第42話 作戦群
廃れたビルの中階でのネクによる奇襲。咄嗟に遮蔽物に身を隠すクリス。武器は[不変剣]のみ、他に道具はない。
クリスは一瞬だけ考えると先ほどまで隠れていた遮蔽物から身を乗り出してネクの方へ向かう姿勢を見せる。
それをみたネクはクリスに向かって射撃しながら[触手]で襲いかかる。
クリスは銃弾を避け、襲いかかる[触手]を切り払おうとするが、[触手]は[不変剣]がぶつかった瞬間に触手が緩むと斬撃をしならせられ、切断に失敗する。
その中でネクはクリスの能力についてリノア達と話し合ったことを頭で整理し始める。
多分だけど...クリスの魔法は脅威になるようなものじゃない....もしくは隠す理由がある。
刃を飛ばすとかの遠距離攻撃じゃないし、メロの近接戦に対しても特殊な魔法発動の気配はなかった。”道具系“で剣ならば.....幻覚とかの類いはない....
[解放]状態のメロの攻撃に対応できてたし....そうなると可能性としてあるのは[身体強化]だけど....でも“道具系”......切れ味が異常な高さでもない。剣の副次効果で身体能力が上がる....?いや....
接近系統でも遠距離攻撃でも防御でもないということしかわからないし対策が取れない。
魔法同士の戦闘において初見殺しが最も危険。だから先制をとって殺すのが理想。ここは——
[触手]の攻撃を続けたままネクは側方へと走り出す。それを見たクリスは[触手]を切り払いながら追いかける。
クリスの異常な身体能力に、ネクはすぐ追いつかれそうになるが、ネクはすぐに窓から飛び出し屋外へと落ちる。
クリスは即座にネクが落ちた窓へ向かうがその次の瞬間、背後からの足音に気づく。
それはリノアであった。彼女はすでに2丁の銃を構えており、今にも発射する瞬間であった。
それを見たクリスは即座に思考し始める。
銃弾は二発.....深追いしたせいで遮蔽物に無傷で隠れる事はおそらく難しい。一か八か賭けるか....?
いや、流石にリスクが高いだろう。被弾前提で倒す...?いや、魔法のない相手にダメージを受けては後の3人に対応できない。だったらここは....
クリスはリノアの方を見て[不変剣]を構えるが、その瞬間、床に剣撃を振るい、一瞬で床が破壊され、クリスの身体にふわりと浮くような感覚が襲う。
だがリノアはそれを見るとニヤリと笑い、クリスはその表情に悪寒が走る。
そしてその次の瞬間、階層に落ちるクリスの前に居たのは、下階で構えたまま待っていたメロであった。
メロは落ちてくるクリスに対し大鎌を構え、刃を向けて思い切り振り上げた。
「く......ッ....!!?」
クリスはその攻撃に対し身を捻り、大鎌の刃を側方から蹴り受け流す。鎌の軌道をずらすと[不変剣]をメロの首元に向けて振るう。
できるだけ殺すつもりはない。首に寸止めでこのまま人質にする。クリスはそう考えてメロに落下の勢いのまま飛びかかるがその瞬間、ネクの[触手]がクリスの脇腹に命中し、クリスは吹き飛ばされる。
クリスは即座に受け身を取ろうと、床に手をかけたその瞬間、ラントが物陰から飛び出すとナイフを振るう。
「...がッ———!」
クリスは頸動脈を狙うナイフを腕で防ぐ。腕から血が流れ落ち、クリスの身体は吹き飛ばされたことで血がその軌跡を描くように地面を濡らしていた。
今の動きに対応された....? いや違う....誘導されたんだ。[触手]の男の奇襲と同時に、上階に青髪の女が階段を上がる事で僕を焦らせる。
外は狙撃の可能性が出る以上逃げられない。そして僕に銃を向ける。
最初の戦闘で僕が銃弾を完璧に避けられないことをわかったから、僕が戦線を離脱するために床を破壊して逃げることを読んでいた。
床の破壊位置はおそらくだけど[触手]の男がギリギリまで窓近くで応戦してたことから先に窓近くだと決めていたんだろう。
そして下階に降りた僕に対して、カプティブの女は最初から攻撃を避けられると見越して攻撃をし、その間に窓から下階に降りた[触手]の男が僕を攻撃して暗殺者の男がいる方向へと飛ばして殺すつもりだったんだろう.....
たった一瞬でここまでやるとはね....
クリスはわずか1秒にも満たない時間で相手の作戦に気づき驚くが、それと同時に上階でクリスを見下ろすリノアもまた驚きつつ思考していた。
正直予想外だったんだが。地面を爆破するかと思ったら剣撃だけで破壊した....?? [破壊力向上]みたいな魔法じゃない、多分だけどあれは素の身体能力....そしてあの武器は全然刃こぼれしてない。ここまで見れば流石にわかる。クリスの魔法は多分だけど壊れない剣....!
身体能力は規格外。銃を避けることから、当たれば倒せるけど一発程度なら余裕で避けられる....!
これほどの身体能力...クリスは多分だけど攻撃や駒としての強さは2級.....いや3級にも落ちる可能性もある....
だけど魔法や作戦に対しての対応力....! 特級にも届くほどのレベルなんだが......!




