第8話 ジャングル
〜地上〜
ディア達は探索をし始めていた。車両の中で揺られながら、ディアはただボンヤリと外を見ており、先頭車両のグランツ団長は廃墟を無視して北北西に一直線に走り続け、それについていく形でディアの乗る車両も進んでいた。
「こうやって走ってるととんでもなく暇なもんさ、歌でも歌って気を紛らわせないか?」
そう言ったのは車両の運転も勤めている30代前半だが若作りしている感じの優男、ディエゴで、後方から身を乗り出して1人が喋る。
「うーん、ないね! 俺はこーいうの音痴だから歌いたくないなー!」
非常に高身長な青年、言葉一つ一つが楽観的というのを体現したかのような声をしている。名はハーディスト。
クリスは思い出したかのように誰に向けて、という感じでもなく全員に聞こえる独り言のように聞く。
「そういえば団長、どこを探索しに行くんだい?ここら辺には軍需工場だって——」
「ああ、そーだね! 団長は確かねーこの前に見つけた地図がどうとかって言ってたよ? いいところがあったんじゃないかなー!」
答えたのはハーディストであった。彼はそのまま伸びをすると横になり、クリスの上に膝枕状態で倒れ込む。
「ひまだー」
「.....あんまり遠慮がないんだね」
そうやって暫くの間車両は走り続けた。たまに化け物が追ってくるのを迎撃しつつも激しい戦闘は起きない。約4時間、途中で燃料を補給して、そして巨大な山々を超えていくと、ついに辿り着いたのは、ジャングルであった。
「オアシス....ですか.....」
とはいえただ見つかっただけとは限らない。知らないだけで既に他勢力がいる可能性も十分にあるだろうとは思う。
オアシス全てに人が住んでいるわけではない、ものによっては中継地点のような役割もあり、ディア達の住むデルタにも所有するオアシスが二つある。
デルタにあるオアシス、そして南方に2時間以上進むことで見つけられるオアシス、そしてここはまだ畑も何もない、一見してまだ開拓されていない場所であった。
盆地の構造になっており、たまたま気づかれなかっただけかもわからない、盆地の面に僅かに車両が侵入したところでグランツ達はその地へ降りた。
「なかなか暗いですね、まだ夕方なのに」
「山は日差しが入りにくいから日が暮れやすいとは聞くね、それに木が大きいから影になっちゃってるしね」
団員の内で数人が先行して、それに続くように次々と向かう。
「クリスくんさー、あんま怖がらないタイプ? こういうの初めてじゃなかったりする?」
「え....? まああんまり怖くはないかな」
地面はぬかるんでいて根が地上にでていて足を躓きそうにもなる、静かに全体を踏破するように進む。
ディアたちもまた後方でついていくようにしていたがその時だった。
「っぅおお!? ぎぃゃぁあああああ——!!」
前方で悲鳴が鳴り響いた。ディア達は確認できないにしろ武器を手に取るがその時、バックパック無線機を背負うギャドルは言う。
「トラップだと、原始的なヤツで落ちたら串刺しだから死なないように気をつけろと」
「ああ了解させてもらったぜ」
「トラップ.....人が既にいる.....?」
「そうかもな、だったらせめて話し合いで済むといいんだがな....既に1人———」
そんな話をしている中でクリスは頭上の方を見上げるとそのまま静止する。
「....今....何か音が気がするかな、人間....ではないと思う」
クリスの言葉に数人が上を見上げるがそこには何かいるようには見えず、だがディアは銃を構える。
「......ディアは見えるのか?」
「いや見えないですけど.....」
その時、何かが落ちてきた。その落ちてきたもの、足元を見た時に見えたのは尖った石ころであった。
「あちゃー、“そっち”かー。面倒くさいかもねー」
ハーディストは笑いながらそう言って手元に鎖の付いた剣を取り出す。
「俺は初めて戦うもんと言わせてもらうぜ? まあどっちにしろ、こうなる気はしたがな」
「えっと....一体なんなんですか....何と....」
「豹猿だよ! こういうことをしてくるのはね!」
茂みの影の中で僅かに見えたのは、敵の動向の光であった。




