第55話 信頼の値
「大丈夫ですかね...どこにもいません...」
「きっと大丈夫さ、僕らは彼を信じて探そうよ!」
たしかに不安にはなっちゃうけど、フィアノールの追撃が来てないことからクリス君がもし殺されたとしてもただ殺された訳じゃない、むしろ生きている可能性は十分ある。だからここは不安を煽るよりも希望的に考えさせるべきだろう。
リドたちはクリス達を探すのだが、しばらくしたその時にリドが目にしたのはクリスとその横にはフィアノールを抱えるメロが歩いていた。
リドは咄嗟に銃を手に取りそうになるが、理性でそれを止める。
これどっちだ......? 裏切り....それとも何か別の事情が起きた....? 勝敗がついたならなんで拘束してないの?いざという時のために武器持ちたいんだけどね...今後の信頼関係に響く可能性があるからなあ......
リドは思考し始めるがクリスは疑う彼に距離がある状態でそのまま声をかける。
「ごめん、話を聞いてもらってもいいかな?」
「....うん! 何かあったのかな!?」
リドはまた胡散臭い笑顔を作りいつも通りの雰囲気を作る。胡散臭い顔のいい所は、動揺した時にもいつも通り下手な笑顔になるから悟られにくいんだよね。
「すごく簡単にいうと交渉を持ちかけられたんだ! 判断は君たちに任せるけど、僕は信用してもいいと思ってる!」
クリスの言葉にリドは不安な気持ちを宿しつつも他班員とともに近づく。
「それじゃあちょっと聞いてみよっか。一応聞きたいんだけど、一時休戦ってことかな?」
「うん、そうだよ」
近づいてもなお攻撃がないのを見てリドは少しだけ安心するとフィアノールと対話し始めるのであった。
*****
「交渉って.....俺らはあいつらに殺されかけたんだぞ....」
「それに裏切られたらどうするんだよ...」
班員達は憔悴してる者や不満を垂れる者、状況を確認する者や、疲れで眠ってしまう者など、様々な人が混沌としていた。
友を殺された者もいるだろう。それぞれの心情が渦巻く中でロイとディアは話をしていた。
「なんとか....終わったようですね...」
「ああ......まあそうだけどな、あんな殺し合いをして直ぐに交渉かよ....最初から戦うなっての....」
ロイは旅団メンバーの死にやるせ無い怒りはあった。死にかけて、それが全部無駄だったような、そんな気分なのだ。
それを見たディアは心配して、何を声かけしようかと考えると先程の事を冗談として口にしてみる。
「ふふん!と言って、本当はお姉さんの裸を見てちょっと嬉しかったんでじゃ無いですか!?」
「........裸では.....なかっただろ....」
ロイは肯定するのは嫌だが、否定するのも少し可哀想で、かと言って無視するのも空気を良くしようと言ったディアに対して失礼な気がしたので、ただ事実を述べる返しかできなかった。
ディアは若干正気に戻り、だんだん恥ずかしくなってくるが、直ぐに考えないようにした。
ディアやロイ達はしばらく待っていると、15分ほどでリドが皆の元にやってくる。
「どうでした? 団長」
ディアがリドにそう聞くと、リドは頭を傾げながら迷っている素振りを見せる。
「んーまあね〜.....悪くはないんだけど...一旦デルタに持ち帰るしかないかなあ....」
「そうですか、お疲れ様です」
ディアはそう微笑むと、リドもいつもの笑顔を作り元気よく答える。
「うん、みんなもお疲れ様!」
和やかな表情を作っているがリドの中では不安が渦巻いている。それは信頼についてである。
この戦闘で旅団メンバーは大きく減ってしまったな....イプシロンが味方になるなら合理的に考えればプラマイでプラス....なーんだけど、旅団メンバーで友を失った人間も多いし、このまま有耶無耶にするのは旅団全体の指揮の低下につながっちゃうかもしれない.....一旦は全員のメンタルの確認をしないとね〜。
そんなことを考えつつ、リドは帰還の指示を始める。フィアノールをデルタに連れて行くのは少し不安だが、彼女の言葉は合理性がある。いざという時は。そう考えるのであった。




