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72 浄化

*由茉視点*



「本当に、ユマの予想通りになったな」 

「赤ワインをドレスに掛けられなかったのは残念だったわ」


パーティーで、ドレスに赤ワインを掛けられる─と言う、ラノベのあるあるを体験してみたかった。


「まぁ、“毒を盛られる”体験はできたけど」

「いや、その思考はどうかと思うが……ユマらしいと言えばユマらしいのか?まぁ、兎に角、体は大丈夫なんだな?」

「ええ、大丈夫よ」


ベレニスがドリンクに仕込んでいたのは把握済みだったから、飲む前に浄化を掛けた。本当に、ベレニスは最後まで単純だった。イーデンは、どこまで気付いていたのか、気付いていなかったのか。それも、もうどうでも良い事だ。


「私はこのまま地下牢に向かうけど、レナルドさんはどうする?」

「私も行くよ。大丈夫なのは分かっているけど、やっぱり心配なのは心配だからね」

「ふふっ…ありがとう。それじゃあ、サクッと仕上げに行きますか」


ーもう、容赦する必要は無いー






「気分はどう?」

「ユマ!」


地下牢に来ると、ベレニスとイーデンは別々の部屋に入れられていた。鉄格子越しに私を睨んでいるベレニスとは対象的に、イーデンは黙ったまま私を見ている。


「気分は最悪よ。ユマは、さぞかし気分が良いんでしょうね…本当に、腹が立つわ!」


やっぱり、反省などする様子もないようだ。


「私とイーデンが恋仲だったのは、番の貴方が現れる迄の話よ。番の貴方が現れてから、私がイーデンを見る事は無かった。貴方が私に敵意を剥き出しにして攻撃して来た事は、正直、そこまで他人を愛せて凄いとさえ思った。だから、いくら私に攻撃して来ようとも、“可愛らしい嫉妬ね”ぐらいで受け流していたのよ」


ベレニスが竜人だとしても、どう見ても私の方が強かったから。いざとなれば、なんとでもできたから。


「でもね、貴方が茉白を攻撃対象にするのなら、話は別でね。貴方がイーデンを愛しているように、私の一番大切なものは茉白なの。私の最愛の娘の茉白を攻撃されたら、私も黙ってられないのよ。茉白にとって危険や障害となるのなら、私はそれを排除していくの。それが貴方よ」


茉白は竜人で、私は人間。となると、どう頑張っても私の方が遥かに早く死んでしまう。でも、ベレニスもイーデンも竜人だから、私が死んだ後も生き続ける。勿論、茉白にはキースやカイルスさん達も居るから大丈夫だろうけど、私が大丈夫じゃない。茉白には、余計な心配事を残したくはない。その考えが自分勝手だと言われても。


「二度は赦したけど、三度目は無いと言う忠告を無視して行動したのは貴方よ。自業自得よ」


そう言って、私はベレニスから離れてイーデンの目の前に立つ。


「私は、本当に、貴方達の幸せを願っていました。でも、貴方達は違ったんですね。私と茉白の命を脅かしたんです」

「ユマ……私は………」


鉄格子の隙間から手を入れて、イーデンの手を握る。


「イーデンに触らないで!」


ガシャンッ─と、鉄格子を叩いてベレニスが叫んでいるのを無視して、私はイーデンの手を握ったまま、少しずつ私の魔力を流していく。


「これ……は………」

「…………」


私がイーデンに流すのは、“浄化”の魔法。


『浄化の魔法の応用は半端無い』


本当に半端無い。聖女として努力した分、私にきっちりと()()()()()のだ。自分でもチートだと思っている。浄化は、色んなものを()()()にしてくれる。勿論、浄化の魔法が使えるからと言って、誰でもできる訳じゃない。


「ユマ……これは…」

「ユマ!一体、イーデンに何を───っ!?」


少しずつ、イーデンから失われて行くのは───


「あぁ……止めて!お願い!止めて!!イーデン!!」


“番としての本能”


それと同じように、竜力も半分程は失っただろうか?

番としての本能を失えば、イーデンはもう、二度とベレニスに対して番だと言う認識ができなくなる。でも、ただ、それだけだ。イーデンが本当にベレニスを愛しているのなら、認識できなくても何も変わる事はない。ただ、竜力をかなり失ったから、本来の寿命よりは短くなる。


どちらかの番が早くに死んでしまったら、残された番は、番を失った悲しみで病んで行き、最後には狂い竜となり、竜力が暴走して死んでしまう。


イーデンから番としての本能がなくなると、ベレニスからすれば、“番を失った”のと同じ状態となる。でも、イーデンがベレニスを本当に愛しているのなら、そこに番としての認識がなくとも、愛されて満たされれば、狂い竜にならずに済む事もある。だから、これからこの2人がどうなるのかは───


「イーデン=ウィンストン次第よ」


握っていた手を離しても、イーデンは黙ったまま、自分の手をじっと見つめたまま動かない。


「終わったか?」


と、タイミングよくやって来たのは、竜王バージル様だった。






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