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第14話 陽動

 ジリ貧という言葉が最も近いのだろう。地面を覆いつくすような蛆虫たちは団員たちに容赦なく襲いかかる。ディアなど団員たちは一箇所に固まり、数人が蛆虫を踏み潰し、残りはエックスを狙うものの....


 「.................ッ撃てません...」


 クリスとエックスの攻防についていけずクリスに当たる可能性がある以上は誰も下手に射撃することができない。


 死にかけの団員には蛆虫が湧き身体を蝕み続ける激痛と不快感は永遠と思えるほど続く。

 目を食べ、内臓を喰らい、皮膚を齧るのだ。


 痛みと恐怖が身体を縛る戦場、その主導権を握るのはたった1人の女だ。だがその女のソレは人一倍狂気じみていた。


 

 剣撃は避けられ続けるだろう。せめて隙を生み出せないか、だがクリスは警戒され続ける。銃での援護も難しいのなら———



 その時、ディアは銃を投げ捨て走り出した。

 ナイフを手に取りエックスの背を突き貫くほどの気合いでエックスの背後からナイフを突き出す。だがエックスはその攻撃をまるで見えてるかのように避けるとナイフを奪い取る。

 「.......ッ!?」

 「はい残念、お姉さんそう言う動きはわかるの」

 エックスはにこりと笑いディアに向かってナイフ向けるがその隙を見てクリスは大剣を振り下ろす。

 「だから無駄だ————」

 

 エックスがナイフで剣戟を防御しようと金属同士がぶつかったその瞬間、不変剣が地に落ちた。


 クリスの拳が飛び、エックスの顔面に打ち込まれるとエックスはよろめきながら後退する。

 「ぐ......が.....ぁ......! な.....ぁあッ!」


 エックスがよろけナイフを手放したその隙をクリスは逃さず更に蹴りを打つが、エックスはその攻撃を瞬発力はないもののギリギリで躱わす。


 「ディアが作った隙にさらに奇襲.....流石に倒せると思ったけど、これでも倒せないとはね.....」

 クリスはふふっと小さく笑い、エックスはそれに対して少し怒気を振り撒きながら叫ぶように言う。

 「何おかしい.....のッ.....一回当たっただけ...」

 「いや、安心したんだよ、どんな魔法があるかもわからない以上攻撃がそもそも効かない可能性があったからね」

 クリスは地面に落ちた不変剣を拾うとエックスに向けて答える。

 「でもさ、君は攻撃があたればダメージを受けるんだろう?それで十分だ」


 「調子に乗って......!」


 クリスは即座にエックスと距離を詰めると剣戟を振るい、エックスはそれを避けた次の瞬間、クリスの左手に持つナイフが飛び出し、刃先が頬を掠る。


 「くッ.......」

 「急な奇襲、一回目には簡単に当たるんだね、というより対応できないんじゃないのかな? 蛆虫を操作しながらの戦いじゃ集中できていないんじゃないのかな?」

 「うるさいうるさいうるさいッ.......!」

 

 エックスは不変剣を弾き上へと投げ飛ばすし、クリスは即座に格闘術を打ち込む。

 揉み合い、もしくは防御されれば酸液の分泌で手を溶かされかねないだろう。だがここで本気で叩く必要などはない。


 格闘技を陽動にフェイントをかける。そしてその本命は上にある。



 攻撃を躱される理由はおそらく動体視力の高さだ。ハエの能力があるとすればおそらくは“複眼”、弾丸すらスローモーションに見えるのだろう。だとすれば逆に遅ければ良い。

 

 空中に放り出した不変剣をクリスは掴むがエックスは避けようと身体を捻るがその瞬間、緑に光る紐がエックスの身体に絡みつく。

 「クリスさん、今です!」

 それはメスマーの機動紐であった。エックスは一瞬のこの行動で自由を失い、自然落下の速度のまま剣を振り下ろし、エックスの肩から胸を切り裂いた。


 「が......ぁ....あ゛———!!」


 エックスはふらりと揺れながらも立とうとするが、体勢が崩れ、エックスは地に堕ちるのだった。






 「倒......したの......か.....?」


 ロイが確認するように聞くとクリスは首を縦に振る。

 「終わった.....終わったんですね.....!」

 皆がその言葉を皮切りに安堵と喜びが静かに沸き起こった。

 

 皆が安堵する中でクリスは魔法によって生成された鉄壁に手をつく。

 「......まずはここを出よう、まだ戦いは終わってはいない筈だよ」

 


 クリスが鉄壁をどうにか破壊しようと試みたその時、叫び声は上がった。

 「危ないッ!!」


 その瞬間、クリスの身体全体に衝撃が走る。目の前に映るのはディアの身体で、クリスを突き飛ばしたようで、だがそれと同時に銃声と血飛沫は舞った。

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