第57話 真意
ディア達がいなくなったのを見ると今まで黙っていたオスカーが口を開く。
「完全に読まれていたようですね? 首領」
オスカーがそう肩をすくめながら言うと、バルサークは手で顔を覆い上を向く。
「そうだなァ....やっぱりワシ自身そう思うな。思った以上にガルグが死んだことで冷静な判断ができねえんだ」
「そうでしょうね。貴方が一番惹かれた言葉は”息子さんの弔い“でしょう? 見え見えですよ」
バルサークの心はガルグの訃報から大きく乱れていた。首領という立場は威厳そのものでもあるため簡単に変えればその価値が揺らぐ。最近まで表舞台に立てなかったのもそれが原因で、そして心の整理はついてきたが未だに脆い。
バルサークは少し項垂れるように身体を動かすと、オスカーの方を向いて聞く。
「今のワシにまともな判断を期待するなよぉ? すげえあの提案に乗りたいと思うんだぞ」
悩むバルサークを見てオスカーは少し考えると意見する。
「....そうですね。私も賛成といったところでしょうか? アルファ国襲撃を退けたことである程度の抑止力にはなっています。ですがそれ以上に気になることがございまして」
「気になること?」
バルサークがオスカーに聞くとオスカーはさらに自分の推測も交えて話し始める。
「シグマ国はデルタの弱体化を当時触れ回っていたようです。そうなるとなぜこちらに執着するのか?という話になります」
「そんなの他国に攻めさせることでより弱体化すれば、シグマ国がデルタを攻めやすくなるからだろなあ。それに攻めた方の国の戦力も削れて.....いや....なぜだ...?」
バルサークがその違和感に気づいたのを見るとオスカーは嬉しそうに続ける。
「そうです。漁夫の利を得るのならアルファ国の戦闘の際になぜ、シグマは攻めて来なかったのでしょうか? 話によるとプサイ国に侵攻をしていたようですが、肝心のデルタには向かわなかった」
「......直接攻撃を....恐れている...?」
「そうなんですよ。彼らはすぐに滅ぼせる戦力があるように見えてそうではない。私はクリス・C・フラクトリアが関係してるように思えます。これはあくまで私の考えなのですが、言ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、頼む」
バルサークは首を縦に振るとオスカーはにこりと笑い答える。
「クリス・C・フラクトリアは...敵が強くなればなるほど、それに合わせて演算が強力に作用する。いわば生存本能による打開性の高さです」
バルサークは抽象的なオスカーの言葉に困惑するが、オスカーはさらにそのまま話を続ける。
「彼の思考速度は人間を超越してる。だからどんな能力にも対策を作り出し、即興戦闘では勝てない。それはエックスとの戦闘で蘇生能力という未発見だった能力を引き出したことからも明らかです。シグマは同盟国を集めて戦力を増強する手段を取り、そしてその間はデルタが消耗するように駒を進めるのですよ」
オスカーの言葉にバルサークはしばらく考えが纏まらず、唖然としそうになるが、少し整理すると聞き返す。
「つまり、イプシロンが味方につくということは弱体化の防止だけじゃない訳だな? シグマが増強してデルタが滅ぼす前に、こちらも戦力を整える準備ができると」
バルサークが理解したことにオスカーは首を縦に振ると結論を話す。
「イプシロンの名があれば同盟国を増やしやすいですし、組んだ方が得策ですよ?」
「そうか.....やはりそうだったか.......はぁ......」
バルサークは大きくため息をつき、目を瞑るとオスカーは問う。
「どうしましたか? 不満でも?」
「いや、自分の判断を信じられなかったモンだからな....少し安心したんだ」




