表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/78

73 北の守護竜

*竜王バージル視点*




「はい。終わりました。後の事は、竜王陛下にお任せしても良いですか?」

「あぁ、勿論だ。後は俺に任せて、ユマはゆっくり休むと良い」

「ありがとうございます。宜しくお願いします」


そう言って地下牢から出て行くユマは、どこかホッとしたような、それでも寂しそうな顔をしていた。そのユマに付き添うレナルド。()()2()()だと思うが、お互い自分の事には疎そうだから──


「まだまだ──か?」


ガシャンッ───


「イーデン!どうして!?ユマ!」

「ベレニス=ウィンストン。まだ分からないのか?こうなったのは、自分達のせいだと言う事を。三度目は無いと言っただろう?」


ベレニスのした事は赦されるものではない。ただ、番がかつての恋人に()()()()()と言うのは、辛い事なんだろうと言う事も考慮した。結局は、イーデンの曖昧な態度がこの結果をもたらしたのだ。


「イーデン、何か言う事はあるか?」

「………竜王陛下、私は………どこで間違ってしまったのでしょうか?番のベレニスを愛しく思っていたのは確かだったのに。ユマの存在を感じれば、心がざわついて……でも、目にすると憎くもあって………でも、今はただ、失ってしまった事が……辛いのです」


何を失って辛いのか?


「お前は、ベレニスに出会った時にベレニスを選んだのだ。それならば、ベレニスを大切にすべきだったんだ。ユマを追い掛けた事──それがお前の最初の間違いだろうな。その行動が、ベレニスを不安にさせて、魔族と手を組んで攻撃するまでになったんだ。更に、それを止める事も無く、ユマとマシロを攻撃したのだから、お前が全てを失ったとしても、それは自業自得だ」


ユマがイーデンから奪ったのは、番の本能。この2人は番を失ったのだ。番を失った竜が辿る道は最悪でしかない。それでも、この2人にはまだ救いがある。番の本能が無くなっても、お互いが愛し合っていれば狂い竜にはならず、穏やかに余生を過ごす事ができる。ただ、イーデンはかなりの竜力が失われているから、ベレニスよりも早くに死ぬ事にはなるだろう。そうすれば、ベレニスが狂い竜になるのは簡単に予想できる。


「お前達は、俺の領で、俺の管理の元に幽閉する」

「幽閉………」


北の守護竜が管理するのは北の領地。作物よりも鉱山資源での収入がメインだ。魔石も多く採れることから、国内では一番潤っている領地と言える。

だが、北領には知られていない土地がある。その土地が、北の守護竜が管理する土地だ。その土地は浮き島になっている上、結界を張っているから、外部からはその浮き島を目にする事はできないし、許しがなければ出入りする事はできない。狂った竜を閉じ込めておく浮き島─牢獄だ。

狂った竜達は、お互い我を忘れて攻撃し合う。大怪我をしても止まらず動き続け、数日も経てば出血多量で死ぬ──だから、態々手を下さなくとも勝手に処理ができるのだ。それでも──と言う場合は、俺が直接その狂い竜の竜力を奪うが、そんな事は滅多に無い。


西の守護竜の別名は“浄化の守護竜”

北の守護竜の別名は“終焉の守護竜”


「反省して狂い竜にもならなければ、牢獄からは出られるだろう」


これも滅多に無いが、狂い竜から元の竜に戻る事ができれば牢獄からは出る事ができる。


「お前次第だ」

『イーデン=ウィンストン次第よ』


「2人の転送の準備を頼む」

「承知しました」


後ろに控えていたネグロに指示をした後、俺は地下牢から出た。





******



2人の北領への転送が済んでから2日後──


「後は、マシロ達の西の離宮の入宮だけだな」

「あちらの準備は調っているので、後はマシロ様をお迎えするだけです」

「ようやくだな。で、ユマには申し訳無いが、ユマの入宮は翌日になる」

「分かりました」


ユマも、マシロと一緒に西領の離宮で暮らす事になった。母娘なのだから当たり前の事だ。唯一の気掛かりも無くなった。これからは、竜王国で穏やかに過ごしてもらいたい。


「ところで、レナルドはどうするんだ?」

「レナルドさん……ですか?」


『何が?』と言いたげな顔をするユマ。


「ふむ………」


やっぱり、何も分かっていないようだ。それなら、俺が敢えて言う必要はないだろう。


「いや……ユマとマシロの事だから、お世話になったレナルドの事を気にしているのではないか?と思っただけだ」

「あ、それなら、落ち着いたらマシロとお菓子を沢山作って、離宮に招待しようって話をしてます」


ふふっ…と笑うユマの顔は、何とも嬉しそうな顔だ。これで無自覚なのだから、異世界の女性はコレが標準なのか?マシロとカイルスもなかなか進まない。


「もう少し……面白くなっても良いのだがなぁ」

「?」

「竜王陛下、ぶっちゃけ過ぎです」


意味が分からない─と言う顔をするユマと、苦笑するネグロ。これからどうなるのか───


「楽しみだ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ