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第9話 浅知恵

 「敵の正体は豹猿、木の上に視認したと」

 ギャドルが連絡をしている間に戦闘体制に入り出す。クリスは大剣を構える。だが上空を見るばかりで攻撃を仕掛けない。


 「クリス、あんたは相当強いって聞いたもんだが、流石に上のは相手にできないって感じか?」

 ディエゴがクリスの持つ大剣を指さして言うが、クリスはニコリと微笑むと答える。

 「まあそうだね、上にいくと下の人たちの安全を保証できないからね、一応登るくらいなら僕でもできるよ」


 正直言ってクリスの射撃訓練は悪くはなかった。的そのものには当てることができた。だが的に当たったのは端ばかりで中央に近い位置には一度も当たらなかったのだ。




 「護衛なら俺もするよ! だからクリスくんは遠慮なく攻撃してもいいと思うな!」

 

 ハーディストは笑いながらそう言う。鎖の先に剣がいくつも付いており、剣を振り回していう。

 「そうかい? じゃあハーディストに任せるとしようかな」


 そう言ってクリスはその場に屈むと地面に向かって空書きで八芒星を書くと、クリスの頬に痣が出現した。


 カプティブには特殊な力がある。それは[解放]、地面に指がつくようにして八芒星を描き切ると痣が現れると共に一時的に身体能力が上がる。


 「じゃあ行ってくるね」


 そう言ってクリスは上空の豹猿目掛けて跳んだ。

 


 上空に行くと仲間が射撃をしにくくはなる。だがそもそも暗く枝や幹で射撃すらままならない今では多少の問題で済む。クリスは太い幹を跳び伝いながら、豹猿を追う。


 豹猿は見た目はチンパンジーだが名前通り牙や爪が豹のように発達している。そして猿のように木を登り、群れを形成するだけでなく知能も非常に高い。だからこそ先ほどのように簡単なトラップ、打製石器を生み出せるのである。

 素早く攻撃性の高い、そしてこのジャングルというフィールドで本来なら倒すのは難しかっただろう、だがそうは行かなかった。


 クリスは一瞬にして次々と豹猿を斬り捨てる。攻撃してこようと逃げ回ろうと、それ以上に速いのだ。



 とはいえ油断するわけには行かない。


 「ぐ.....来ました....!」

 豹猿はディアに向かって襲いかかるが、鎖剣が即座に豹猿の首を斬り払う。

 「射撃は無理かなー、ナイフで近づかれた時に振り回す方がこれならマシだねー」


 射撃音は聞こえるものの敵の数に比べるとそこまで鳴ることはない。基本的に旅団メンバーは3種類に分けられるのだ。


 一つ目はディアやロイ、ディエゴなどの”兵士“これらは銃やナイフなどを組み込む一番多い戦い方である。

 

 二つ目はガルグやクリスなどの“魔法使い”、魔法を使う者全般を指し、魔法を一つでも携帯しているとそう言われる。だがクリスの戦闘スタイル自体はどちらかと言うと三つ目に該当するだろう。


 三つ目はハーディストなどの“戦士”、近接武器など消費のしない武器を得意とする戦い方である。そもそもの話銃弾は貴重なのもあり、無駄撃ちをしない戦士は長く戦うことができる。




 地の利を生かされれば本来なら撤退も余儀無かっただろうが、クリス1人で戦況は最初から優勢でしかない。多少損害を受けようがそれ以上にリターンがデカすぎる。

 クリスは次々と倒し、死体が降ってくる。だがそれと同じく。


 「ロイ! それ死体じゃないです!」

 ディアが声をあげたのは死体のように脱力して落ちてきた豹猿であり、ロイは一瞬反応が遅れるが、ディエゴが一瞬にして撃ち抜く。


 「危ないもんだな。死体に紛れて落ちてくるのかよ」


 「それだけじゃないよー、罠にも警戒しないとねー!」

 上下を同時に警戒しなければならず、一度のミスは死に直結しかねない戦闘で、その時、クリスが次の豹猿に向かって跳んだその時であった。


 「なっ......!?」


 クリスは足に違和感を覚え、そこを見ると、足にはツタが絡まっていた。


 クリスは反応が僅かに遅れ、まるで連鎖するかのように幹に引っかかるとそのまま宙吊りのようになってしまう。

 クリスはツタを切り払おうと宙吊りの体勢のまま大剣を持ち上げようとするが、既に豹猿が2〜3匹ほどクリスの真横にまで近づいていた。


 「....ッ——!! 撃てない.....」


 暗いジャングルの中でそれにディアはそれに気付くことはできた。だが視界が悪い上に射撃は決して良いとはいえない。それにこの状況だとクリスを撃つ可能性もあって引き金を押すことができないのだ。



 たった一瞬の中でディアが迷っていたその時、緑色の一筋の光が一瞬見えたかと思ったその瞬間、射撃音と共に豹猿達の顔面はミンチになり、死体が落ちてきた。


 それと同時にクリスに巻きついていたツタは切り払われ、クリスは落下する最中に木の幹を掴みぶら下がり上を見上げる。そこにはショットガンを持った茶髪の女性がいた。その瞳は静かに獲物を見据えていた。

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