、もうどうでもいいや、とばかりに噴水の淵に腰かけた。


―――と、その時、携帯が鳴った。


「―――もしもし朔夜っ!?アンタね―――っ!」


通話ボタンを押した瞬間、アタシはまくしたてた。言いたいことは山ほどあったが、まずは一言、馬鹿野郎と言わなきゃ気が済まなかった。


「―――深山、那澄さんでしょうか?」


「―――え?」


朔夜の声じゃなかったことに、アタシは肩透かしを喰らって口篭る。―――あれ?でも、着信には『さくや』って?


「―――あ、はい、深山ですが―――」


「私、淺川総合病院の津川と申します。―――御陵、朔夜さんのご友人の方ですよね?実は―――」


・・・電話の相手が何を話しているのか理解出来なかった。


「―――けで、集中治療室に―――」


何を言ってるんだこのヒトは。今日はクリスマスで、約束をすっぽかされたアタシは、朔夜に一言文句を―――


「―――大変、難しい状態です。ご家族の方に連絡をと―――」


難しい?―――この状況を理解しろってほうがアタシには難しい。


「―――さん?深山さんっ!?」


「―――あ、はいっ!?」


「・・・聞こえてらっしゃいますか?―――とにかく、淺川総合病院までお越し頂けますか?詳しい話は―――」


「―――はい。・・・はい、わかり・・・ました・・・。」


・・・電話の内容は、ほとんど覚えてない。アタシは、促されるまま、気が付いた時にはタクシーを拾い、病院へと向かっていた。

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