第44話 滅越の少女
そもそもだ.....なぜ僕に襲いかかった...?
能力がわからない僕の武器。そして僕が一級者であえうと流石に認知してる筈...実際能力を見抜いているようだったし....
そもそも僕に攻撃を行う必要性がなかった筈....だってこれで三級者を数人失う可能性だってあった.....魔法を奪うためだけにこんなことを...?慢心していたのか?
いや違う。明確な目的があった筈だ。襲いかかるのに犠牲を避けようとする。負傷してかつ逃走したメスマーを追う様子もなく僕と戦うことを選んだ。それは——
脅威となる人間を引き留めるため
クリスの思考にその可能性がよぎった瞬間に冷や汗が流れ、同時に恐れた。
全ての矛盾が繋がったような恐怖。クリスの気づいた作戦の本命。それは“クリス以外の全滅”であった。
「これ以上変な真似をするならこの女を殺す。素手でこの子を殺すくらいなら簡単だよ」
リノアやネクは攻撃をすることができず、クリスは[不変剣]を拾い、床を叩き砕くとそのまま下層へ落下する。
正直このまま人質にしてるだけだとまずい。この戦闘で生き残ることはできるけど、人質を抱えたままの移動じゃリド達にくるであろう”脅威“による犠牲がとんでもなくなる可能性がある。
実際、僕を殺すのが目的なら迷わず撃つべきだった。仲間を殺すことの躊躇いもあるが、このまま人質を取り続けるならそれはそれで時間を稼げるから撃たないんだ。
一級者までなら僕は把握できてる....一体何が.....こんなことを......
*****
クリスが戦闘に入った時とほぼ同刻の市街地、ビルの上階からリドは道路を高速で移動する“それ”を観察していた。
絶え間なく鳴り響く銃声の連続。兵士や戦士たちは迎撃しようと銃を放ち、剣を振るうも無意味に殺され続けていた。
道路の障害物の裏で構えていた名もなき1人の兵士は“それ”をみて恐怖と共に困惑した。
銃を構え、“それ”に射撃したその瞬間、消えた。
いや、正確には一瞬で兵士を通り過ぎた。背後からくる殺意を感じた兵士は、自身の生存を諦めると振り向くこともなく皆に伝えるために大声で叫んだ。
「フィアノールだ———ッ!!!!」
そしてそれと同時に兵士の脳天に銃弾が突き刺さり、絶命する。
身長は130cmほどで幼女のような体型。緑色の長髪。軍服とアーマーで身を包み、手にはリボルバー拳銃。
無表情ながらもその眼にはどこか世界を見据えたような深緑の瞳孔はビルの上階にいるリドと目があった。
「うわ、見られちゃったよ」
リドはそう呟くと戦闘の準備を始めるのであった。
所属国イプシロンの旅団リーダー
戦帝フィアノール・ガリウム。特級者であり能力は[高速移動]
と!されてるんだけどね。ちょ〜っと違う魔法かもしれないかな?
めちゃくちゃ速いんだけど脚の動きが素早いとかじゃないね。見る限りは一歩踏み出した瞬間に3m先に瞬間移動する。っていうのを繰り返して高速移動してるようだね。
「あの、私はどうすれば...!」
観察するリドにディアはオロオロしながら指示を貰おうとするとリドは再度確認をする。
「今さっき見たらしいけど、右腕の内側に括り付けられたあれが魔法なんだよね?」
「そうです...[魂迫]が漏れ出てるので道具系で確定です...!」
「了解〜、とりあえずフィアノールが登ってきたらディアちゃんは逃げる準備しときなよ。ロイくん達もね」
リドは少し震える手を制御しながらナイフを手に取る。笑っているが冷や汗が伝い、ディアは心配する。
「団長は....どうするんですか....?」
「あはは....あくまで時間稼ぎ。クリスくんとメスマーちゃんが来るまでのね」
「私に考えがあるんですけど....いいですか?」
ディアの言葉を聞いてリドは少し考えると、それが正しいかを問う。
「うん、もしかして[強膜]?」
「はい、少し考えたので——」
リドのいるビルにはディアやロイなど合計18人の旅団メンバーが迎撃する用意をしている。
倒すのはほぼ不可能とリドは悟りつつもディアの考えを聞くことにするのだった。




