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65 ラストチャンス

*竜王バージル視点*




「竜王陛下、この度は申し訳ございませんでした」


マシロとの対面を終えてやって来たイーデンは、少しスッキリしたような顔をしている。


「謝る相手は俺ではないし、まだ全てが丸く収まった訳ではない」


謝る相手はユマとマシロ。まだ残っている問題は、勿論ベレニスだ。マシロの魔力が完全に変化した事で、イーデンは何やら憑き物が落ちたような感じになった。同伴したキースとカイルスからの緊急の報告が無いと言う事は、対面して何も問題が無かったと言う事だ。故に、残る問題はベレニスのみ。それが一番厄介なのだが。


「ベレニス夫人の様子はどうだ?」

「今は落ち着いていますが、あの隔離された部屋から出たらどうなるのかは、正直なところ分かりません。ですから、これ以上何もしないように、ベレニスを注視していくと、マシロ様と約束して来ました」


ようやく、イーデンがマトモな思考に戻ったと言うところか。


「そうか。なら、話は早いな。ベレニス夫人がやらかしたのは今回が2度目だ。温情はこれまで。もし3度目があれば夫人だけではなく、イーデン、お前も処罰の対象になると心得ておくように」

「承知しております」


キースが死にかけた


キースは()()()鳥獣人ではなかった。西の守護竜の側衛だった。もし、キースが側衛として覚醒する前に死んでいたら、未だに西の守護竜は不在のままだったのだ。それは、竜王国が更に不安定になる事を意味する。運良くユマのお陰で助かり、100年ぶりにようやく西の守護竜が誕生した。その西の守護竜マシロを、また攻撃するような事があれば、他の守護竜達も黙ってはいないだろう。


「本当に、マシロ様には申し訳無く思っています。どうして私があんな行動を取ってしまったのか……ただ、マシロ様と話しているうちに、少しずつ落ち着いたように思います」

「ふむ………」


思わぬ行動を取ってしまったのは、自分と番との子以外の者から自分の竜力が感じられたから──と言うものが考えられる。

落ち着いた──と言うのは、マシロが“浄化の守護竜”だからか。それとも、ユマから癒やしの力を引き継いでいるのか。兎に角、マシロの能力について、少し調べて見た方が良いだろう。


「イーデンがマトモに落ち着いて良かった。取り敢えず、マシロのお披露目がされる迄、お前には休暇を言い渡す。ベレニス夫人を注視するように」

「承知しました」


イーデンが素直に受け入れてくれて良かった。

竜騎士副団長でありながら、守護竜のお披露目迄休暇と言うのは、ある意味での処罰だ。そして、番を監視しろと言う事だ。竜王(オレ)や他の守護竜が、ベレニスを信用していないと言う事でもある。


「祝賀パーティーで、夫婦揃って会える事を祈っている」

「御意」


イーデンは、静かに返事をして頭を下げた後、執務室から出て行った。


祝賀パーティーで夫婦揃って参加し、何事も無くマシロに直接挨拶をする──それが()()()()()()()となるだろう。それができなければ、ベレニスが態度を改めていないと判断せざるを得ない。イーデンは優秀な竜騎士だ。


「できれば失いたくはないが………」

「微妙なところですね」


と言うのは側衛のネグロ。ネグロだけではなく、4人の側衛達はベレニスへの嫌悪感を隠そうともしない。キースに限っては敵対心も露わにしている。側衛は俺達よりも他人の機微に敏い。そんな側衛がそうなのだから、難しいところだろう。


「カイルスとアルマンも抜けるとなると、かなりの痛手だな」

「それでも、西の守護竜は重要ですし、可愛い子竜ですからね。第一優先です」


ー“可愛い”は要るのか?は別としてー


「そうだな」


浄化の守護竜が第一優先である事は確かだ。


「あと一人は、目星は付けているのか?」

「はい。団長と私とで相談して、3人見ています」

「近衛は可能な限り早目に決めて、マシロとユマの確認を取るように」

「承知しました」


「陛下失礼致します」と、そこへ侍従長が親書を持ってやって来た。


魔王(ダグラス)からか」


王弟ダミアンについての親書だろう。


「それと、こちらは白竜マシロ様に──との事です」

「マシロに?」


もう一通の親書──では無く、仄かにホワイトリリーの香りがする手紙。


「まさか……プラータ王子か………」


白竜マシロにホワイトリリーの香り付けの手紙。見た目に騙されてはいけない。父親のダグラスが俺と同じぐらいなのだから、王子はそれなりに()()()なのだ。

守護竜は番の存在は喪う事にはなるが、恋愛や結婚をしてはいけないと言う事は無い。守護竜の相手には、それなりに色んな誓約や制約を掛ける事にはなるが、基本は自由だ。


「マシロは、色々と厄介な者に好かれるのだな」

「可愛らしいですからね」


ーユマとカイルスとキースが居れば、大丈夫だろうけどー


「取り敢えず、都合の良い時間を作ってユマを呼んで来てくれ」

「承知しました」


マシロに平穏な時間が訪れるのはいつになるやら──


と、軽くため息を吐いた。




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