第46話 綻び
リドは先ほどフィアノールに投げた拳銃を拾うと銃を一発地面に撃つ。
フィアノールが階段を登る音は連続的で絶え間ない足音。歩行でいうより嵐が通るような感覚に近い。
銃創の痛みがリドを苦しめるが笑顔を保つ。煙幕は徐々に広がっているが、もうすぐ切れるだろう。
リドはリボルバー拳銃に銃弾を装填すると煙幕を背にして構える。
そして10秒もしない内にフィアノールはリドのいる階まで上がってきた。リドは相手に向けて射撃するがフィアノールはそれを見てカウンターのように即座に銃を構え放つ。
リドは射撃タイミングと同時に煙幕に紛れようと跳ぶとそのまま転ぶように後ろへ倒れ、一度受け身を取る。
ここで大事なのは即死を回避すること。受け身時にフィアノールの放った銃弾が頭上を通るのを見てわずかに安堵しつつそのまま後方へ走る。
廊下の突き当たりの壁は風穴が空いており、陽光が入り込んでいるのが確認できる。リドはそこまで走る。
一方でフィアノールは彼の放った銃弾は避けており、高速でリドが逃げたであろう方向へ走っていた。
フィアノールが煙を抜けると風穴から飛び出す人影があり、フィアノールはそれに追いつくとその背中にナイフを突き刺す。
彼は力無く倒れ、下へと落下し始めるがフィアノールはそれを無視して風穴から上を見上げる。
「マジで言ってる....?」
それは壁伝いで登るリドの姿であった。
リドの狙いの一つとしてはここで味方の死体を使い、自身の死を装う。
その後に上階で足音などを出して囮として時間を稼ぐことだった。
フィアノールは表情も変えることなく、銃を構えるが、其の瞬間、緑の光がフィアノールの視界に入る。
その瞬間、フィアノールの前に現れたのはメスマーであった。
ディアを逃した直後に見たのはメスマーの姿だった。抵抗するために使った煙幕ではメスマーが気づかない可能性がある。そのため、音でも気づけるように先ほど地面に銃弾を放った。
メスマーはショットガンを風穴の淵にいるフィアノールに向かって放つ。
屋上に行くことには失敗したけどチャンスを作った。これなら——
そう考えるリドであったが、フィアノールはそのままの勢いで止まることなく、その次の瞬間にはすでにフィアノールの姿は消えていた。
「な…….っ!?」
メスマーはフィアノールはが消えたことに一瞬戸惑う。一方でリドは、フィアノールが1階分下の窓の淵に手をかけて耐えていることに気づく。
窓枠にかけている手は震えひとつもなく、枠から入ろうとするのを見てリドは銃を撃つが、フィアノールの侵入の方が早く、逃げられてしまった。
「メスマーちゃん、一旦ここは——」
リドは指示を出そうと声をかけるが、メスマーの腹部に出血があることに初めて気づく。
「いつから......!?」
リドはそのことに驚くが、当の本人であるメスマーも混乱しているようであった。
冷や汗をかいているが右手にはショットガン、左手には[起動紐]を持っていて傷部を抑えることができない。
「一旦上に登ろ...っ!」
リドは提案するようにそう言って屋上へと登ると、メスマーも[起動紐]を発射して屋上へ登りきるのであった。
リドはすぐに包帯を出すとメスマーの腹部に巻き止血し始める。その中でメスマーは状況を説明し始める。
「2班は別働隊に襲われてクリスが交戦中....4人とスナイパー1人.....1人は魔法使いで[触手]を2本頭から出す能力で射程は10m....」
「.....了解....そうなるとちょっとまずいね....」
リドは冷や汗をかきながら状況を確認し始める。
クリスくんが交戦中ってなると援護は期待できない....? どうにか一級者である彼は回収してから撤退したいところ.....なんだけどな。
リドはそんなことを考えていると、下から車が発進する音が聞こえ、慌ててメスマーに言う。
「メスマーちゃん、お願い」
「....着地は任せます」
リドはメスマーを抱えるとメスマーは[起動紐]を連立するビルへと放ち、ビルから飛び降りる。
「うおっ...!!」
リドは移動の風圧を全身で体感しながらも、目線は車の方を向いており、そのまま車の上へと着地する。
着地した瞬間に車体は大きく揺れ、衝撃で脚に痺れるような感覚が通る。
「団長....!?」
中にいたディアやロイは驚いているようで、リドはそれを見るとちゃんと逃げていることに安心して、いつものにこやかな笑顔を作り出す。
「やあ、きちゃった」
そんなことを言いつつもリドが後方を見ると、フィアノールがビル内から出てくる瞬間を見る。
まずいかな......で〜もちょっと綻びが見えたかもね。
メスマーちゃんの奇襲に対して本当に高速で移動してるなら下ではなく横に避けて迎撃すれば確実に僕ら2人を抹殺できたはず。でも下によけた。つまりそうせざるを得ない理由があるんだ。
そしてもう一つは銃声がしてないのにメスマーちゃんが撃たれた理由。狙撃かとも思ったけどフィアノールの銃のトリガーが戻っていたから確実に発射してるはず。
そうなると思いつく魔法は.....なんて僕に特定することはできないか.......
リドは思考をしつつも次の行動の準備を始めるのであった。




