表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰と魔法の荒廃戦  作者: 山田浩輔
火薬兵器の国
28/32

第28話 爆殺音

 手榴弾の爆発の後にミサイルによる追撃でデルタ側は疲弊していた。カプティブ相手に接近戦をすれば無力にやられるのだから。そうバトラーは思考する。


 だがその様子は少し違った。

 数が多すぎる。次から次に軍兵が現れる。倒してもトドメを刺す前に次々と新手が現れるのだ。


 「流石に数が多いな、いくらなんでも....!」

 次々と来る軍兵相手にバトラーは善戦していた。次々と杭で急所を突き刺し、殺し続けていたその時、バトラーの首にあったその痣が消失する。


 「.....時間か......せめてもう少し.....———ッ!!?」


 その時、背後から現れたのはウォルトであった。バトラーを壁に押さえつけナイフを取り出す。


 全てのカプティブは[解放]で身体能力を大きく向上させる。


 だが簡単な話だ。いくらなんでもカプティブの特性である[解放]は時間制限がある。そうなれば連戦を続けさせることで時間を浪費させ八芒星を書かせないようにし、[解放]が終了したその次の瞬間にウォルトが[解放]状態で倒してしまえばいい。


 「今すぐ縛れるものを用意しナ! あと数人で押さえるぞ!」


 とはいえ慎重にやるべきだ。バトラーはおそらく魔法を何か持っている。銃弾が胸に当たったはずだが致命傷になっていないし出血もない。だがバトラーの服の胸部には穴が空いている以上、確実にあの銃弾は命中したはずだ。





 魔法には大きく分けて4つの系統がある。



 ”“強化系”“

 身体機能を拡張・変形させる系統の魔法。身体能力を上げるだけでなく、身体由来の能力もこれに該当する。

 正確には違うが一番近いのはカプティブの[解放]あたりだろう。


 ””制御系““

 すでにある物質や、生物、エネルギーなどを操作・制御する系統の魔法。発動モーションがあり、独特の制限があることが多い。


 [蝿の王]はおそらくこれに該当する。



 “”生成系“” 

物質を生成する能力、ただし一定時間経過すればどの生成物も消えてしまうため長時間は使用できない。生成物は自分の身体から生み出す形で現れる。


 [鉄生成]の魔法などがこれに該当する。



 “”道具系“”

 特殊な道具そのものとして使用する系統の魔法。使用法は完全にその道具によって違う。


 [不変剣]や[起動紐]がこれに該当する。



 


 おそらくだがバトラーの魔法は”強化系“だ。


 服自体に穴が空いてるということは制御による防御じゃない。身体の再生などの可能性がある。再生条件はまだわからない、任意発動なのか、他に何か条件があるのかはわからないが今は———



腕で抑えつけそれに抵抗するバトラーの力が一瞬にして抜けたかと思うと、実体が煙のように消え、ウォルトの腕の中には、バトラーの羽織りだけが残された。しかし、それもすぐにくしゃりと床に落ちた。



 その瞬間に理解した。いや、理解させられたというべきだろうか。


 「こんな早くバレる予定はなかったんだけどな」


 「煙.....!?」

 バトラーの身体は煙へと変化していた。それと同時に理解する。実体がないからこそ銃弾が貫通しても無事だったのだろう。煙の中に隠れるのも煙自体に紛れてしまえば見つけることはできないからだ。



 ウォルトは即座にナイフでバトラーの腕を切断しようと切り払うが、バトラーの腕は煙へと変わりあたらない。だがバトラーの周囲は軍兵達が囲んでいる。煙になって逃げるとしてもその行動から何か隙を見つけられるかもしれない。


 次の瞬間、バトラーは囲いから抜け出そうと走り出し、軍兵はそれを止めようと阻むが次の瞬間、バトラーのもつそれをみて叫ぶ。


 「グレネード———ッ!!」



 兵の言葉を聞き、散り散りに皆が離れるとほぼ同時に爆発音が鳴り響く。

 

 「どこに.....!?」

 爆発を回避したウォルトは土嚢の裏からバトラーを見つけるために目を凝らす。

 


 そしてその時、空中に飛ばされ、実体化して地面に受け身を取りながら着地するバトラーの姿を目撃する。



 「見つけた....!」

 ウォルトはすぐに銃を構えようとするがその次の瞬間、音響ミサイルが飛んできていることに気づく。


 「ミサイルだ———ッ!! 全員退避しナ....!」


 ウォルトは即座にミサイルの爆発が当たらない位置まで逃げると、一度息を整えその場で全身の力を抜くとバトラーを見逃さないように視線で追いながら思考を始める。



 ようやく狙いがわかった....カプティブの捨て身の特攻により戦力を減らすのではなく、大人数を相手にして時間を稼ぐことで注目を集め、[開放]を持続できないほど人がいる状況を作り出す....



 そしてその状況で手榴弾を使うことにより、人数が集まったところに爆発音で音響ミサイルにより追撃ができる.....そうすれば一網打尽にでき、バトラー自体は[煙化]により爆風で逃げるという算段か......!?




 


 前線の塹壕にたしかクリスがいたはず、あいつが前線で戦っているのであれば他の戦士の警戒よりもバトラー一人に集中すべきだ。


 煙の能力はおそらく物理攻撃はほぼ全て無効.....でいいのか......?いやそう考えた方がいいはず....ナイフや銃が効いてないんだ....そう考えるべきだナ.....


 物理が透ける......ということは同時に腕を[煙化]してる最中は武器を持てないはず.........煙ならば透けてしまうからナ。そしてその考えでいくと下半身を[煙化]すればおそらく動けない....



 地面を蹴ることができなければ歩行をすることなどできない、その証拠に、煙の状態で動けるのであれば囲まれた時点で全身を[煙化]させて逃げれば俺たちは手も脚も出なかったからナ....


 ウォルトは思考を回転させながらも次の一点を考え続け、バトラーを倒すための何かを見つけようとするのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ