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19 王都へ

あれから3ヶ月。


ここでの生活も少しずつ慣れて来た。この邸には、私を含めて3人だけが残っている。行く当てのなかった10人のうち7人は、養護施設のような所に入ったそうだ。私以外の2人は養子縁組の手続き中らしく、その処理が済めばここから出て行くそうだ。


私はと言うと、公表はされないけど渡り人と言う事で、国からの手当てを受けながらリオナさん達にお世話になる事になり、リオナさんの家がある王都へ一緒に移動する事になった。



「丁度、王女殿下の婚約発表とお披露目を兼ねたパーティーがあるそうだから、それに合わせて王都に帰るわ」


リオナさんは公爵家の嫡子らしく、王族主催のパーティーには参加しなければいけないらしい。


ー凄いなぁー


なんて思っていると、私も一緒に登城しなければいけないと言われてしまった。そのパーティーに参加するのではなく、国王に会う為なんだそうだ。それもそうかと思う。渡り人として、これから援助してくれるのだから、挨拶をしたり色んな手続きがあるとの事だった。


「キースも一緒に来てくれると嬉しいけど……」

『キー……』


私の目の前に居るのは隼の“キース”。ほぼ毎日私に会いに来てくれる。王都に行けば、もう会えなくなるかもしれない。


「今までありがとう」

『………』


取り敢えずお礼を言ってから。いつものように頭を撫でさせてもらった。







******



保護されていた邸から王都までは、魔法での移動で一瞬だった。本来なら、馬車や馬で3日ほど掛けて移動するそうだけど、私の体調などを考慮して魔法での移動にしてくれたのだ。魔法があれば、あのピンク色の扉も必要無い。


そうしてやって来た、王都にあるリオナさんのお家が凄かった。流石は貴族でもトップに立つ公爵家だ。


「登城するのは明後日よ。今日はゆっくりしてちょうだい」


と言われて、私はリタさんの案内で、今日から過ごす事になる部屋へとやって来た。


「これが……部屋?」

「普段は客室として使用している部屋だから、少し狭いかもしれないけど…」

「狭い!?」


寧ろ広すぎる。私の住んでいたハイツの何倍あるのか。同じ室内でも寝室は区切られていて、その寝室の奥にはお風呂もある。ベッドもキングサイズぐらいある大きなベッドで天蓋付き。保護されていた時の部屋も豪華だったけど、これは更に豪華だ。数ヶ月前は地下牢で過ごしていたのに。


ー本当に、運が良かったー


まだまだこれからどうなるのか分からないけど、1日1日生きて頑張るしかない。そして、落ち着いて余裕ができたら、帰れる方法がないのか調べてみよう。








登城する迄に、最低限のマナーやこの国での常識を詰め込んで、あっと言う間に登城する日になった。移動は勿論馬車。車や電車に乗り慣れている私にとっては、かなり辛いものがある。自転車の方が乗り心地が良い。


「わぁ………城だ…………」


捕らわれていた城も、リオナさんのお家も凄かったけど、王城は更に凄かった。何が凄いのか?“凄い”としか形容詞が出て来ない程凄い。圧巻。権力の象徴でもあるのかもしれない。こんなものを目にすると、やっぱり日本ではなく異世界なんだと思い知らされる。


城内はこれまた豪華だった。それに、何となくバタバタと騒がしい雰囲気があった。


「王女殿下の婚約発表があるから、準備なんかで騒がしいのよ」

「なるほど」


王女様は聖女としても国民から人気があるらしく、その王女様の婚約発表と言う事で、国中がお祝いムード一色なんだそうだ。ちなみに、そのパーティーは2日後にある。


「タイミングが合えば、王女殿下とその婚約者にも会えるかもしれないわよ」


とリオナさんは言うけど、正直、別に会いたいとは思わない。マナーに自信が無いし、何かをやらかしてリオナさんに迷惑を掛ける事にでもなったりしたら最悪だ。出来る限り、何事もなくスルッと帰りたい。


ー何事も起こりませんようにー






******



王様との謁見は、穏やかに行われた。


『苦労したのだな。それでも無事で良かった。これからはこの国にゆっくり慣れていってくれれば嬉しい』


と、王様から労いの言葉をもらった。この国での戸籍みたいなモノも作ってくれるそうで、将来、この世界で働く事も結婚もできるとの事だった。結婚は別として、働く事ができるのはありがたい。

そして、同席していた王太子様も良い人だった。


王様と王太子様との謁見は1時間程で終わり、謁見の間から私とリオナさんは退出した後、リオナさんは城の人に呼ばれて行く所があるからと、私は庭園を散歩しながら待つ事になった。私を心配したリオナさんが、王城付きの女官の人を付き添わせてくれた。


王城の庭園もまた、色んな花が咲いていて綺麗だ。

暫くすると、少しのざわめきが起こった。


「あ、王女殿下と、その婚約者様ですよ」


少し離れた所に居るから、態々の挨拶はしなくても大丈夫と言われ、その場からざわめきが起こっている方を見る。そこには、金髪碧眼の綺麗な女性が居た。“ザ・お姫様”を具現化した容姿で、同性の私でも見惚れてしまう。そんな王女様の婚約者は───


「─────え?」


緑色の生地に金色の糸で刺繍が施されたのローブを着ている。金髪に青色の瞳。魔道士の婚約者。


「────フィン?」




そこには“フィン=バーナード”が居た。






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