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76 リシャール

第二陣でやって来たのは、第一陣の半数程の人数だった。後は、必要に応じて使用人を迎え入れるとの事だった。



「急に来て申し訳無い」

「レナルドさんなら、いつでも大歓迎です!」

「思っていたよりも大きい離宮でビックリしたわ」

「お母さん、お疲れ様」


お母さんと、ギュッとハグをする。


「あの………」


と、恐る恐ると言った感じで声を掛けて来たのは、リシャールだった。ベレニスさんと同じ金髪で、イーデンさんと同じ青色の瞳と竜力。見た目はベレニスさん似の綺麗な顔の男の子だ。ベレニスさんに似ているけど、嫌な感じは全く無い。竜力も、爽やかな感じで心地良い。キースが警戒していないから、私に対しても無害なんだろう。


「リシャール、来てくれたんだね」

「あ……父と母が……本当にすみませんでした!私は、どうやって罪を償えば良いのか───」


と、リシャールは土下座の勢いで、その場に跪いた。


「リシャール……」


そのリシャールの背中に手を当てて、声を掛けたのはお母さん。そのお母さんの目は優しいけど、少し悲しそうにも見える。


「リシャール、何度も言うけど、貴方は何も悪くないのよ。貴方は、イーデンとベレニスの子供だと言う事なだけで、貴方が何かをした訳じゃない。親の罪を、子の貴方が償う必要は無いのよ」

「ユマ様……でも………」


「リシャールは、何も知らなかったんだよね?」

「……はい…………でも……」


ベレニスさんとイーデンさんが、愛する子に真実を話す筈がない。だから、あのパーティーで毒を盛る前に、リシャールを部屋に下がらせたんだろうから。


「それに、イーデンさんとベレニスさんは処罰を受けて北領に行ったのだから、それ以上の償いは必要無いの。私がリシャールの身を引き受けたのは、リシャールから謝罪が欲しくてしたんじゃなくて、これからどうしたいのかを、一緒に考えて行こうと思ったから」


リシャールは、何も悪くないのだ。“知らない事が罪”と言う事もあるけど、それにも当てはまらない。

聖女由茉が実父の元恋人で、守護竜茉白が異母姉と知り、私達が両親を北領に送った事を知った今でも、私達に敵意を向ける事も恨む事もしないのだから。


「取り敢えず、色々大変だったと思うから、今はゆっくり休んで、それから話をしましょう」

「はい……ありがとう……ございます……」


泣きながらお礼を言うリシャールを、お母さんが立つように促し、イネスがリシャールを支えるようにして客室へと連れて行った。



「かなり憔悴してるね」

「あれでも、だいぶ落ち着いたのよ。あまり食事もせずにずっと泣いてて……見てて辛かったわ……本当に、あの2人は色んな意味で赦せないわ……」


リシャールの為に、愚かな行動はしない─と言う選択肢は無かったのだろうか?


「ここで、元気になってくれたら良いけど……」




******


リシャールの事は気にはなりつつも、私は私で守護竜としての執務や訓練と忙しい毎日で、『そろそろ話をしましょう』と、お母さんに言われて、ようやくリシャールと話す時間を取る事ができたのは、入宮してから1ヶ月を過ぎた頃だった。



「今日は、時間を作っていただいて、ありがとうございます」

「なかなか時間が取れなくて、遅くなってごめんね」

「いえ、こちらこそ、忙しい中時間を作っていただいて、申し訳無いです」


ー本当に、()()ベレニスさんの子なの?ー


と思わずにはいられない。

久し振りに会ったリシャールは、1ヶ月前よりも顔色が良くなっていた。お母さんが食事の世話を必死にやっていたそうで、ご飯もしっかり食べれるようになったらしい。

この1ヶ月で、キースが調べて分かった事。

リシャールは3年間学校に行っていた間、成績は常に10位以内。父親は竜騎士だったけど、本人は騎士よりも文官に興味があるらしく、ウィンストン伯爵家では領地運営の勉強などをしていたそうだ。正式な婚約者は居なかったそうだけど、候補の令嬢は数名居たそうだ。そりゃそうだ。父親が竜騎士副団長で、伯爵家の嫡男だ。おまけに綺麗な顔の男の子ときたら、モテない訳がない。でも───両親がこうなってしまって、家名も失ってしまった。生活が180度変わってしまったのだ。リシャール本人は、何も悪くないのに。


「ここでの生活はどお?」

「皆さんには良くしていただいて……特に、ユマ様には本当に感謝しています。でも、こんなに良くしてもらう資格など無いので、申し訳無くて……」


俯いて、ギュッと手を握りしめるリシャール。元気になっても、罪悪感は拭えていないのだろう。『リシャールは悪くない』と行ったところで、納得しないだろうから──


「それじゃあ、領地運営のお手伝いをしてくれる?」

「領地運営……ですか?」


リシャールに、ここに居ても良いと言う理由を作ってあげるしかない。





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