第47話 凝集
下層に落下したクリスは、上からの追跡がまだ来てないことを見ると、物陰へ行き脱力したメロを横に寝かせると、もう一度八芒星を描き、[解放]をする。
これで発見を遅らせれて多少時間を稼ぐ。一番厄介なのはスナイパーだけど、最初の奇襲でメスマーが上空へ移動してから撃たれたのを見るに、地上だと他の建物が邪魔で撃てない可能性が高いと見ていい。
だからこのままリド達がいる方向に行ってしまおう。
クリスはそう考えてビルの床に空いている風穴を伝いながら地面へと降りていくと、やがて地上に着くと走り出す。
とにかく今は彼らを振り切って援護に向かわないと....リド団長の実力はわかってないから信じるしかないけどね....
クリスは味方がまだ全滅していないことを信じて走っていたその時、乾いた破壊音が響くと同時に銃声が鳴る。
「...なんの音....かな」
全速力で走っていたクリスだったがわずかに減速する。とはいえクリスの周囲に弾痕などもなく、クリスが走り進めたその時、もう一発の銃声が鳴る。
そしてその数秒後、その意図をすぐに理解する。
それは上空から落ちてくる建物の看板であった。
クリスは落下してくる看板を避けるとそのまま走り続けると、銃声の数が増え、さまざまな物が落下し始めてクリスを襲う。
....おそらくだけど狙撃で看板の接合部を壊すことで攻撃を仕掛けようとしてるけど....看板はそんなに脅威じゃないな....
見えないけどおそらくさっき戦った中の誰かがビルを伝って指示をしてるんだ。
そもそも僕が見えるのなら僕自体を狙った方が強いけど、住宅街が壁になって見えないからこんな回りくどい真似をしてるんだろう。
確かにすごい射撃精度だけど落下物自体は直撃する気配がない、これなら———
だがその時、上空から降ってくる落下物がクリスに当たりそうになり、クリスは急停止でそれを躱わす。
「...とはいえ、すごく邪魔かも———」
クリスはそう呟くがその時点で違和感に気づく。
さっきからだけど、明らかに落下物が僕を狙って落ちてくる。
魔法の類い...?狙ってるけど誘導性は全然ないから避けるのは簡単だけど...一体....
*****
「———なんて考えているんだろうか...」
「おそらく、とりあえずこのまま狙撃で時間を稼いでほしい」
「了解」
無線から聞こえるネクの声に応答する。それはビルの屋上から狙撃する三級者の兵士、ラルフの呟きであった。
単純な話、狙撃は計算。ビルを伝うネクがクリスの位置を常に伝えることで僕は次々と物を落下させて攻撃する......
もちろんそれでは当たらない。だからネクに敵と落下物の誤差を聞くことでその誤差を埋めていく。通常の兵士なら不可能だけど狙撃に特化した三級者程度なら流石にできるのだ。
戦闘中は無線機のバックパックを背負うことができなかったため連携が取れなかったが観察するだけならネクと連絡が取れる。
もちろんラルフの攻撃ではクリスは避ければ倒すことなどできない。だが全速力を出した際に当たる位置を撃ち続けることで全速力は出させず、仲間と合流するまでの時間を少しでも延長させるのが目的なのだ。
.....リーダーなら敵を全滅させているようにも思うけど、数人は逃すと考えた方がいい。その逃した数人を倒す時間をここで作れば.....
そう考えるラルフであったが、無線機から入るネクの言葉に困惑することになる。
「敵の車両が2両こっちに向かってる、リーダーが追いかけてるけど流石にまずい.....!」
「.....了解......」
こちらからは車両が見えない。リーダーがいた方向を考えると逆側から走行している以上は計算が完全に狂う.....これでは無理だ。
「ネクはそのまま敵を追って状況を」
「わかった」
「救援が.....いや、違う......」
クリスが目にしたのはディア達が乗る車両で、クリスは一瞬安心するが、車両に乗る皆の表情で、むしろ緊急事態であると判断する。
クリスが思考をしていると車両にいたリドが声を上げる。
「クリスくんっ!!このまま乗り込めるかいっ——!?」
「うん!! そのまま減速しないでもいいよ....!!」
クリスはリドの言葉に大声で返すと、クリスはリド達が走る方向に同じく走り出す。
流石のクリスでも真正面から衝突するように乗ることはできない。車両に合わせて走ることで、速度の差をなくして乗るしかないのだ。
車両は徐々にクリスとの距離を縮めていくと、クリスはタイミングを見計らい、車両の取手に手をかける。
クリスはそのまま地面から足を離すと車両に足をつけ、そのまま窓から中へと入る。
「クリス....大丈夫かよ...!?」
ロイが声をかけるとそれに対して親指を立てて無事であるとクリスがジェスチャーする。
「事情は聞いてるよ! 大変だったんだね!」
リドは笑顔でクリスに言葉をかけるが、その顔が冷や汗をかいていることに気づく。
クリスは後方を見ると、フィアノールは走ってきていることに気づく。
「あれは特級者フィアノールです....! 一旦ここは....」
「........」
ディアの言葉でクリスはその脅威を肌で認識するが、フィアノールのその移動をじっと観察して、ただ黙っていた。




