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召喚先は、誰も居ない森でした  作者: みん


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53 竜王と魔王

*竜王バージル視点*




「それなら、僕がオールステニアに行ってきましょうか?」



そう言って、王子自らオールステニア王国に降りて行った。


()()なら心配する事は無い。寧ろ、()()()の借りを返せると、喜んでいるだろうから」


プラータ王子を“アレ”呼ばわりするのは、プラータ王子の父親である魔王ダグラス。あの人身売買(オークション)から今回の件に、実弟であるダミアンが関わっている証拠を集めて揃えて持って来たのだ。


「愚弟は、自分の実力もアレの実力も把握出来ずに、次代魔王の座を企んでいた」


おまけに、後ろ盾が不安定である為に竜王国を巻き込んだ。西の守護竜が不在で不安定である今なら、竜王国に攻め入り混乱に陥れ、竜人を従える事ができる─と思っていたそうだ。王弟ダミアンに付いた者の殆どが下級貴族や犯罪を犯した者達で、それなりの人数は居たが、レベル的には魔族の中では低い者達だった。魔族の中で低いと言うだけで、人間や獣人にとっては脅威となるが。それでも、この魔王と王子が居れば問題無い。魔王と王子が平和主義で良かったと思う。


「バージルなら、俺やアレが対処しなくても問題無かっただろうが、アレがどうしても直接動きたいと言うものだから。可愛い息子の願いだからね」


可愛い息子──魔族も竜人並に長寿だ。プラータ王子は、見た目は人間で言えば10歳ぐらいと幼いが、レナルドに魔法を指導したのがプラータ王子だった。ちなみに、レナルドは現在50歳ぐらいだ。


「プラータ王子は、見た目とは真反対だからね。どうしてあのオークションに居たのか疑問だったが、自ら潜入してたんだな。叔父の犯罪の証拠を手に入れる為に」


マシロが気にしていた子供は、プラータ王子の事だった。


『泣いて震えていたのに、私はその子に何もできなくて。助けてあげられなかった』


魔族の王子だから大丈夫だ─とは言えなかったから、怪我もなく親元に帰れたから大丈夫だと伝えると、ホッとしていた。自分も大変だったろうに、他人を心配するマシロは純粋で単純で心配になってしまう。


ー本当に、()()ユマの子か?ー


とは、絶対に口に出して言ってはいけない。



「いい加減、馬鹿の相手をするのも飽きたみたいでな。ダミアン派を一掃するつもりのようだ」


魔族も竜人と同様に、最強の者が王となる。勿論、このダグラスは今の魔族の中では最強で、プラータ王子もまたかなりの強者だ。ただ、見た目が可愛らしいと言うだけで、プラータ王子を次代の王とは認めず、王弟のダミアンを推す派閥がある。見た目だけで判断するお馬鹿集団だ。


「あの“戒めの拘束”を習得したから、試したいのもあるんだろうな」

「あれを習得したのか?それは……凄いな」


とある国の魔法使いが扱っていた魔法で、誰でも簡単にできるものではない。薔薇の蔦のように棘があり、自由自在に伸縮し、相手の魔力を吸収すると言う幾重にも重なった複雑な魔法。かの魔法使いはいとも簡単に扱っていたが──


「使えるようになったとは言え、かの魔法使いのように伸縮自在には無理で、至近距離のみだがな」


それでも凄い事だ。次代魔王の座も確実だろう。これで、まだまだ暫くの間は平和な世が続くだろう。


「────ん?」


そこで、ドクンッ──と心臓が大きく波打った。


ー何が起こった?ー


「どうした?バージル」


急に黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、ダグラスに声を掛けられたが、うまい具合に説明する事ができず、返事をせずにいるとイーデンがやって来た。


「竜王陛下、急ですが失礼します!」

「イーデン、どうした?お前には綻びの調査を頼んでいた筈だが?」

「それは、十分に承知していますが……ですが、ベレニスがオールステニアに降りていて………そこに……リシャール(息子)以外の…私の竜力を持つ存在がいると……。ですから、今からオールステニアに降りる許可をいただけませんか!?」


ーマシロの竜力を感じ取ったのか!?ー


と言う事は、俺が手を加えたレナルドの結界が破られた上に、竜力を隠していた魔道具も壊れたと言う事だ。それなのに、俺には何の報せも来ていない。プラータ王子が居るのなら、マシロ達は問題無いだろうが──


ーイーデンが、ユマとマシロに対してどう出るか?だー


「許可する代わりに条件がある」

「条件とは?」

「お前が第一優先にするのはベレニス夫人だ。それと、本当にお前と同じ竜力を持つ者が居たとしても、その者に手を出す事を禁じる。喩え、ベレニスが何かをお前に願ったとしても、掠り傷一つ負わす事は赦さない。お前が手を差し伸べるべき相手は、ベレニス夫人だけだ。それが、オールステニアに降りて良い条件だ」

「承知しました。必ず……守ります。ありがとうございます」


そう言うと、イーデンは足早に部屋から出て行った。


そして、相変わらず俺の心臓は、煩い音を立てて波打っていた。





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