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第23話 守備走

 「はっはー! 今こそ攻める時だとラクトミルは考えている、デルタを屈服させようではないか!!」

 自信満々に話すその男は笑っていた。赤髪の赤眼、水色のマントを羽織るその者の名はラクトミル。

 ラクトミルは背中に背負った巨大な黒い筒から細身のミサイルを腕に取り付けた発射機構に取り付けるとデルタに腕を向け、トリガーを引く


 「さあ戦慄しろ!! このラクトミルが作ったこの武器で!!」


 その言葉と共にミサイルはデルタ国に向かって発射された。



 



 ミサイルは塹壕に着弾したその瞬間、土と血煙を上げた。凶悪な爆発音と硝煙の臭いが舞い散る。



 「どうすりゃいいんだよ! あの攻撃....!」


 軍兵たちはすでに極限状態であった。小型のミサイルはデルタの機関銃を狙い放たれ、次々と破壊される。

 


 「なんなんだよ....あの魔法.....!」


 塹壕に隠れる軍兵が文句混じりにそう口にしていると、塹壕奥からウォルトが来ると軍兵に言う。


 「派手な攻撃だナ、だが非常にわかりやすい。あれはアルファの一級者、ラクトミルだ」

 ウォルトはそう口にするが、兵士は頭を抱えながら言う。

 「それだけじゃないです! 何人もがあの砲撃をしてくるのです! あの魔法は一体———ッ!」

 「魔法じゃないヨ、あれは“武器”だ。前に一度聞いたことがある。アルファの優れてる点は火山地帯のオアシスを保有してる。だから火薬兵器が異常に発達してるのサ」


 ウォルトがそんな話をしてる間にも一つのミサイルがウォルトたちより2つ手前の塹壕に撃ち放たれた。


 爆撃が響き渡り、土煙が濁流のように押し寄せる。


 「あれが武器って.....!」

 「だが弱点がない訳じゃないネ、確かに複数の敵が攻撃してくるのは厄介だがあれには明確に対処法があるからナ」


 ウォルトはわずかに塹壕から顔を覗かせた。銃弾飛び交う戦場にてミサイルに次々と破壊されている機関銃や砲を見て苦い顔をするが、同時に一つの考えがつき、塹壕にもたれるようにして言う。


 「単純な話、基本は費用対効果が高いように打つのが先決なのサ、いつかわからない軍人に撃つよりもわかりやすく脅威な機関銃や砲を狙ってる。射撃は1リロード分撃ったら即移動しナ、確実に効果がある場所をなくすぞ」


 ウォルトはヘルメットを被るとライフルを手に持ち、言う。

 「始めるぞ」


 そこから射撃が始まった。次々と銃声が鳴り響き、敵が突撃するのを射撃しながらも、ウォルト達の銃弾は“守備走”に防がれていた。



 




 「.....何あれ、ゴリアテ....?」


 クリスが戦場で一番の疑問として口に出たのは戦場を走る珍兵器の姿であった。


 それは車体にキャラピラが備えられ、その上に盾のようなものがついた自走兵器であった。クリスはその姿を見て混乱しているとリキャストが聞く。

 「おや? 守備走は初めて見るのか、それともまた嘘だろうか?」


 「いや、まあ似たような兵器は見たことあるけどさ....なんであんなネタ兵器があるの.....?」

 「....? あれは守備走という、地雷誘因や歩兵の盾のための突撃兵器だ。常識であるがね」


 「いや.....あれってバカみたいな兵———」

 クリスが反論しようとした次の瞬間、守備走が地雷を踏んだのか爆発が起きるが、守備走は転倒することも壊れることもなく進むのを見て、クリスは上空を見上げる。


 「あー、なるほどね、理解できた」

 「何を理解したのかな....?」

 


 おそらくあの兵器は、この世界だからこそ進化できた類なのだろう。

 まず、荒廃した土地に遮蔽物はほとんどない。突撃兵の死亡率はとんでもないだろうから、歩兵の盾は必須。

 次に、ガルグが貴重と言ってた銃弾を防ぐこと自体が、敵の戦力を確実に削ることに繋がる。

 これは"防御”が“攻撃”にもなるという、効率的な戦術だ。

さらには無線式だから問題なく先を突撃させられるだけじゃない。本来の"アレ"、僕の世界のあの兵器は、航空機から隠密する必要があって、防御も紙装甲で自爆兵器としてすら使い道はなかった。

 だが、この世界では違う。航空機がないのは、おそらくだが滑走路を作るにも難しい上に、まともな看陸地点もない、さらに地下に国があるということは空中からの投下爆撃も効果が薄いからだろう。そして、塹壕戦もこの世界の戦争には国という明確な”終わり"がある。だから、一歩でも先へ進むという行為が非常に有効だ。

結果として、僕の世界ではバカみたいなネタ兵器だった"アレ”が、この世界では明確な『壁」として戦術的に昇華してるんだろう。



 「いや大丈夫、それよりも作戦について聞くよ、どうg動けばいい?」

 「では質問させていただこう。 君はマシンガンやミサイルは避けられるのだろうか?」


 クリスは戦場にある所々にある固定された機関銃を見ると首を横に振る。


 「いや、無理だね。ライフル1、2発なら射点とタイミングが分かれば避けれるけどマシンガンは流石に避けれないかな」

 「ミサイルもか?」

 戦場で今も飛ばされるミサイルを指差し、説明する。

 「ミサイル自体は避けられるかな、そんなに速くはないし、というよりロケットランチャーの類に近い気もするけど.....誘導性があるの?」

 

 「ああ、弾道が明らかに真っ直ぐや空気抵抗による動きではない。狙いをつけるような曲がり方があれは明らかに誘導方法がある、可能性としては熱源探知辺りだろうな」

 「そっか、機関銃は音が他よりも持続するし熱を持ってるからどっちかになるんだね」

 リキャストはコクリと首を縦に振ると作戦を説明を始める。

 「ただおそらくは熱源によるものだ、隠密をしてる兵士にも向かっていたのでね」


 「すでに伝えてはいるの?」

 「ああ、無線により熱源の可能性が高いとはな、だがそれでも銃を使わざるおえない状況は多い、そもそも誘導がなくてもアルファ側は攻撃自体はできる。進軍するのも非常に遅い。とりあえずクリス、君の役割は護衛だ。味方塹壕側をその場の判断で動いて構わない。進軍してこられれば接近戦になる、それを制圧してもらおう」


 「そっか、了解」

 クリスは首を縦に振ると戦場へと走るのであった。

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