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5 逃げた先

幻獣バジリスク


そう思わせる姿をしている。でも、それは幻獣であって、架空の物ではなかった?これはきっと夢だ。夢なら早く覚めて欲しい。でも、これが夢ではない事を知っている。今のところ、バジリスクのような大きな蛇は、私の存在には気付いていない。


ーバジリスクは、一体どんな幻獣だった?ー


詳しい事なんて分からない。兎に角、今できる事は、対策を考える事じゃなくて、逃げる事だ。遠くからは悲鳴や怒号が響きわたっている。今なら、この混乱の中逃げる事ができる。逃げた先の事は、逃げ切れた後に考えれば良い。


ー何もできなくて、ごめんなさいー


血を垂れ流している年配の女性に、心の中でそっと謝ってから、私はバジリスクの様な大蛇に気付かれないようにその場を後にした。






「❋❋❋❋❋❋!」

「❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋!」


城内は逃げ惑う人達で混乱状態だった。お陰で、誰も私の事を気にする人は居なかった。途中で、私を掴んだ男とすれ違ったけど、その男は私に気付く事もなく走って行った。首輪の鍵は、その男が持っているだろうけど仕方無い。私は途中で拾ったローブのような服を着て、首輪が見えないようにして人の流れと一緒に出口へと走った。


そして、城から出てからは人の流れから外れて、できるだけ遠くへと走った。走って走って……もう走れない!と言う所迄来てから、ようやく足を止めてその場に座り込んだ。


「はーはーはー…………」


勿論、声は出ない。その代わり、心臓がバクバクと大きい音を立てている。何とか逃げれたのは良いけど、ここがどこなのかは、やっぱり分からない。山のような所だと言う事だけは分かる。ただ、前に居た森よりは木が多くはなく、今は夜だけど月の光が届いていて辺りは明るい。


ー月が2つあるー


そこには、以前と同じように月が2つ並んでいる。怪奇現象ではなかった。もう、何が何だかサッパリ分からない。いっその事、さっきのバジリスクに食べられた方が良かったのかもしれないとさえ思ってしまう。


ー弱気になるな!まだ……大丈夫!ー


そうして、私はまた前へと進んだ。






暫く歩いた所に洞窟のような所があり、取り敢えずそこで一晩過ごす事にした。

念の為にと、待機していた部屋に置いてあったお菓子を取っておいて良かった。それでも量はあまりないから、少しずつ食べる。


ーそう言えば、あの子は大丈夫かな?ー


白い髪の毛の男の子。あの子も、無事に逃げられてたら良いけど……。今はそれも置いといて──


兎に角、ここはもう日本じゃないのは確定だ。有り得ないと思いたいけど、地球でもない気がする。一体どんな夢物語に入り込んだの?こんな事は本で読むだけで十分だ。それに、こう言う場合、誰かが私を待っていて助けてくれたり、何かしらの力が与えられたりするんじゃないの?

待っている人は居ないし、力も無い上に言葉まで通じないし、もう少しで売られたり死ぬところだった。今でも、危険な状況である事には変わりない。


ー本当に、どうしてこうなった?ー


コロン──と洞窟の中で仰向けで寝転がる。


ーこれからどうするのかー


取り敢えずは、1日1日を生きていく事を考えるしかない。まだ希望は捨てないけど、助けがあると思わないようにする。それに、言葉をどうするか。


バサッバサッ


ーん?ー


何の音なのか?と洞窟の入り口から外を見てみると、鳥が居た。鳥。うん、鳥だよね?鳥であって欲しい。体長3mぐらいある鳥なんて、初めて見たけどね!!


ーどうする!?ー


まだ気付かれてないうちに逃げる?それとも、このまま隠れておく?気付かれて洞窟の中に入られたら終わりだから、ここから離れた方が良いよね?と、ゆっくりと歩き出すと、その鳥が振り返り……目が合った。


ー逃げないと!ー


クルッと鳥に背を向けて走り出すと、私の背後から『キュルルルルルーッ』と、大きな声がした後、バサバサと羽ばたく音がして、チラッと後ろに視線をやると、その鳥が私を追い掛けるように飛んで来ていた。


ーヤバイ!早く逃げないと!!ー


今迄にない速さで走っている自信がある。そんな自信なんて、あの鳥に比べれば取るに取らないモノだろうけど。兎に角、できるだけ逃げ──


「───っ!?」


そこでまた、足が動かなくなる。


『グルルルル────』


ー何で………ー


今度は、目の前にライオンが現れた。しかも、小さなリス?のような小動物を咥えている。勿論、後ろからは巨大な鳥が追い掛けて来ている。


ーあぁ…もう駄目だ……ー


訳の分からない蛇や鳥に殺られるより、知っているライオンに殺られるなら諦めがつくのかもしれない。


ーまさか、野生のライオンを見てホッとするとは……ー



馴染みのあるライオン(動物)を目にして、ある意味緊張の糸が切れたのか、ただ現実逃避をしたかったのか───私は、そこで意識を失った。





もう、二度と目が覚める事は無いかもしれない。




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