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灰と魔法の荒廃戦  作者: 山田浩輔
井の中の蛙
16/32

第16話 殺す戦いと生かす闘い

 クスクスと笑う。



 ただ静かにそれは笑っていた。


 そこにはいた、状況を嘲笑う者が。楽しさではなく、喜びの感情として。



 「旅団所属のクリスです。私はどう動けばよろしいでしょうか」


 クリスは近くの建物に入りとりあえず近くにいた軍人に声をかけると軍人は1人の男を指差し言う。

 「お前は確か..........俺は一等兵だ、指示は上官から聞いてもらいたい」


 「わかったよ、ありがとう」

 そう礼を述べるとクリスはその男に近づき、同じように聞く。

 「旅団所属のクリスと申します。私はどのように動けばよろしいでしょうか、指示を願います」


 「クリス.....なるほど。相当強いらしいじゃないか、一応名乗るとする、私の名はリキャストだ。では早速だが正面にあるあの建物、あそこにいる敵を倒すために侵入していただこう」

 リキャストが指差したのは古びたショッピングモールのような建物であった。そこに複数のライフルを持った者と備えつけた機関銃兵が2人いた。

 「わかりました」

 


 クリスは颯爽と建物から出ると遮蔽物を伝いながら銃弾に当たらぬように前進し始める。

 この動きはどちらかと言うと注意の分散だ。

 カプティブというだけで相手は警戒をする。そちらを狙えば軍人たちに向かう弾は減る。クリス、というより戦士に近づかれれば全滅すら有り得る以上は無視することはできない。


 「とはいえ......ちょっと難しいかな....」

 クリスの痣は既に消えていた。[解放]は身体能力を大きく上げるものの疲労が溜まりやすく回数の制限なく使えるわけではないのだ。


 既に一度使ったこともあり、手足がズキズキと痛み、身体には怠さが残っている。


 だいぶ距離は縮まった、デパート入り口まであと15mだがそこに遮蔽物は一つもない。下手に突撃すれば蜂の巣にもされかねないため、クリスが横着しているとその時、後方から何かが投擲され、クリスの足元に落ちた。


 「これは.......!?」

 円柱状で真っ黒のそれが破裂すると白い煙が一気に大気に放たれ、辺りを煙が覆った。


 「......感謝するよ、リキャスト.....」


 煙がしばらく舞った後、黒い影が横方向へ飛び出した。それを見た機銃兵の内1人は機関銃でそれを銃撃した。


 だが機銃で撃ったそれはクリスの羽織っていた黒のコートしかなく、気づいた頃にはクリスはすでにかなりの前進をしていた。


 簡単な話、黒色というのは昼は目立つ。だが黒を追うという認識にしてしまえば、むしろ陽動はしやすい。髪の白は煙が誤魔化してくれるからそれで十分だと、クリスはその一瞬で機銃の懐、建物の入り口まで辿りついた。


 ライフルほどの弾数はクリスでも躱せなくはない。ライフル弾を避け続け、そしてついにクリスは建物内に侵入するのであった。







 *****


 「とりあえず君、ロイくん。君にも手伝ってもらいたいんだけど、棚に書いてる6、23、62の薬剤持ってきて」

 

 「ああ、わかったけど.....ところでそのままやってるけど....菌とか大丈夫なのか?」

 血が滲む布が痛ましさを表しており、肉を割いていることが嫌でもわかってしまい、トーカにどうにかならないのかと聞く。

 「まあ手術は無菌が一番だけど今時間ないから勘弁してよ、じゃあ始めて行くね」


 トーカは注射器に[1]と書かれた薬剤を投入するとディアに注射し始める。

 「.....18番、それと注射器2本目持ってきて」

 「あ、はい」

 トーカの指示でロイは次々と薬剤を渡していき、トーカはディアの患部を切開し始め、手術を進めていく。


 「ていうか薬剤の名前とかないけど....どうやって区別して....」

 「覚えてるだけだよ、どうせ薬剤名書いても素人にはわかんないから誰でも指示されたら取れるように番号で書いてるだけ」




 サラッと言われたが見る限りでも迷うほどあり、そもそも薬剤がコレだけあるのも凄いがそれを数字だけで覚えてる時点で尋常ではない。


 

 「……っ、く……っ!」

 手術は淡々と静かに進んでいく。乱れる呼吸音、道具による金属の音と外での銃声が鳴り響く中でも繊細に少しずつ肉を弄りながら銃弾を探す。


 「あった、内臓にはあたってない。本当に運が良かったね」

 トーカがそう一言呟くと、ピンセットが肉の隙間から出てくるとその先には銃弾が挟まっていた。


 そうして傷を縫合するとディアの容態も落ち着き、トーカは一纏めに結んでいた髪ゴムを解く。

 「あとは安静に、静かに生活して、ちゃんと待つ、時間が経ったら治るから、自然治療するまで待って」


 そう言ってトーカは近くの座席に倒れ込むように座るのであった。

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