婚約者は幼なじみを優先しますが、私のことが好きなことを知っています
ロズリーは紅茶を飲む。
本来ならば婚約者とのお茶会だった。
婚約者は幼なじみが風邪を引いたので、そのお見舞いに行ってしまった。
これで何回目か。
婚約者は幼なじみを優先する。
使用人が手を運んできた。受け取るロズリーは婚約者からの手紙を読む。書かれている内容はお茶会不参加によるお詫びと、愛の言葉。
ロズリーは溜息の代わりに紅茶を飲んだ。
婚約者はロズリーよりも幼なじみの方を優先する。
ロズリーはいつも一人だった。
父親が文句の手紙を送ろうとしたが、相手は公爵家、こちらは伯爵家。それでも送ろうとしたのを、ロズリーは止めた。
「この婚約は、あちらからの希望なんだぞ!? それなのに何だこの仕打ちは!?」
「まあまあ。カリカリするとハゲますよ」
「お前は何で落ち着いていられるんだ!? まだ一度もお茶会をしたことがないだろ!」
「手紙を貰っていますから」
「手紙か何だってんだ! そんなの破り捨てろ!」
あるときロズリーが紅茶を飲んでいると、幼なじみが先触れもなくやってきて、門の所で騒ぎ立てていた。
ロズリーは溜息の代わりに紅茶を飲むと、幼なじみを応接室に通した。
運ばれてきた紅茶を幼なじみは音を立てながら飲んだ。
「彼と別れなさい」
「出し抜けに何ですか?」
「彼はあたしのことが好きなのよ。だから別れてちょうだい」
ロズリーは溜息の代わりに紅茶を飲んだ。
「言いたいことはそれだけですか?」
「彼はあなたなんて嫌いなの。あなたが縋ってもね」
ドアが勢いよく開いた。
ロズリーは顔を向けると、ドアを勢いよく開けたのは息を切らす婚約者だった。
幼なじみは嬉しそうに呼ぶ。
「アレン!」
婚約者は幼なじみに歩み寄る。
「ロズリーに迷惑をかけるな!」
「え? あなたも別れ話をしにきたんでしょう?」
「そんな訳ないだろう! ロズリーに迷惑かけないように今まで見張っていたのに!」
婚約者はロズリーに眉を下げる。
「すまないロズリー。君に迷惑かけないようにしてきたのに、結局は君に迷惑をかけてしまった」
婚約者はジロリと幼なじみを見た。
「君の家族にはすでに伝えているけど、ロズリーに迷惑をかけたからには、修道院に行ってもらうよ」
「何を言ってるの? 修道院なんて行かないわよ」
「うるさい! さあ連れていってくれ!」
騎士が騒ぐ幼なじみを連れていく。
婚約者はロズリーに向き直って眉を下げた。
「もっと早くこうしたかったが、遅くなってしまってごめんよ」
「あなた。世間では私よりも幼なじみを優先すると思われているわよ。特に私のお父様とか」
「君をただ守りたかったんだ。今まで一人にさせてごめをよ。許してくれるかい?」
「毎日手紙を書いてくれたから、許してあげるわ。さあ座って。初めてのお茶会をしましょう」
婚約者はロズリーの手を取って、キスをした。




