第34話 深層の気性
この世界は、どうしてこんなにも残酷なのだろう。
目に映る全てが悪で汚れて、黒に紛れてる。
でも、私はそんな世界を、憎いと思ってはいない。だって———
目を開くと、私のよく知る天井があった。
いや.....壁だった。
「ふ....ぁ......」
アルファ国の襲撃から数日が経過した。ディアはベッドの魔力に抗いながら、しばらくベッドの中で格闘をして、その欲望に見事打ち勝つと、ベットから起き上がる。
「もっと寝てたい.....」
ベッドへの未練を口にしつつ支度をささっと済ませると、自室の扉を開けると、居住区の廊下をひたすら歩くと、一つの扉の前で止まり、そのドアをコンコンと叩く。
「起きてください、朝ですよ〜」
ノックをするが反応はない。おそらく...というかほぼ確実にまだ寝てるのだろう。ディアはそう考えて少し強めにノックをうつ。
「起きてください! 朝ですよ!」
ディアがしばらく扉を叩き続けると、ガチャリと扉は開く。
「ぁあ〜.....ディア、おはよう......」
髪型はボサボサでさっきまで寝てたと言わんばかりの声色でロイは言う。それを見たディアはため息をつく。
「はぁ、そろそろ自分で起きる癖をつけてください、私はもう先に行きますよ?」
「わかったからちょっと待ってくれ.....よ」
ロイはそう言って扉を閉めたかと思うと、1分もしないうちにまた扉が開くと、いつもの格好になっていた。
「よし行こうぜ」
「.....じゃあ行きましょうか」
「顔ちゃんと洗いました?」
「洗ったよ....」
ディアの質問に対してロイは少しぶっきらぼうに答えるが、ディアはさらに質問で攻める。
「歯はちゃんと磨きました? 虫歯になったら大変なんですよ?」
「....磨いたって.....ていうかさ———」
ディアが先へ進む中でロイはその場で立ち止まり、ディアも少し歩いたところで止まるとロイは言う。
「お前は俺の姉ちゃんか!?」
「ふふん、そうなのです! 私これでもお姉さんなんです!」
ロイの嫌味にディアは自信満々にそう返すとロイは続けて言う。
「てかノルンの心配しろよ! 実の弟以上に姉ちゃんするんじゃねえよ!」
「ノルンは手のかからない弟ですけど、ロイは手のかかる弟なのです、実際一個年下ですし!」
「そうですか.....はいはい」
そんなことを駄弁りつつ、2人は食堂へと向かった。
「あれ、珍しい」
ロイがふと口にしたその先には、相変わらず顔面周りが食物に塗れたクリスと、その横で静かに食事をしているウォルトであった。
「クリス久しぶりだな、戦場では大活躍だったって聞いたぜ?」
「やぁ、まあとはいえ数日だけどね」
ロイはそう言って当然の如くクリスの前の席に座ると、その横にディアが座る。
「そうだったか? それにえっと....バッター?もいるじゃん」
「俺の名前はウォルトだ、わざわざコードを言うナ」
微妙に名前を忘れてるロイが出した名前に対してウォルトは冷静にそう言うとロイは謝るが、気にしてないと言わんばかりに手を横に振る。
「そういえばなんかここの飯若干豪華になった?」
「まあそうだナ、アルファから物資をもらったからその影響だろうナ」
「なるほどな、よかったなディアぁ...?」
ロイはディアに話を振るが、ディアは厨房にいるノルンににこやかに手を振るっており、おそらく話を聞いてないのがわかると正面に向き直す。
「そういえばウォルト、君に聞きたいことがあるんだけどさ」
「......ああ...」
ウォルトはクリスの顔面の汚れ方に若干引きつつも、言葉を返すと、クリスは続けて言う。
「特級者には4人いるって聞いたんだけど、その4人について教えてもらえないかな。できれば一級についても」
「あー、まあ一級は数が多いから後でまとめた紙でも渡すから、特級者だけ説明してもいいかナ?」
ウォルトがそのように提案するとクリスは首を縦に振り、ウォルトは話し始める。
「1人目は前に戦闘した[蛆虫操作]の魔法を持つ”蠅の王“エックスだ。 前までは酸と蛆虫の操作だけとされてたが、お前のおかげで復活能力がわかったナ」
クリスは少し首を傾げ考えると、指を立てると答える。
「あそっか、ハエが湧かないように気をつけてるのってそういうこと?」
「あーそうだナ、可能性だが監視の役割もあると考えられる。だからハエは最大の障害になりかねない」
なるほどとクリスは納得していると、ウォルトは続けて言う。
「そして2人目が“不動卿”メルクライム、魔法は[絶対防御]だ。ほぼ全ての攻撃が通らないらしい、仮面をつけてるそうだから割とすぐわかるはずだな、そいつがくると流石に詰みだナ」
「それって具体的に何を防いだのかの情報はないの?」
「詳しいことはわからないが銃弾くらいなら防御するんじゃないか?そうじゃないと防御なんて名前はつかないと考えるところだナ」
「3人目は”戦帝“フィアノール、魔法は[高速移動]だそうで、まあ名前通りで一瞬で距離をつめたりだそうだナ、かなり小柄の女だそうだ」
ウォルトの言葉を聞いてクリスは少し疑問が生まれるが、一度黙り、4人目のことについて聞こうとする。
「4人目は“死神”フォーシン、魔法は[不明]、いまだに情報が殆ど出回ってない。階級表に載ってはいるが、見た目も能力も不明だから対策のしようがない、そもそもいるかもわからないナ」
ウォルトが話終わると、クリスはそこで疑問に思ったことを口にする。
「そういえば階級表はゼータが決めてるって言ったけど、魔法とか見た目の情報って写真が付いてたりするわけじゃないの?」
クリスの問いにウォルトは答えようとすると、それに横槍を入れるようにロイが手を挙げる。
「はいはいはい! 俺が答えるぜ! さっきから話入れてねえから!」
ロイのその動きにウォルトは「ああ....」と諦め気味に了承するとロイは自信満々に答える。
「階級表はゼータが決めてて魔法の強さとか名前はわかるんだけど、ゼータの予測でしかないから実際に合ってるかはまた別問題なんだぜ!」
「あ、そうなんだね。ありがとう———」
「それと見た目は階級表には載ってないから......あれ、なんでわかるんだ? ディアはわかる?」
「え、なんで急に私に話を振るんですか?」
ロイのさっきまでハキハキと動いてた口が急に止まるのを見てウォルトは答える。
「それは国同士での情報のやり取りに過ぎない、どこまで虚偽かはわからないがある程度は信用していいはずだナ」
「そうなのか、勉強になったなぁ」
ロイは感心しつつウンウンと頷く中、ウォルトは完食すると立ち上がる。
「それじゃあナ」
「え、ああ、じゃあなー」
「ありがとう、ウォルト」
「ええ、それでは」
それぞれがウォルトに別れの言葉を投げかけると、3人も食事へと戻るのであった。




