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51 どうして?

目の前で、ベレニスさんが竜へと変化していく。

家を一部破壊しながらグングンと大きくなり、ガラガラとと崩れてくる瓦礫から、キースさんが護ってくれたお陰で、怪我をする事はなかった。


ーこれが竜化ー


ベレニスさんは火の竜らしく、赤─と言うよりは朱色に近い色の鱗。チリチリと熱さのある竜力に加え、怒りのせいで辺りの空気がピリピリとしている。


『赦さない。私の子以外がイーデンの竜力を纏う事など……絶対に赦さない!』


グアァァァ────と咆哮すると、周辺の空気がビリビリと震えて地響きを起こしている。3m位の巨体だ。コカトリスを一撃で倒したと言うカイルスさんにとっては、問題無い相手なのかもしれないけど、相手は竜人のベレニス=ウィンストン伯爵夫人だ。ある意味、簡単に攻撃ができない相手だ。この場でベレニスさんに手を出しても問題無いかもしれないのは、お母さんだけ。でも、あの魔族の人に対応できるのも、お母さんだけ。カイルスさんもキースさんも獣人だから、耐性はあっても魔法は使えない。


ー私が竜化できたらー


何度思って願っただろう。竜人のくせに、私は皆の足手まといにしかならない。竜力の使い方さえ分からない。分かっていれば、あの魔族の人が張った結界を壊せただろうか?

お母さんと魔族の人、カイルスさんとベレニスさんが対峙している中、不思議と冷静な自分に驚く。キースさんが護ってくれている─と言う安心感があるから?これも不思議と、今迄よりも、キースさんに対する安心感が大きくなっている。カイルスさんの()()とは少し違うけど。



「そろそろ、本気でやってもらおうか?」

「何を───」


魔族の人がパチンッと指を鳴らせば、ベレニスさんの体を炎が覆った。火の竜であるベレニスさんは、火を纏っても平気なようだけど、私達にとっては危険以外の何者でもない。とても熱い。


「何て事を!?」


そう言いながら、お母さんが私達の周りに結界を張った。


「あの炎は厄介ね……私の結界も、いつまでもつか……」


よく見ると、あの炎が普通の炎ではない事が分かる。あの魔族の人の魔力を纏っている。魔力でできた炎だから、単純に水で消えるものでは無いと言う事だ。

そして、お母さんとカイルスさんも疲れて来ている事も分かる。お母さんは、ずっと魔法を使い続けていて、魔力の消耗が激しい。4人分の結界を張っているから、尚更だ。


ーどうにかして、レナルドさんや竜王様に連絡できないかな?ー


そう思っていると、ピシッ─と小さな音と共に結界にひびが入った。


「最後にチャンスをやろう。聖女ユマさえ私の元に来れば……後の3人は逃してやろう」

「それを信じろと?」

「魔力での契約をしても良い」

「………分かったわ」

「お母さん!?」

「「ユマ様!」」


“魔力での契約”とは、自分の魔力を契約の元とする物で、その契約を破ると魔力を奪われてしまい、最悪、死に至る事もある契約の事だ。


『何を言っているの!?ユマだけでは駄目よ!あの娘共々────ゔっ!』

「私がお前と()()したのはユマだけだ。勘違いするな」


魔族の人が指を弾くと、ベレニスさんは呻き声を上げた後、竜の姿のままその場に蹲った。


「茉白、ごめんね」

「お母さん!!」


伸ばした手がお母さんに届く事はない。お母さんが張っている結界が邪魔をする。


「お母さん!」



ーどうしてお母さんが!?ー


勝手に召喚されて聖女にされて、この世界を救っただけだよね?それで、竜人と恋をしただけだよね?私を身篭ったばっかりに、苦労しただけだよね?誰かに迷惑を掛けた?どうして、お母さんと私から色んなものを奪って行くの?ただただ、静かに暮らしたいと言う願いしかしていないのに。そんなささやかな願いすら叶えてはもらえないの?


「キース、お前は何があってもマシロを護れ」

「それは勿論ですけど、カイルスさんは何を?」

「この結界を壊して、ユマ様を連れ戻す」

「カイルスさ────」


私が呼び止める前に、カイルスさんが剣を一振りすると、ひびが入っていた所から結界が壊れていき、そこからカイルスさんがお母さんの方へと駆け出した。


「獣人如きが、私に指1本も触れられると思っているのか?」


と、指を軽く弾くと、次の瞬間、カイルスさんの右肩から血が飛び散った──のも構わず、カイルスさんはそのまま魔族の人に飛び掛かった。


「本当に、邪魔だな」

「カイルスさん!」


魔族の人がまた、指を弾く。今度は真っ黒な炎が現れて、その炎がカイルスさんを包み込んだ。





「本当に、いい加減にしてもらえますか?」



その場の空気がスッと冷たくなり、言葉とは裏腹に、ニッコリ微笑んでいる男の子が現れた。白髪で銀色の瞳の男の子。


あの人身売買(オークション)の時に居た男の子だ。





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