18歳のギャルと映画
俺は駅前でスマホのメッセージを見ながら立っていた。メッセージにはもう少しで着くごめん、ホントにごめん、と書いてある。なぜこんなにも謝ってきているのかと言うと、朝九時に待ち合わせたのに化粧が終わらなくての謝罪だ。そして、今はもう午後一時になろうとしている、俺は四時間待たされているのだがまったく苦にならない。
「気にしなくて大丈夫っと」
そうメッセージを返して俺は心待ちにしていた。こんなオジさんと映画に行くだけなのに四時間化粧してくれていることがたまらなく愛おしかった。
「遅れてごめん」
その声がしたほうに目を向けると、18歳のギャルが立っていた。手にスマホを持ち肩まで出したレースが入った服と、太腿までのタイトなスカートに黒いストッキングでショートブーツを履いていた。俺と並ぶと夜の繁華街にいそうな二人だな。
「あ、ああ大丈夫だ」
「ホントに?怒ってない?」
「なんでだ?」
「怒ってないならいい」
俺が本当になんとも思ってないことを感じとったのか真美が微笑む。
「じゃ、行くぞ」
「うん」
二人並んで改札口に行くと、二人ともICカードにチャージをすることになった。お金が入ってなかったのだ。俺はこの十年コンビニと家との往復で出かけることなどなかったが、18歳の真美が入ってなかったことに少し驚いた。俺は二人分のお金をICカードにチャージをする、真美は出すと言ったが俺は拒否をした。18歳のギャルと出かけられるのだこの位の出費ななんてことない。
「ありがと」
真美のお礼の言葉を聞きながら二人で改札を通り抜けた。通り抜けたとたん、俺の前を歩いていた真美が無言で手に持っていたICカードを人差し指と中指に挟み俺のほうに差し出してきた。察するにこれは俺に持てということだろう、俺がこの行為が当たり前であるかのように真美の手からICカードを受け取り自分の服の外ポケットにしまう。俺はいつからか真美のワガママは全て受け入れる体質になっていた。
「ん」
俺の対応が気に入ったのか真美が優しく微笑む。真美が笑ってくれるならこのくらいなんでもない。
「ん~よしっと」
二人で電車の座席に並んで座っていると、真美が手に持っていたスマホを弄るのを止めて、そう呟いた。そして、また無言で俺に手に持っていたスマホを差し出してきた。俺は当然のようにスマホを受け取り自分の服の内ポケットにしまうが心臓はかなり動揺していた。テレビでギャルがスマホは自分の命と同じくらい大事だと言っていたのを思い出す。なにか?俺はいま命を預けられてるのか?これはもう脈があると思っても良いのじゃないか?そんな事を考えてる俺に真美が残酷な事実を言う。
「ありがと、ごめんね、バックが小さくてスマホが入らない」
見ると確かにスマホが入らないだろう小さなバックだった、いままで真美の肩出しの服装にしか目が行かずバックが目に入ってなかったことに気づかれないように軽口で返す。
「ああ、いいぞこのくらいなんでもない、だがもし無くしても責めるなよ」
「…無くしたら…殺しちゃうから」
真美がいたずらっぽく笑いながら俺に言う。
君になら殺されても良い。
俺は本気でそう思っていた。
ショッピングモールに着き二人で映画を見終わると映画館の外にマッサージチェアーを見つける。映画で長時間座っていたせいか、尻と腰が痛くなっていた俺は真美にマッサージをしようと言い、真美の返事も待たずマッサージチェアーに座ってマッサージを始めた。
「え、と、ま、いいか」
少し躊躇していた真美がマッサージチェアーに腰掛けショートブーツを脱いだ。俺の目が真美の足に集中する、黒いストッキングに包まれた小さく可愛い足を見て思わず思ってしまった。触りたい、と。
そんな俺の思いを察したのか知らないが真美がマッサージを終えると俺のほうを見てきて。
「…ブーツ履かせて」
と、言って脚を俺のほうに差し出してきた。俺は断わる理由など微塵もないので真美の気が変わらないうちに素早く真美の足元まで行き、ストッキングに包まれた脚に触れる。柔らかかった、いままで触ったどんなモノよりも柔らかくそして、愛おしかった。
「…匂い嗅いだら殺すから」
自分から脚を差し出しておいてこの言い草だ。
「ああ、わかった」
俺はわかってなどいなかった。触れている脚に顔を少し近づけ鼻で息を吸う。フローラルな良い匂いしかしなかった。
「そろそろ10分経つけどちゃんと息止めてるよね?」
「…ああ」
…止めてるわけないだろ10分は酸素吸入無しの世界記録だぞ。なんで足をブーツに履かせるくらいで世界記録を目指さないといけないんだ?それに俺がこんなにも時間がかかっているのには理由がある。真美が入れようとすると足を動かして邪魔をするからだ。ただでさえ女性の足をブーツに入れるなんて35年の人生で一度も無いというのに。
「凄い!世界記録更新!」
ケラケラ笑う真美を見て俺も笑みが自然とでる。
この時間が永く続けばいいと、俺は思った。




