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灰と魔法の荒廃戦  作者: 山田浩輔
火薬兵器の国
31/33

第31話 蛮勇

「報告...! 敵カプティブの特攻により第三塹壕まで侵入! 盾により射撃はほぼ意味がありません...!」


 ラクトミルは指を額に当てるとポンと軽く叩き、指示を始める。

 「はっはー! 第二塹壕に敵が通るはずだ! 第ニ塹壕全体に火薬を仕掛け第1塹壕まで撤退! 機関銃の用意をしておけ!」


 「了解しました!」


 簡単な話、特攻するのであればミサイルで迎撃してしまえばいい、盾持った移動は重量を考えれば速い方だが撃墜できないわけではない。


 ミサイルの攻撃を回避するため盾を手放した所を機関銃で殺すのがベスト。だがそれほど簡単に策が上手くいくなどとは考えない方がいい。

 おそらく先ほどと同じくデルタのカプティブは煙幕弾をばら撒きどこにいるかわからない状態を作ろうとするだろう。だからそこをつく。


 煙幕弾を投げる第一投。その瞬間に第二塹壕全体に仕掛けた火薬にミサイルを撃つことで一気に爆破、一時的に戦線を下げることにはなるが厄介なカプティブを倒せる。


 バトラーがやられたとなると可能性は二つ。一つはデルタ側が強力な魔法を手に入れており、デルタ側の魔法使いが戦った可能性。もう一つは今前線に向かってる者はウォルトではなく別のカプティブである可能性。


 いや...どちらにせよ今考えるべきはそこではないだろう。


 とにかく前線のカプティブを倒す! それが今は重要なのだ!!



 第1塹壕と第2塹壕の距離は200mほど、ジルのブービートラップでデルタ側の後方は指揮系統が混乱してる。

 後方からの援護射撃はミサイルで迎撃可能、そうなるとこちらは十分勝てる戦局だ。



 


 「はっはー! 煙幕弾が投げられたのを確認したらすぐに報告をしろ! その瞬間にラクトミルがミサイルを撃ち込もう!」



 



 

 


 クリスは煙幕の群を走り抜けていた。ミサイルは全てアルファ側第一塹壕から撃たれている。



 状況を整理しよう。機関銃の警戒は最低限で構わない、盾で防げる。手動ミサイルは1台と仮定していいはず。射撃は来ない。音響ミサイルを使用しているからだ。

 煙幕はアルファ側の塹壕に多くある。このまま煙を使用して進めば、あとは接近戦に持ち込み勝てるだろう。




 

 クリスはそのまま第二塹壕へ飛び込むのだが、その違和感に気づく。


 「敵が誰もいない.....?」






 「煙幕弾、投げられました....!」


 数分が経過したその時、アルファ側の兵士が第二塹壕から投げられた煙幕弾を確認してそう叫ぶと、ラクトミルはミサイルを構える。


 「来たか! その一瞬を狙わせてもらおうか!」

 ニヤリと笑い、ラクトミルはその方向へ操作ミサイルを撃ち放った。



 「誇っていい、確かに貴様は厄介だった! そして吹き飛べ!!!!」

 

 これで吹き飛ぶ。塹壕内で左右に避けようが塹壕全体が爆破する以上は被害は免れない。ラクトミルが勝ちを確信した。だがその瞬間、想定外な事態が起こる。



 「な.......!?」



 それは非常にシンプルで、だが想定外の行動であった。まだ煙幕の一投目にして、ミサイルを飛ばし塹壕に向かって落とすその瞬間に、クリスは大盾を持ち突撃をする。恐ろしいほどの蛮勇で、だが効果的だった。





 *****


 クリスは煙幕弾を前方の第一塹壕に向かって投げながらを進みながら思考を続ける。


 

 おかしいと気づけたのは塹壕に誰一人いなかったことだ.......!最初にブービートラップが煙幕に仕掛けられてる可能性....!だけどそれだと気付かれる可能性があった、もしくは装備自体が貴重なこの世界で無駄な消費があるのを避けたかったか、その両方....!


 場所を掴めない以上は迂闊に攻撃できないと考えた時に考えられる可能性....それは


 

 塹壕全体に火薬を撒いたり地雷を仕掛ける可能性....!



 地雷を埋めるにしても即席で埋めるなら十分どこに仕掛けたかは目視可能....もしくは塹壕自体を巨大なトラップにするだろう。


 実際、第2塹壕はもぬけの殻だった。そうなると罠の可能性が高くなる....!



 だがそれは同時にチャンスでもあるんだ.....



 ウォルトからの情報によると[煙化]の魔法を持つカプティブの移動に手動ミサイルを使っていた。そしてその間は音響ミサイルのみが放たれていたと考えると手動ミサイルは一つだけであると考えていい....!


 ならばミサイルをあえて1発撃たせることで、そのリロード時間のうちに突破すればいいんだ.....



 クリスは一気に距離を推し進める。煙幕が投げられていく中でラクトミルはアルファ側の兵士に向かって叫ぶ。


 「はっはー! 音響ミサイルを撃つのを一旦停止だ!! 全員拳銃を構えろ!!」

 ラクトミルの指示で兵士たちはリボルバー銃を構え出す。



 そうか....そういうことだな?



 煙幕弾をこちら側に投げ、こっちのリロードが終わるころには煙幕の舞う場所に到達する。そうすればミサイルを撃つことができず、距離を取る....というわけか。ならばこっちは通常の武器を使う。


 自身は距離をとればいい。

 

 射撃による牽制で盾は手放せまい、その瞬間をミサイルで攻撃すればいいだろう。多少被害は出るがコイツを止めるには必要なことなのだ!!



 そうしてラクトミルは煙幕から距離をとるため、塹壕を沿いながらクリスが来るであろう場所から離れるのであった。

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