第41話 引き留め
クリスは[不変剣]が地面に落ちる前に拾うと、メスマーの[起動紐]を持った方の腕をビルの上階方向へ向けさせると、メスマーは意図に気づき、引き金を引き[起動紐]を発射する。
緑色に光る紐が上空へ飛ぶと、20階建てのビル、最上階の正面窓跡に引っかかり、一気に2人は上へと引き寄せられる。
それを見たネクは驚きつつ[触手]を伸ばすが射程が足りないのを見てネクは思考する。
ワイヤー能力......高速移動ができるのか.....[触手]より発射速度は遅いけど距離が長い....
高速移動を見たリノアは銃を上へ向けて2人に向かって放つが、クリスは[不変剣]を急所に当たらないように構えて防ごうと構える。
幸いにもリノアの放った銃弾はクリスたちには当たらず、外したのを確認したクリスは上空から[注視]する。
やっぱり魔法使いは[触手]の男だけ....人数は四人。[解放]さえできれば銃だけ警戒すれば十分倒せる....
そう考えていたその時、何かが突き刺さるような音とほぼ同時に銃声がなった。
「ぐ.....ぅ.....あぁ!!」
血が風圧で飛び散るのを視認したクリス。それは自身の血ではない、メスマーの足を見ると抉れたような銃創ができていた。
撃たれた....!? いや、銃創の方向から下方向からの射撃じゃない.....これは.....狙撃....!
銃声はわずかに遅れていたかた距離は600m前後だろう。どこから撃たれたかまでは正確に特定できない.....とはいえだいぶまずいな....
[起動紐]の引っかかった窓跡につくとクリスはメスマーを抱えてビルの中に飛び込む様に入ると狙撃を回避するため隠れる。
「狙撃されてる.....! メスマーはここで待機して——」
「いや....それじゃあ危険.....」
メスマーは包帯で自身の止血をしながらクリスの言葉を止めるがクリスは続ける。
「いまここで死ぬ方がまずいしその傷は....!」
「そうじゃなくてここにいても助けはこない.....仲間を呼ぶ必要がある.....クリスがここで戦闘をする間に私が救援を呼ぶ....その方がただ私がここにいるより勝算はある......」
クリスはメスマーの言葉を聞いて一瞬だけ思考すると首を縦にゆっくりと振る。
「わかった。でも絶対死なないでね」
「それは....こっちのセリフ」
メスマーの止血が完了するのを確認すると、メスマーから煙幕弾と手榴弾を受け取る。
その場で煙幕を使うとしばらくして手榴弾のピンを抜き、煙幕中の窓から地上へと投げる。
そしてクリスはすぐに階段やビル内の穴を伝いながら地面へと降りていく。
煙幕で一瞬でも気を引き、手榴弾による攻撃をする。地上にはもう誰もいなかったが、少しでも攻撃の素振りを見せて一瞬でも注意を引く。そしてその間にメスマーは[起動紐]で味方の元に向かってもらう。
僕は途中の階層で止まることで、待ち伏せを狙う。
クリスが[不変剣]のみで銃や手榴弾の類を持たないのには理由がある。この世界で銃はリボルバーかライフル、だがクリスの時代にあるものと比べて精度が低く連写も難しく、今の人間は訓練で慣れているため使えるが、過去の人間であるクリスにはまともに扱える武器ではない。
手榴弾や煙幕弾は戦況を運ぶには便利だが、それを[不変剣]に合わせて持てば流石に銃弾が避けられなくなる。
とはいえ[不変剣]を捨てて通常の剣と手榴弾の併用をすれば銃弾を回避できる機動力は確保できる。だがクリスの身体能力で使い続ければ通常の剣はすぐに使い物にならなくなる。
そのため現状では[不変剣]が最もクリスと相性がいいのだ。
狙撃した弾は魔法の類ではなかった。魔法がある可能性はあるとしても直接攻撃型ではない、あるいは距離があると使えない制限がある可能性が高い。
いや.....さっき接近戦をした4人には魔法を持ってない人間が3人もいた。彼らが魔法を持っていないということは狙撃してきた人間も魔法がないと考えていい———
その瞬間であった。階層を降りている最中のクリスに対して、突然正面窓の方からネクが窓枠を飛び越えて侵入してきた。クリスはその動きに対して考察し始める。
たった数分でここまで登れるとは思えない。おそらくは[触手]を使って建物の外壁を伝うことで一瞬にして登られた。
クリスは[不変剣]を構えるが、ネクは拳銃をクリスの方へ向け、引き金を引く。
クリスは即座に側方へと跳び、銃弾を避けると同時に、遮蔽物の裏へと隠れる。
下階から足音が鳴りだんだんと近づいているように感じる。何人かが上がってきているようで段々とその音は近づいてくる。
敵が集まる前に目の前の敵を倒さなければならない。
銃弾だけなら避けられる。しかし[触手]の攻撃も同時にされれば流石に.....いや待て.....




