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66 近衛

「茉白の近衛が決まったそうよ」


と、お母さんから聞かされたのが昨日の事だった。




「マイラ=ペラグラントです。西の守護竜様の近衛になれて光栄です」

「アルマン=サンチェスです。宜しくお願いします」

「カイルス=サリアスです。宜しくお願いします」


そして今日、その近衛3人と初対面となった。

まさかの、カイルスさんとアルマンさん。マイラさんは女性の竜騎士で、金髪で瞳は若草色。爽やかな竜力を纏っている。


「護衛を受け入れてくれて、ありがとう」


ありがとうと言いながらも、申し訳無い気持ちもある。聞くところによると、3人共竜王付きの竜騎士で実力もトップクラス。エリートな3人が新人子竜の私の近衛へと異動となった。左遷ではないけど、格下げになった事に変わりはない。


「マシロ様、変な事は考えないで下さいね。違いますからね」


と、言い切るのはキース。


「え?」

「“仕える相手が格下になってしまって、申し訳無い”とか思っていますよね?違いますからね」


ーどうして分かったの!?ー


「分かりますよ。マシロ様は素直なので。兎に角、守護竜の近衛に付く事は、本当に光栄な事なんです」

「そうです!私がマシロ様の近衛に指名された時、周りからは羨ましがられて大変だったんです!」


パッと満面の笑顔になったのはマイラさん。


「西の守護竜に近衛を付ける─と話が出た時、かなりの数の立候補者が出たんです。3人のうち2人はすでに決まっていて残り一枠だったので、本当に大変だったんです。ある意味、女で良かった!と初めて思いました!」


女で良かった──とは?と、首を傾げる。


「近衛が男性だけだと、どうしても護衛が無理な時も出て来るので、女性の近衛を選ぶ事になったと言う事です」

「なるほど………」


意味が分かって納得した事と同時に、私はこれからキースには隠し事ができないかもしれない事を悟った。


「えっと……カイルスさんと、アルマンさんも、これからも宜しくお願いしますね」


どんな人が近衛になるのか?と不安だったけど、慣れている人で良かった。既に信頼のある2人で安心感もある。それに──


ーカイルスさんが側に居てくれるのは、正直に嬉しいー


私は西の守護竜だから、西の離宮に住む事になる。そうなれば、王都に住むカイルスさんとは会えなくなると思っていた。


「それと、今は西の離宮の準備でここには居ませんが、イネスが侍女長としてマシロ様に付く予定です」


イネスさんも、以前にお世話になった人だ。きっと、竜王国、この世界に慣れてない私に色々考慮してくれたんだろう。その気遣いが嬉しい。バージルさんに、お礼をしないとだよね。


「今日の残りの予定は、守護竜の正装が届いたので、試着をしていただきます。それと、パーティーで着るドレスも──」

「ドレス!?私が!?着るの!?」


ドレスを着るどころか、作っているのも知らなかった。


「はい。マシロ様もドレスを着てもらいます。ユマ様とお揃いで作っています。そこで、ユマ様の存在も改めて公表する予定です」


確かに。これからこの世界で生きて行くのなら、もうお母さんの存在を隠すのは無理だ。

お母さんは“救国の聖女”であり“戦闘の聖女”な上に、これからは“西の守護竜の母”と言う名も付いて来る事になる。


「もういっその事、主役は“由茉”で良くない?」


私はただの新米な子竜に過ぎない。お母さんと並んでお披露目されたところで、霞んでしまうに違いない。私が()()()で良いんじゃないかな?


「馬鹿な事言わないの。竜王国にとって、守護竜がどれだけ大切な存在かは、竜王国だけに限らずこの世界中が知ってる事よ。私は、一時的にその穴埋めをしただけに過ぎないのよ」


その“一時的な穴埋め”ができた事が凄い事だよね?と、言い返したところで、また言い返されるだけだから、言い返す事はしない。


「マシロ様は自己肯定感が低過ぎるんです。マシロ様はまだ上手く竜力を扱えないだけで、他の守護竜様達にも劣らない程の竜力をお持ちですから。それに、子竜の姿は可愛いしかありませんから、自信を持って下さい!」


ー「可愛い」は要らないよね?ー


「キースの言う通り、マシロは竜人と認識してから1年程で竜力に慣れて来て竜化もできたんだ。それは、この世界で生まれた竜人よりも凄い事なんだ。竜人は、もっとゆっくり時間を掛けてするものだから」


キースは私を褒める事しかしないから「本当に?」と疑ってしまうけど、竜人のアルマンさんに褒められると、それがお世辞だったとしても嬉しい。


「それに、子竜で守護竜と言うのは前例が無い程珍しいから、マシロが一番凄いのかもしれないね」


それは、子竜でも人間?としては成人を迎えているからかもしれないけど。


「兎に角、茉白はもっと自信を持って良いと思うわ。それに、茉白は、私にとっては自慢の娘よ。堂々としていれば良いわ」

「ありがとう。私にとっても、お母さんは私にとって自慢しかないお母さんよ」




お披露目迄、後2週間だ。






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