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45 間違える筈が無い者

相変わらず竜化できないまま1週間が過ぎた。

竜化ができないと、竜力もうまくコントロールできないそうで、今はゆっくり竜化する事に集中する事になり、アルマンさんやカイルスさんが来る事も少なくなった。キースは基本、隼の姿で側に居てくれている。


『護衛ですから!』


護衛と言いつつ、隼の姿で居るから、私にとっては“護衛”と言うよりも“癒やし”的な存在だ。それでもキースは竜騎士。竜人が竜騎士になるよりも、獣人が竜騎士になる事の方が凄い事らしい。

獣人の魔力持ちは居ない。その代わり、身体能力がずば抜けている。竜騎士になるには、勿論剣術や武力に長けていないといけないけど、魔力や竜力に耐性がなければならないそうだ。カイルスさんやキースのように獣人で竜騎士なのは、ほんの一握りしか居ないらしく、ある意味“エリート”と呼べるんだとか。

そんなエリートなキースが、私の護衛とは、有り難いやら畏れ多いやら……


「キース、いつもありがとう」

『こちらこそ、ありがとうございます!』


ー「え?何が?」とは、訊かないでおこうー






*翌日*



気分転換に──と、お母さんと2人でお出掛けする事になった。キースも、私達から付かず離れずな位置で付いて来ている。


「今日は、マシロの服を買うわよ」

「なら、お母さんのも買おう」

「それじゃあ、お互いの服を見立て合うのも良いわね」


それから、色んなお店を回って服を買ったりお茶をしたりと、1日楽しく買い物をした。日本でもここまで2人で歩き回った事がない位歩いた。


ーこれからも、2人で楽しく過ごしていけたら良いなぁー




******



「今日は久し振りだから、少し豪華にいっちゃう?」

「賛成!」


今日は、久し振りにレナルドさんと3人で夕食を食べれると言う事で、食材を買って早目に帰ろうと言う事になった。その、帰り道の事だった。商店街から少し外れた道に差し掛かった時「すみません」と声を掛けられた。フードを被っていて顔はよく見えないけど、声からすると女性のようだ。


「“レッカー”と言うお店は、この道筋で合っていますか?」

「レッカーなら、次の三角で左に行けばありますよ」

「ありがとうございます」


お母さんが答えると、その女性はそのままその方角へと歩いて行った。


「レッカーも、ランチが美味しいって聞いた事があるわ。また、行ってみよっか?」

「うん。楽しみにしてる!」


そうしてまた、私達は歩みを進めた。







*ベレニス視点*


「どうして…………」


先程、声を掛けた母娘の背中を見つめる。


私が()()()を間違える筈が無い。


茶色の髪と瞳で、魔力は感じられなかった。


最後に会った時は、少しピリッと感じる程の魔力を纏っていた。あの時は、真っ黒な髪と瞳をしていた。あの時の瞳は、“怒り”を宿していたのを鮮明に覚えている。竜人の私の攻撃をいとも簡単に払い除けた。


「ユマ」


見掛けは聖女ユマとは違うけど、あれはユマだ。恋敵だった憎き者で、何度も追い掛けたから覚えている。姿は違うし魔力も感じられなかったけど、私の感覚や本能が、“あの女はユマだ”と訴えかけている。



“オールステニアにて、イーデン様が人間の女性と接触。人違いではあったが、その女性を『ユマ』と呼んでいた”


その報告の後、数日見張らせていたが、特に問題は無さそうで、見張りを解く──前に、念の為にと、私がその女を確認しに来て見れば……ユマだった。


魔力は失ったのか?

どうして容姿が違っているのか?


「今更、どうして姿を現したの?」


そんな理由はどうだって良い。幸いな事に、イーデンはユマと接触したにも関わらず、本人だと認識できなかったのだ。イーデンがユマを探しているとしても、イーデンが気付く前にユマを片付ければ良いだけ。容姿は違っていても、あの女がイーデンの瞳に映らなければ良いだけ。もし、魔力が本当に失われているなら問題無い。魔力の無い人間は()()だから。




******


「どうして上手くいかないの!?」

「申し訳ありません」


直ぐに()()()と思っていたのに、未だにユマはオールステニアで生きている。刺客を放ってみたけど、“住んでいる家にさえ辿り着く事ができない”と言う報告が上がった。そして、調べてみると、魔道士の家に住んで居るようで、許可された者以外の者が近付けないような結界が張られていた。その上、ユマは滅多に外出する事がない。

私が竜化して攻撃すれば一瞬だろうけど、そんな事をオールステニアですれば大問題になるし、イーデンにも迷惑を掛けてしまう。


「一体どうしたら………」

「いつでも手を貸します──と、言ったでしょう?」

「っ!誰!?」


私とトリオールの影の2人しか居ない筈の部屋に、男が現れた。黒色の髪に、金色の瞳。その姿は一度、目にすると忘れられない程の美しさと冷たさを持っている。



『聖女を排したいなら、手伝ってやろうか?』



以前、私にそう話し掛けて来た男だ。あの時は断った。あの時、素直に受け取って片付けておけば、再びこんな思いをする事も無かった。


「貴方の目的は何?」

「聖女が邪魔なだけだ………魔族の為に」


その男は、魔族の者だった。







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