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16 同じ色

この邸で保護されてから1ヶ月。リオナさんが持って来てくれたのは、緑色の石のネックレスとピアスだった。この緑色の石には翻訳機能の魔法が込められていて、身に着けていると、お互い違う言葉でも理解できるようになるそうだ。スマホの翻訳機能と同じようなものかな?


「私の話している事が理解できる?」

「できます!凄い!!」

「私も理解できるわ。良かった」


これからも勉強は続けるとして、これで会話もスムーズにできるから一安心だ。


「それで、早速で申し訳無いんだけど、マシロが嫌でなければ、色々と訊きたい事があるんだけど……」


と、リオナさんが心配そうな顔をする。


「はい、大丈夫です」


今迄言葉が通じなかったから話せなかった。ただ、本当の事を話しても信じてもらえるのかは微妙だ。でも、嘘をついたところで得にもならないなら、本当の事を話すしかない。


「もし、辛くなったりしたら言ってね?無理はしないように」

「はい。気を遣っていただいて、ありがとうございます」


そう言うと、リオナさんは笑ってから紅茶とお菓子を用意してくれて、後から来たルパートさんとリタさんと4人で話をする事になった。





******



「まさか……違う世界から来たなんて………」

「そりゃあ、言葉が通じないのも無理ないな」

「本当に大変だったわね」

「え!?信じてくれるんですか!?」


頭のおかしい子認定覚悟で、正直に本当の事を話したら、3人ともアッサリその話を受け入れてくれた。


「嘘なの?」

「本当の事ですけど……自分でも信じられないような話を、信じてくれるとは思わなくて………」


正直、これが現実だと受け入れているけど、どこかでやっぱり夢かも?と思っている自分が居る。


「そもそも、異世界から人が渡って来る事は、この世界ではたまにあるのよ」

「え!?」



この世界の創世神が、実は2つの世界を創っていて、微かに2つの世界が繋がっている為、稀に人がその路に迷い込んで他世界へ行ってしまう事がある──と言う神話のようなものがあるらしい。


「何年か前にも渡り人が居たとか……耳にした事があるわ。その人は、こちら側に来た時に光属性の魔力を付与されてたとかで、聖女として活躍してたそうよ」


ーまさにファンタジーだー


私には何もなかった上に、オークションに掛けられそうになるし魔獣と対面するし……


「本当に、リオナさん達に助けてもらえて良かったです。本当に、ありがとうございました」

「あ、それなんだけど、正しくは、マシロを助けたのは竜騎士のカイルス=サリアス様なの」

「竜騎士?」


竜騎士とは、竜王国の騎士の事で、そのカイルス=サリアスさんは鷲獣人だけど竜王国の騎士で、かなりの強者なんだそうだ。


「それじゃあ……直接お礼を言う事はできますか?」

「まだ滞在してるから可能だけど、マシロは大丈夫なの?」


正直、相手が男性と言うのは気になるけど、それでもやっぱり命を救ってくれたのだから、直接会ってお礼はするべきだと思う。また今度会った時に──なんて思っても、必ず次があるとは限らないと言う事を知っているから。


「大丈夫です。お礼はちゃんと直接会って伝えたいです」

「分かったわ。直ぐに連絡を取るわ」


リオナさんが目配せすると、リタさんは頷いてから直ぐに部屋から出て行った。








そして、そのカイルス=サリアスさんとの対面は翌日に実現する事になった。3日後には竜王国に帰るそうで、時間の余裕があるのが、翌日のお昼過ぎしかなかったそうだ。対面する場所は、この邸にある応接室で、リオナさんとルパートさんに同席してもらう事になった。その応接室に入ると、既に男性が椅子に座っていた。


「お待たせしました」

「いえ、俺もさっき来たところです」


その男性は、黒色の髪と瞳をしていた。その懐かしい色にホッとする。色んな色に溢れた世界で、その黒色が一番鮮やかに見えるのは、自分と同じ色をしているからか──


「あ…の…私、マシロと言います。助けていただいて、ありがとうございました」

「わざわざありがとう。俺はカイルス=サリアスだ。元気になって良かった」


身長180センチ以上あるだろう大柄な体格で、目は切れ長で少し冷たい印象があるけど、穏やかな微笑みを浮かべるサリアスさんを見ていると涙が溢れた。


「マシロ!?どうしたの!?やっぱり無理をして──」

「ちっ…違うんです!あの…サリアスさんを見てると、自分の国の事を思い出して……懐かしくて……つい……すみません」

「マシロ……」

「…………」


黒色の髪と瞳が当たり前ではない世界で、自分1人だけが異質だった。黒色の髪と瞳の人を見ただけで、ここまで気が緩むとは思わなかった。


「泣きたい時は、泣いた方が良い」


そう言いながら、私の頭を優しく撫でてくれるのはサリアスさん。


「………っ」


気が付くと、私はサリアスさんの服を掴んで泣いていた。






この世界に来てから、私はようやく泣く事ができた。







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