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第18話 ブラフ

浅いように見える切り傷は剣を握る力を弱め、出血する度に体力を奪い続けている。


 ほんの僅かであるもののクリスの息も切れ始める。


 メアリーの魔法はガルグから奪った[鉄生成]......

 

 この世界の魔法は制限があると訓練中に学んだ。


 まず一つ、魔法は二つ以上所持して扱うことができない。


 人間には”器“があり、魔法は一つが器の限界。


 コップに赤と青の水を入れるとして、それは躊躇半端に混ざってしまい、濁る。


 そのため二つ以上魔法を所持しているとどちらの魔法も発動することはないため、戦闘において使えるのは一つまでなのだ。


 


 つまり他の魔法を想定する必要はない。





 とはいえ厄介だ。[鉄生成]による剣山はもちろんだが、問題はクロスボウだ。

 剣山はある程度避けられるがクロスボウの矢は初速が速すぎる。

 

 更にいえばクロスボウの一撃は喰らえばワイヤーの斬撃も合わさって致命傷になりかねない。


 一応クリスの身体能力ならば撃つ瞬間と向きさえわかっていれば避けることは不可能ではない。だがその一瞬の刹那を見誤れば喰らう可能性は高い。


 メアリーは“魔法で作った鉄を使って遠距離を制圧”、それを“あくまで陽動”にして、“実際のダメージ源は飛び道具全般”という構成で攻めている


 双方攻撃は当たっている。だがダメージの差は明確で、クリスの方が劣勢である。


 「ねえ先輩? 本当はもう限界なんじゃないの?」


 メアリーはクスクスと笑いながらクリスに問いかけるものの、クリスは口を開くこともなく、攻撃を続ける。


 メアリーは繰り出される斬撃を避け、距離をとる。

 クリスはそれを追いかけるように攻撃を振り、メアリーを壁際に追い詰め、大剣を思い切り振るう。


 「わあ、流石の力だね! 先輩ッ!」


 その一撃は避けられ壁に激突し、崩壊した壁からはリキャスト達味方のいる場所と空が映し出される。


 「援護射撃でも期待した? でも先輩がここにいる以上はあっちも迂闊には撃てないよねッ!」


 構わない、これはむしろチャンスだ。メアリーはもう僕から大きく距離を取ることはできない。離れればその瞬間から僕を巻き込まずに援護射撃ができる。そして近づけさえすれば僕に勝機はある。

 メアリーは一才動揺せず、鉄剣山を出力してクリスの注意が僅かに鉄剣山に向いた瞬間にクロスボウを撃ち出す。

 だがそれをクリスは読んでいた。クリスは矢を見て避ける。だが次の瞬間、足に突き刺さるような激痛が走る。


 「く......ッ!!」


 「距離を取ってたら魔法と射撃武器は警戒するよね? だからこそ警戒できなかったでしょ?」


 クリスの足に突き刺さっていたのはメアリーの持っていた短剣であった。


 おそらくは短剣を投げたのだろう。防御に使っていた筈の近接武器に咄嗟に対応できなかった。

 メアリーは余裕そうに近づくがクリスの眼を見て立ち止まる。

 「ふふ、先輩.....本当は何を企んでるの?」

 壊れた壁付近にいるクリスに対して別れの言葉とともに鉄剣山は這うように走り狙い、負傷した足で十分に逃げることができない。クリスの痣も消えてしまった。


 

 絶体絶命と呼べるその状況に見えたその時、クリスは力無く崩れ落ち、外へと落下した。


 流石にあの負傷で上手く着地できるとは思えない。メアリーは走り、下の方を覗き込むがそれを見てメアリーはニヤリと笑う。



 「なんだ、やっぱりタダでは死にませんよね?」


 

 落下したはずのクリスの身体を空中で抱き止めたのはメスマーであった。


 おそらくだが[機動紐]で既に登り、そこで受け止めて降りたのだろう。


 「今死んだら会えなくなっちゃうから見逃すけど、でも他の女となんで一緒にいるの?先輩」


 メアリーはメスマーに向かってクロスボウを撃つがクリスが剣の腹でそれを防御する。


 「先輩、一番戦力として強いはずの貴方が一カ所にいて大丈夫なのかな?」

 不満そうなメアリーを横目にメスマーはその場から離脱するのであった。


 




  「もう終わりなんだぁ〜?」

 余裕そうに笑うエックスの周りの死体の山は更に増え続けていた。そしてウォルトも負傷しており、身体は傷だらけで満身創痍、そしてそこから蛆虫が侵入しようと蠢いていた。


 「さっきのカプティブは強かったから援軍も期待したんだけどぉ、期待外れだったんだねぇ」


 エックスはつまらなそうに言うと即座に距離を詰めてウォルトを蹴り飛ばす。

 一方的な攻撃が続く戦いは終わることなく、見るも無惨な光景であった。




 「流石にキツイかナ.....」


 [解放]を使えば喰らいつけるものの、魔法が厄介すぎる。どうしたものかと悩んでいると軍人が声をかける。

 「軍曹....!」

 「足止めをしナ」


 そう言ってこくりと軍人が頷くと、覚悟を決めてウォルトは身体の向きを変えエックスに背を向けると飛び出した。



 それを見てエックスは死体から銃を拾い、逃げる背に向けて銃を発砲するが、軍人は身体でその銃弾を受け止めた。


 バチュッと音が鳴り響き肩から血が噴き出るが軍人は引くことなく銃を構える。

 

 「いい加減に学びなよぉ、そんなことで———」


 その時、軍人は自身が持っていたオイルをばら撒く。

 

 「あー、そういうことぉ?」

 エックスは納得したように笑い、それに軍人は答えるように言う。

 「身体能力の高さで銃弾を避けてると思ったが違うのだな、今銃を使ったということは普通に追いかけるよりその選択が正しいと思ったんだろう? つまり動体視力が異常なだけで身体能力は強化されてない」


 「あーぁ、そう勘違いしちゃったか〜? それって私のブラフだったりするんだよね〜ぇ」

 エックスは余裕そうにそう答えるが軍人は笑う。

 「じゃあやってみせろ....でもしないんだろう? できるならとっくにやってる筈だからな」


 エックスはため息をつくとその上で笑顔を崩さす口にする。

 「アタシ嫌いだなーぁ お前みたいなやつ」

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