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49 破られた結界

「見付けたわ」


と言いながら現れたのは、金色の長い髪で真っ赤な色の瞳の綺麗な女性だった。チリチリと熱い竜力を感じるから、火の竜人だ。ひょっとして────


「ウィンストン夫人、これは一体どう言う事ですか?」


ーベレニス=ウィンストンだー


カイルスさんが、お母さんと私を庇うように前に出る。お母さんに抱き上げられている(キース)からは、ベレニスさんに対する怒りが溢れている。キースに怪我を負わせたのは、この人なのかもしれない。


「その鳥の事?それなら、私の邪魔をしようとしたから抵抗しただけよ。その鳥はどうでも良いわ。私が用があるのは、そこの女……ユマよ。だから、そこを退きなさい。カイルス=サリアス」

「それはできかねます」

「竜騎士でありながら、上官の妻の言う事が聞けないと?」

「俺の上官はイーデン様であって、夫人ではありません。それに、俺はここには竜王陛下からの命で来ているので、喩えイーデン様に何を言われようとも、それに従う義務もありません」


ギリッと口を歪めて怒りを露わにするベレニスさん。


「たかが鳥の分際で……私が、ここで竜化すれば、困るのはお前よ?」

「それは、お互い様では?他国で竜化して問題を起こせば、イーデン様もただでは済まないと思いますが?」

「それなら全く問題無いわ。今からここで起こる事は誰にも知られる事は無いから」


ベレニスさんがそう言うと、ベレニスさんの後ろから男性が現れた。黒色の髪に金色の瞳の綺麗な人だ。ただ、恐ろしい程の魔力を纏っている。かなりの魔力持ちだ。


「ユマさえ私に渡してくれたら、このままおとなしく引き下がるわ」

「できかねます」


カイルスさんが改めて拒否すると、カイルスさんがスルッと剣を構え、キースも人の姿になり剣を構え、お母さんが私を背中で隠すように立った。


「その態度が、いつまでもつのか楽しみだ」


そう言って、金色の瞳の男の人がパチンッと指を鳴らすと、数体の魔獣が現れた。






*************



*竜王バージル視点*



『西の綻びから、魔獣が現れました』


と報告が上がったが、アルマン達竜騎士がすぐさま対応したお陰で、被害も殆ど出なかった。

それと同時にオールステニア王国でも魔獣が現れ、レナルド達が対応していると言う報告も上がって来た。同時にと言う事が気にはなったが、カイルスとキースからは何の連絡もなかったから、何の問題も無いと思っていた。


それから暫くして『ベレニス様がオールステニアに降りたようです』と報告を受け、妙な胸騒ぎを覚えた。イーデンは竜王国で西以外の調査をしているからベレニスがオールステニアに降りた事には気付いてはいないだろうし、ベレニスもイーデンには何も言っていないだろう。


ー全てが上手く噛み合っていないか?ー


ここで、俺がオールステニアに行けば、竜王国から守護竜の2人が不在になる。それに、俺は竜王だ。国内で問題が起こっているのに、それを放って行く訳にはいかない。

ベレニスが竜騎士副団長イーデンの妻として、竜王国の伯爵夫人として、他国で問題を起こす事は無いと信じたいところだが──


「どうしたものか………」

「それなら、僕がオールステニアに行ってきましょうか?」

()()()()()()が?」


笑顔でそう言ったのは、魔族の王子だった。





*レナルド視点*



ー何かがおかしいー


王都から少し離れた所で穢れが溢れ出し、魔物や魔獣が現れるのは分かる。ただ、穢れの溢れ具合と魔獣のレベルが()()()()のは何故だ?私の経験上、穢れの溢れ具合や濃度と、出現する魔獣や魔物のレベルは比例する。

ここの穢れはそれなりの溢れ具合にも関わらず、魔獣が弱過ぎる。数が多く現れるがレベルは低い。


ーユマが完璧に浄化した影響か?ー


そもそも、こんなにも早く穢れが溢れ出す事の方がおかしいのだ。ユマの浄化は完璧だった。2ヶ月程前迄は、何の問題も無かった。なら、考えられるものの一つは、意図的に誰かが仕組んだと言う事。素直に考えると魔族。魔族が関係しているのなら、色々と注意をしなければならない。私がいくら元魔道騎士団長だったとしても、魔族が相手となると難しい。ただ、魔族がどうしてこんな事をするのかが分からない。今の魔王は平和主義だ。

そんな事を考えていると、体にピリッとした痛みが走った。


ー結界が破られた!?ー


私の家の周りに張っていた結界。それは、招かれざる客が家に辿り着けなくするのと、結界内に居る者の気配や魔力、竜力を隠すものだ。私が幾重にも魔法を掛け、更に竜王陛下が少し力を加えて強化したものだ。そう簡単には破られる筈がない。これも、魔族が関わっているのか?


もし、この穢れの異常発生が意図的なもので、囮だとしたら──


「狙いは……ユマか!?」


こうして、私は急いで魔法陣を展開させた。




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