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第1話 お父さん。お母さん。大好きです。

 あまねとしのぶ。捨てられた鬼の子の姉妹。


 お父さん。お母さん。大好きです。


 ある山奥の小さな村に鬼の子が生まれました。

 頭につののある子供が生まれたのです。女の子でした。

 お父さんとお母さんはとってもびっくりしました。

 そして、もしこの子につのがあることが村のみんなに知られてしまったら、きっとこの子は『生まれてこなかったことにされてしまうだろう』と思いました。

 頭につのがある子。

 つまり、この子は『鬼の子』なのです。

 鬼の子は不幸を呼ぶ。だから生まれてきてはいけないのだという、そんな『村の古いおきて』がありました。

 お父さんとお母さんはとても悩みました。そして、この子のことを秘密にして、家の中でこっそりと育てることにしたのです。

 お父さんとお母さんは『この子のことを本当に心から愛していました』。

 だから『生まれてこなかったことにすることなんてできなかったのです』。

 たとえそれが村の古いおきてをやぶることになるとしても。

 この子を守ろうって、そう思ったのです。

 頭につのがある女の子はすくすくと元気に育ちました。

 頭につのがあることのほかには見た目は人と同じ女の子。

 でも、女の子はとても力が強くて、それから体も丈夫で、あまり病気になったりもしませんでした。

 頭につのがある女の子のお父さんとお母さんは数年後にもう一人、子供を授かりました。

 その子は女の子で、そして、やっぱり頭につのがある女の子でした。

 二人目の女の子にもつのがあったことで、お父さんとお母さんはもう子供を授かることはやめることにしました。

 そして頭につのがある鬼の子の姉妹のことを愛しながら、育てることにしたのです。

 鬼の子の姉妹はとても優しい女の子の姉妹でした。

 お父さんとお母さんのいいつけもよく守っていました。

 でも、やっぱり子供なのです。

 どうしてもお外のことが気になってしまって、夜の時刻に、ないしょで家から抜け出して、お外で遊んだりしていました。そんなある日の夜に、いつものようにこっそりとお外に出て遊んでいるときに、村の人に見つかってしまったのです。

 それからはもう本当に大変でした。

 お父さんとお母さんは鬼の子の姉妹を守るために、二人を家から追い出すことにしました。

 このまま家にいたら、『鬼の子の姉妹は村のみんなの手によって、生まれていなかったことにされてしまうからです』。

 鬼の子の姉妹は泣きながら「ごめんなさい! もういいつけをやぶったりしないから、捨てないで! お父さん! お母さん!」と大きな声で言いました。

 でも村の人たちが家の周りにだんだんと集まってくるようになって、鬼の子の姉妹はお父さんとお母さんに「なにがあっても振り返らないで、全力で村が見えなくなるまで走りなさい。私たちのことは忘れなさい。これからは二人だけで生きていきなさい。『どんなことがあっても生きなさい』」と抱きしめながら必死な声で言われて、鬼の子の姉妹は泣きながら、二人で手をつないで家から飛び出して、全力で森の中を走り始めました。

 鬼の子の姉妹はお父さんとお母さんの約束を守って、うしろを振り返らなかったので、そのあと、なにがあったのかは、わかりません。

 やがて夜になって空に月と星が見えるようになると、鬼の子の姉妹は大きな川のあるところまでやってきて、その河原のところで、ばったりと二人で一緒に力尽きるようにして倒れ込みました。

 鬼の子の姉妹はずっと一緒だった大好きなお父さんと大好きなお母さんと離れ離れになって、二人だけになってしまいました。

 そしてお父さんとお母さんに言われた通りに、二人だけで『生きていく』ことにしたのです。

 鬼の子の姉はあまね。

 妹はしのぶという名前でした。

 あまねはこの世界のみんなに愛されるように。

 しのぶはこの世界の誰にも見つからないようにって、願いを込めてお父さんとお母さんが名付けた名前でした。

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