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14 久し振りの外へ

オールステニア王国の第一王女である、聖女アンジェリア=オールステニアがやって来たのは、更に1週間経ってからだった(オークションのあった日から2週間後)。


この浄化に同伴するのは、王女付きの近衛騎士3人と、摘発に参加していた魔道士のフィンレー=コペルオンと、竜人のイーデン=ウィンストンと、獣人のリオナ=ヴァルトールとなった。王女が来るまでに魔獣はほぼ討伐されていて、多くの同伴は不要だと判断された為に少人数での浄化となった。少人数と言っても、実力のある者達ばかりと言う事もあり、特に問題もなく浄化は進められた。


浄化は順調に進み、予定していた5日よりも早い3日で終える事ができた。


「殿下!」


ホッとした所に、下級ではあるが仕留めきれていなかった魔獣が、アンジェリア王女に襲いかかったのを、フィンレー=コペルオンが魔法で防御しながら、その魔獣を返り討ちにして、事無きを得た。


「ありがとう。フィンレーのお陰で助かったわ」

「殿下がご無事で良かったです」


こうして、何事も無く聖女による浄化が終わった。









******



少しずつ落ち着きを取り戻し、保護されていた15人のうち5人は親元へと帰る許可がおりたそうで、数日のうちに迎えが来るようだった。

私を含めた残りの10人は、もともと親に売られた者や親が居ない者で、もう少しこの邸で過ごした後、どうするかの話し合いの場を設けると言う事になった。


ーどうしようかなぁー


本当の事を話すか話さないか。話した場合、信じてもらえない可能性が高い。話したところで頭のおかしい奴認定かもしれない。いっその事、記憶喪失とか?


「ふぅー……ん?」


窓の外を見ると、目の前には真っ青な空が広がっていた。 


ーそう言えば、この世界に来てから、ゆっくり空なんて見てなかったかも?ー


リタさんに「外、出てみたい」とお願いすると、帽子と薄手のカーディガンを用意してくれて、庭に連れて行ってくれた。







「……………庭?」


“庭”じゃなくて“公園”の間違いじゃないの?と思う程、広くて大きな庭だった。色んな色の花が咲いていて、大きな木がずらりと並んでいる。空の色は、日本で目にしていた色よりも少し濃い色をしている。


「キレイ………」


同じ様に見えても違う空。日本に続いていたら良いのに。


「リター」

「ん?」


庭をゆっくり散歩していると、リタさんは誰かに呼ばれて話をした後、「直ぐ戻って来るから、ガゼボで待ってて」と言って、邸の方へと戻って行った。

そのガゼボには、紅茶とクッキーが用意されていた。この世界では、2時から3時の間にティータイムがある。その時に用意されるお菓子はいつも美味しい。紅茶も色んな味のものがあって、苦味が無くて飲みやすい。


クッキーを食べながらリタさんを待っていたけど、近くに咲いている花が気になって、その花の方へと近付いて行った。


ー芝桜に似てるかな?ー


「わわっ──」


ザァーッと風が吹くと帽子が飛ばされ、その帽子に手を伸ばすと──


「───マ!」


その伸ばした手とは反対の手を掴まれた。


「っ!?」


ドクンッ─と心臓が音を立てた。振り向くと、そこには銀髪の男性が私を見下ろしていた。


「❋❋❋❋❋❋❋❋❋」

「……………」


あの時の男性とは違う。あの時の様な人達は捕まったから大丈夫だと。ここに居るのは、私達を助けてくれた人達しか居ない。だから、この人もそうなんだと頭では分かっている。分かっているけど──


「❋❋❋❋❋❋❋」


あの時の事がフラッシュバックする。

ハクハクと、上手く呼吸ができなくなって、体が震え出して視界が歪む。


「手……ハナシ……………」

「マシロ!?❋❋❋❋❋❋!」

「❋❋❋❋❋❋❋❋!?」


もう駄目だ───と思った時、私の背後からリオナさんの声が聞こえた。


「リオナ…さん………」


そう呟くと同時に、リオナさんが私を抱き寄せてくれて、男性が私を掴んでいた手を離してくれた。私はそのままリオナさんにしがみついた。


「ゆっくり、落ち着いて………」

「……………」


リオナさんが、背中をポンポンと優しく叩いてくれるのに合わせてゆっくり呼吸をする。リオナさんは温かくて安心できる人だ。


「大丈夫?」

「ハイ。アリガト…………」

「少し、待っててね──❋❋❋」


リオナさんは私を抱きしめたままで、私を掴んで来た男性に何かを言い始めた。今の私では聞き取る事はできないけど、リオナさんが言い終わると、その男性が「申し訳無い」と謝っていたから、注意をしてくれたのかもしれない。謝ってくれているのは分かるけど、どうしても男性の方を見れなくて、リオナさんにしがみついたままで頷く。


「❋❋❋❋❋❋」

「❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋」


すると、男性は分かってくれたようで、この場から去って行った。


「マシロ、部屋に、戻りましょう」

「ハイ…」


こうして、私の久し振りの散歩は終わってしまった。





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