67 お披露目
守護竜の正装は、性別関係無くピタッとしたズボンにロングブーツ。上着は前面は短くて、背面は膝辺りまである。色はそれぞれの色で、私はロングブーツは黒色だけど、それ以外は白色だ。
「汚したら──と思うと、何もできない!」
と心配していると、服には魔法が掛けられているらしく、汚れを弾いてくれると言う。何ともファンタジーな世界だ。
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お披露目は、王都にある大神殿で執り行われた。真っ白な大理石で造られた神殿で、聖堂内には竜王国だけではなく、他国からの賓客がズラリと並んで座っていいる。
その賓客に背を向けて立ち、私の背後に3人の守護竜が並び立ち、更にその後ろに4人の側衛が並び立っている。そして、私と向かい合って立っているのは大神官と呼ばれる人だ。
「西の守護竜、白竜マシロ様をお迎えできた事、心よりお慶び申し上げます。西の穴が埋まり、これからの竜王国は安寧へと向かいましょう。白竜マシロ様、竜王国をお護りいただきますよう、お願い申し上げます」
「守護竜、白竜マシロ、竜王国安寧の為精進して参ります」
そう答えると、私の身体から白い光が溢れ出し、聖堂全体に広がりどよめきが起こった。
「だ…大神官様…すみません。何故光が溢れ出したのか、自分でも分かりません!」
身体から光が溢れ出すなんて聞いてない。溢れ出させている訳でもない。勝手に溢れ出たから、何故出たのかサッパリ分からない。でも、この現象が異例なんだと言う事だけは分かる。だから、取り敢えず目の前に居る大神官様にこっそりと謝る。
「マシロ様が謝る必要はありません。マシロ様の、これから頑張ろうと言う気持ちが溢れてしまったんでしょう」
ーフォロー上手な上司かな?ー
「ありがとうございます」
「お礼も要りませんよ…ふふっ……」
優しく微笑む大神官は、聖人君子のイメージ通りな女性だ。大神官の微笑みを見るだけで、心が温かくなった。
光が収まった後、聖堂から2階にあるバルコニーに出ると、眼下に居る沢山の人達が歓声を上げた。あまりの声の大きさにビックリして、思わず竜化しそうになったのは秘密だ。キースだけはヘニョッとした顔になっていたから、気付いているかもしれないけど。
「手を振ってあげると喜ぶと思うわよ」と、ローゼさんに言われて「私如きで?」と思いながらも手を振って歓声に応えると、更に歓声が沸き起こった。
それから、守護竜4人が竜化し王城へと飛んで行く──と言うのが、お披露目の流れだった。
3mの巨体の竜3体と、1mにも満たない小さな小さな子竜1体の飛行。
黒竜はジャガーを、赤竜は狐を、青竜は狼をそれぞれの背中に乗せて悠然と飛んでいるのに、白竜は隼を背負って飛ぶ事ができないから、キースに魔法を掛けてもらって、自力で飛んで私に付いて来ている。
ーごめんね、キースー
私は王城に着くまで、心の中で謝り続けた。
*キース視点*
「ウチの主が可愛い!!」
「それな!」
俺の叫びに同調したのはカーミンさん。
俺は隼になると50cmあるかないかで、マシロ様は1mにも満たないから、マシロ様の背中に乗る事ができず、竜の飛行速度に追い付く為に魔法を掛けてもらい、自力で王城迄飛んで来た。マシロ様が飛行にまだ慣れていないと言う事もあった。さっきの飛行もそうだ。必死にパタパタと飛んでいる姿が、また何とも言えない可愛さがあった。巨体の竜3体に見守られながら必死に飛ぶ子竜。
「俺が背負って飛べば良かった!」
「それは無理だからね?寝言は寝てから言いなさい」
冷静に突っ込むのはアヌルさん。そう言いながらも、顔が緩んでいる。
マシロ様は必死だったから、耳に入っていなかっただろうけど、『可愛い!』『頑張れ!』と言う声が飛び交っていた。きっと、これが子竜に対しての普通の反応だ。攻撃するなどあの女だけだ。
「あのマシロ様の光は凄かったな……」
と、感心しているのはネグロさん。
無意識のうちに溢れ出したと言う白い光。浄化の守護竜だからか、あの場の空気が一気に軽くなり、光を浴びた俺の体も軽くなった。しかも、あれ程の光を放ちながら、マシロ様の竜力には何の変化も無く、疲れた様子も無く王城迄飛んで帰って来た。
「これで、“子竜だから”と舐められる事は無くなったかもな」
「後はウィンストン伯爵夫妻か」
大神殿で執り行われたお披露目には、イーデン様とあの女は参加していない。お披露目に参加できるのは、招待された者だけ。自由参加できる広場にも来ていなかったが、報告によると、夕方から開催される祝賀パーティーには参加するようだ。
「人目の多いところでやらかすとは思わないが、ユマ様も参加するから、気を引き締めておかないとな」
マシロ様、ユマ様、イーデン様、ベレニス。この4人が勢揃いする。何事も起こらなければ良いけど──
ーそう言う訳にはいかないだろうなー
そして、祝賀パーティーの時間を迎えた。




