第30話 撃発
「なんとか生き残った.....運がいいぜ全く....」
「ポーンさん、気を抜かないでください、現状攻めてくる敵兵は見当たりませんが...魔法による奇襲を」
安心しきってるポーンに対してダクトは気を引き締めるようにいうが、ポーンは気にも止めずへたり込んでいた。それを見たダクトはため息をつくと、無造作に落ちてる救急キットを拾ったその次の瞬間、ピンと何かが抜ける金属音が響く。
「は———?」
その瞬間、全身に響き渡る警告音。油断で僅かに反応に遅れたその身体は——
弾け飛んだ。
「な........!?」
ウォルトは困惑することしかできなかった。ミサイルが飛んでもいないところで突然の爆破。あまりに唐突でそしてその爆発を皮切りにあらゆる場所で爆発音は響き渡り始める。
「くそ....何が起こって!?」
わからない、だがこの一瞬で状況は一変した。ウォルトはすぐさま警告を流そうと無線を起動する。
「何者かに攻撃を仕掛けられている、総員警戒しろ!」
ウォルトは焦りながらも思考するがそのとき、ミサイルが発射され至る所へ向かっていることに気づく。
おそらくミサイル達は突然の鳴ったあの爆発音に向かって飛んでいるのだろう。爆発の場所へ追撃をかけるように....一体これはなんの攻撃だ....?
その爆発を前に1人の男は笑う。
「驚いたぞ! 陣形が元に戻り始めている。おそらくバトラーはやられたのだろうが....」
「はっはー!! いやぁ、心地よい。これほどまでラクトミルの作戦が進むとはなあ! そう思わないかね、ジル」
そのときデルタ側の塹壕をゆっくりと這い出る影があった。それは赤髪で全身にベルトを巻く奇怪な少女であった。名はジル・リバーシブル、三級者である。
顔色ひとつ変えずに空のリュックを捨てると歩き去る。
作戦フェーズは3段階。第1フェーズで音響ミサイルによる機関銃の排除
第2フェーズは煙による銃の使用を制限することでバトラーの移動、これによりデルタ側で殲滅を狙う。そしてバトラー排除のために総動員しバトラーを無力化する。
デルタ側がバトラーに集中しているその間に煙の中をジルが移動、手薄になったところからジルによるブービートラップの設置により、爆破。
基本的に軍は集団で行動する。であればブービートラップで引っかかったところへ爆発音に誘導されたミサイルが追撃をかけることで効果的に一網打尽にするのだ。
「なんだ、何が起きてる.....?」
デルタ側での爆発はクリスにも見えていた。理由は分からない。突然のことで、だが明らかな異常事態。今ここで援軍を待つことは、正しくない可能性が出てきた。アルファ側はおそらく長い距離を遠征したはず、攻撃側が地雷を設置することは少ないはず....明確なゴールがある以上進軍する必要がある。
クリスは震える指を地面に添えると八芒星を書く。
「流石に連続使用は....きっついな.....」
その時、戦場の中で一つの白い煙が咲いた。それを皮切りに次々と煙が発生し、戦場を包む。
簡単な話、手動ミサイルの弱点は音響と違って視認して操作する必要がある。つまり煙幕が有効になるはずだ。音響ミサイルは爆発音が鳴る方向へ誘導される。
アルファ側の塹壕の数は5つ。
現在クリスがいる場所は第4塹壕。敵に大抵は無力化してる。煙幕弾が大量にあったためそれを利用した。できるだけまばらに、ミサイルを撃つのを躊躇うほどだ。
クリスは守備走の盾を持ったまま走り続け、クリスは第3塹壕へと滑り込む。
「カプティブだ...! 迎撃し——」
そう叫ぶアルファ兵士を一撃蹴りを打ち込み気絶させる。やはりだ、近接武器を持ち攻撃しようとする兵士や戦士ばかりだ。
音響ミサイルのせいで銃器を使うことができないのだろう。そうであればそのまま倒し切れる。
クリスは次々と近づいてくる敵を無力化していく。
「なんだこいつ....強すぎる....!?」
そのとき、ウォルトの無線機に言の葉が届く。
「こちらオスカー。現在、アルファ側でクリス単体で特攻をしているようだ」
「.....こちらバッター....謎の爆発で被害多数だ」
「クリスが時間を稼いでいる間に爆発の原因を特定しろ、敵が音響ミサイルを使用しているのであれば銃器の使用はできないはずだろう」
「知っているだろう? 彼の強さは」
オスカーの言葉にウォルトは歯痒そうにも笑う。
「知ってますよ....あいつの強さはナ.....」
クリス・C・フラクトリアは異常な強さだ。俺を......いや....全てのカプティブの中で群を抜いて近接戦闘が強い。やつのことを簡単にいうのであれば....
“身体能力の化け物だ”




