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70 祝賀パーティー③

休憩を終えてから、真っ先に向かったのは──


「リオナさん!」

「マシロ!」


ギュッと抱きつくと、リオナさんもギュッと抱きしめてくれた。


「お久し振りです」

「本当に久し振りね。元気そうで良かったわ。あ、“マシロ様”と呼ぶべきですね。まさか、マシロ様が西の守護竜様だったとは……ある意味納得と言うところね。改めて、覚醒おめでとうございます」

「ありがとうございます。でも、リオナさんには今迄通り“マシロ”と呼んで欲しいです。敬語も無しで」

「分かったわ」

「マシロ、覚醒おめでとう。本当に元気そうで良かった」

「ルパートさん、ありがとうございます」


この世界で私を助けてくれた、お姉さんとお兄さんのような2人。何一つお礼もできていないままだ。


「ところで、“ある意味納得”とはどう言う意味ですか?」

「あぁ、実はね───」


私を初めて見た時、外見だけで言うとボロボロの幼い女の子なのに、身体が緊張して一瞬動けなかったそうで、それがどうしてなのか?と、思っていたそうだ。


「私は獣人だから、本能的にマシロに流れる竜力と、隠れていた守護竜の力に反応していたのかと思ったのよ」


そんな様子には、全く気付かなかった。リオナさんもルパートさんも、私に対していつも優しかっただけだった。 


「私達、1週間は竜王国に滞在する予定だから、時間があったらお茶でもしない?私達は、いつでも構わないから」

「したいです!予定を確認してから、連絡をしても良いですか?」

「勿論よ。それじゃあ、他の人達もマシロとの挨拶を待ってるみたいだら、私達はこの辺で……」


と、リオナさんとルパートさんが下がった後、また他国の色んな人からの挨拶を延々と受けて行った。




******


「軽食にどうぞ」

「ありがとうございます」


ようやく挨拶も一段落したのは、夜の9時頃だった。

お母さんと話していると、落ち着いたせいか「キュルキュル」とお腹が鳴り、『軽く何か食べて来なさい、ここは大丈夫だから』と言われて、テラスに出て軽食をとる事にした。


「恥ずかしい!」

「大丈夫です。『可愛い』で済んでます」


私を褒める事しかしないキースに言われても、フォローにならない。

テラスには小さなテーブルとベンチがあり、そこに紅茶といくつかのプチケーキが用意されていた。


「んー美味しい!やっぱり、疲れた時の甘味は格別だなぁ」

「紅茶には、少量ですがハチミツを入れてます」


ーキースが優秀過ぎるー


「ありがとう。ところで、このパーティーはいつまで続くの?」

「このパーティーには限らず、どのパーティーでも日付けが変わる頃迄続きます。ですから、王城で開かれるパーティーがある翌日は、王城勤務は休みになったり半休になったりします」


竜王国の勤務形態はホワイトだ。週休2日が基本で、毎月リフレッシュ休暇みたいなのもある。労働時間は1日10時間以内。超えた場合は、翌日を半休にしたりする。“社畜”とは無縁な世界だ。


「美味しかった。ごちそうさまでした」

「あぁ、“いただきます”と“ごちそうさま”は、マシロ様の世界での言葉でしたね。良い言葉ですよね」


この世界では『食に感謝を』と言ってから食べるけど、食べ終わった時は、特に何も言う事は無い。


「よし、そろそろホールに───」とベンチから立ち上がった時、閉ざされた扉の向こうのホールの方から悲鳴が聞こえた。


「マシロ様!」


慌ててやって来たのはマイラ。


「どうしたの?」


「それが、ユマ様が倒れてしまわれて──」

「え────」





「ベレニス!何をした!?」

「ふふ……ははっ」

「お母さん!!」


急いで駆けつけると、倒れているお母さんの上体を起こして、レナルドさんが片膝をついて抱き抱えていた。その横に、ベレニスさんの両手を背中に回して拘束しているアルマンさんと、イーデンさんを押さえているカイルスさんが居た。


「私は、ただ聖女ユマ様とワインを飲んだだけよ」


足元に割れたグラスと赤色の液体。ただ、鮮やかな赤色の液体には黒いモヤの様な物が見える。


そう。私には見えるのだ。何故見えるのか?“浄化の守護竜”としての本能なのかもしれない。その黒いモヤに手を翳して集めて玉状にした物を二つ作り、一つをキースに手渡し、もう一つをギュッと握る。どうしてこんな事ができるのか?自分でも分からない事だらけだ。


「キース、それをバージル様に渡して」

「承知しました」


竜王をはじめ、他の守護竜が静かに見守ってくれている。


「ベレニスさん、ラストチャンスだと言われませんでしたか?」

「何を?私は何もしてないわよ」

「……このワインに、“ボラム”が入ってますよね?」


ラストチャンスを潰したのは、ベレニスさん本人だ。もう、許容範囲を超えたのだから、こっちも容赦はしない。




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