第48話 奇突撃
車両はビル群を縫うように路地を曲がりながら進む。フィアノールは走り続けたまま銃を放ち、車両の窓ガラスが割れる。
「ちょっとまずいね...! 確かスナイパーもいるんだよね...!?」
「そうだね、それに相手の能力がわからない以上はこっちのガソリンが切れれば追いつかれると思うよ」
リドが迷っていると、クリスは車両の窓を開けていることに気づく。
「君たちはこのまま逃走して。僕が戦帝を倒す」
「いやまあそれができたら一番だけど、危険すぎるんだよね。だったら僕が...」
「むしろチャンスなんだよ、相手は追うことに集中してる。まだ追いついていないってことは相手の能力は車にすぐ辿り着けるなんてことはないっていう底が見えてるんだ」
リドはクリスを止めようと考えるが、一瞬考えると首を横にブンブンと振って真剣な表情で言う
「わかった。だったら君はフィアノールとの戦闘をお願いするよ、僕たちで三級者を倒して見せる」
「...頼んだよ」
「任せてよ! クリスくんも是非頑張りたまえ!」
いつもの胡散臭い笑顔でリドはクリスを鼓舞すると、車両が曲がって視線が切れたタイミングでクリスは車両を飛び降りる。
クリスはすぐに路地の側方に隠れると地面に八芒星を描き[解放]すると息を潜める。
機関銃のように絶え間なく連続性のある足音はだんだんと近づき、そして今その次の瞬間、クリスは追ってくるフィアノールに向けて[不変剣]を振るうのであった。
「リーダーがいない....何かあった可能性がある」
ネクは無線でそう伝えるとラルフは一瞬考えると応答する。
「このままネクは車両を観測....リノアはタイヤを撃って止めたりは....できない?」
「動いてると流石に無理なんだが.....私の射撃は早撃ち特化だし」
「だそうだよ」
ネクの言葉を聞いてラルフはしばらく考えると呟く。
「なるほど、了解...」
ラルフはビルに接合される物を次々と撃ち落としていく。大小様々な物が落下していく中でもディア達の車は走り続ける。
「なんだこの攻撃....! 当たったらやべえ...!」
ロイは焦りながらも運転し続けるが、その前現れた物でその真意に気づく。
「道路が封鎖されてます....!」
それは落下物によって作られたバリケードのようなもので、それを見たリドはすぐに指示をする。
「戻って違う道を進もう! 戦帝は追いついてな———」
ロイが車を止めてバックしようとした次の瞬間、二つの銃声と共に空気が抜けるような音が二つ車両どちらにも響く。
「なんとかパンクさせたけど、足止めすればいいのね??」
「できれば倒したいところだけど」
リノアは早撃ちは得意だが動くものに当てるのは難しい。であれば一瞬停止させるだけでリノアが車両を止めることなど簡単なはずだ。
この方法はクリスへの落下攻撃の際に使ってた弾丸の比にならないほど銃弾を大量に使う上に、一瞬しか足止めができない。だがフィアノールが追えない状況である以上はやるしかないと判断したまでだ。
ネクはバックパックを下ろすと、[触手]を出して戦闘体勢を整える。
ディア達は車両から降り、そのまま車を遮蔽物に銃を構える。
2両の車両は2mほど開けて止まり。先頭の車両にはディア、ロイ、リドは隠れ、もう一方の車には他班員5名がいる。
それを見たリノアはネクに言う。
「手前の車から離れる動きや反撃しそうなら[触手]で攻撃して牽制して」
リノアは2丁の拳銃を構えるとディア達に向かって連射し始めるのであった。
銃撃戦は膠着状態であった。
どちらの射撃も互いに隠れる遮蔽物に当たるだけで、意味はない。リド達の車はジャッキで車体をあげているようで、修理を試みているようにも見えるが、リド達の車にの後面に予備のタイヤがある。
そしてそのタイヤはすでに銃撃戦で穴が空いている。
そうなると修理などできるわけがない。
そしてリノア達の遮蔽物は壁なのに対して、ディア達は車両。そしてリノアがこれほど連射する理由は。
車両を爆破させるのが目的だからである。
車両には弾痕が多く残っており、いつ爆破するかはわからない。
逃げるのなら射撃する。逃げないのなら爆破する。
どちらを選択しても負けを決まっている。すでに数十発撃ち込んでそろそろ爆破するだろう。
とはいえ警戒は怠らない。衣服を強化して突撃してくる可能性はある。しかしそれはネクの[触手]で攻撃すればその衝撃で隙ができる。そうすればリノアが射撃することで無力化が可能。
そう考えるリノアであったが、その次の瞬間、相手の行動に困惑する。
ロイが車の扉を開けたかと思うと、エンジンを入れたのだ。
「は....?」
エンジン音が問題なく響く。
「逃げる気...!?」
リノアは車両のタイヤに向けて射撃するが、タイヤに着弾したその瞬間に弾かれてしまう。
そしてそれと同時に車両は発進し、リノア達の方に向かって走り出す。
簡単な話だ。タイヤがパンクして動かないのであれば、タイヤを一度潰れてない状態にして[強膜]を貼ればいい。
さらにいえばディアは車内に元々[強膜]を貼っていた。走行中に弾丸が車体を通さないようにと貼った膜であったが、幸運にも[強膜]が銃弾からガソリンを守り、爆破を回避していたのだ。
「ゆれ...ッめっちゃ揺れッ!!?」
車を勢いよく発進させるロイであったが[強膜]を貼ったタイヤは硬く形を変えないため、道の影響をモロに受けて車体は大きく揺れていた。
だがその突撃は効果的で、2人は驚きつつ互いに別れるように側方へと跳ぶ。
2人とも車両を避けることに成功するものの、すぐにそのミスに気づくことになる。




