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第13話 白濁の残酷

 10分ほど経っただろうか、外の様子は見えないものの不気味なほど辺りは静かになった。

 「.....もう出ても大丈夫.....でしょうか.....?」


 鴉の羽音ひとつもしない、もう行ってしまったと考えられるものの、どうすれば良いのか思考していると、クリスはロイに疑問を聞く。

 「聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 「なんだよ....?」


 「鉄生成の魔法って離れたりすると数分で消えるはずだよね.....?」

 「ああ、そうだけど....」

 「死んだりしたら魔法ってどうなるの?」

 「もちろん消えるけど...」


 その言葉を聞いていたメスマーはすぐにショットガンを手に取ると声を張り上げる。

 「総員警戒しろ!!」


 鉄壁はまだ残っている、ガルグが生き残っているのなら外から声を掛けるなりできたはず、離れてるわけでも死んでいるわけでもないとしたら、それは———




 その瞬間、廃倉庫天井のハッチが勢いよく開かれた。メスマーは天井に向けて即座にショットガンを撃つが、何か変わるわけでもなくその瞬間、黒く蠢く影は這い出てきた。




 ベシャリと音を立て、落ちてきた物体。それは大量の蛆虫であった。


 「よりによって......なんでコイツが......!?」

 その蛆虫を目にした瞬間に皆が青ざめた、全員が恐れ慄く中でクリスは訳が分からずとも警戒する。

 「わからないけど......どういうことだい.....?」


 「階級は覚えてるだろ、あれは正確にはもう一段階あるんだよ、まだ世界に4人しか存在しない“特級者“だよ」

 「もしかして....」

 「ああ、その中でもコイツは.....たぶん一番やばいやつだと思う....ぜ」


 

 蛆虫は更に降り注ぎ続け、一箇所に雪のように積もったそれに向かってメスマーは散弾を放つ。


 「だめだ........」

 当たった蛆虫は死んだだろうがあまりにも数が多すぎる、前提として銃弾が貴重な上に軍と違って大量に保有しているわけでもない、だがそれでもメスマーは次弾を装填しようとしていたその瞬間、蛆虫の中からそれは現れた。


 「へー? 数は減ってないんだね、じゃあ問題でーす。今から何人減るでしょーぉか?」


 それは黒髪ミディアムの10代後半くらいの女であった。少女はニコリと微笑みこちらに問い掛けるようにそう言うが、メスマーは即座に叫ぶ。


 「今すぐその子を殺して.....ッ!!」


 その言葉で皆が一斉に銃を構えるとその少女に向かって発砲するが、少女はひらりと銃弾を避けると、団員の1人に一瞬で距離を取ると顔面を鷲掴みにする。


 「な.......! ———ぎやゃあッぁぁああああぁぁあッあ!!!」

 煙と共に油を熱した時のような音が響きわたる、女が手を離した時には団員の顔には手形をした火傷傷のようなものができていた。


 「これは.....酸....?」

 クリスがそう呟いた時、女は笑いながら答える。

 「正解正解って感じだけどアタシのこと知らないなんて珍しいのね〜? 私の名はエックス、巷じゃ[蝿の王(ベルゼブブ)]って有名なんだよ?」


 気の抜けたような楽観的な声色とは裏腹に銃声と悲鳴が鳴り響く。掴まれた者はその部分が焼かれ、蛆虫が傷から侵入し体内なら食い破る。激痛と気持ち悪さで戦意を削ぎに来る中でもディアやロイの射撃は当たらない。

 だがその時、クリスは[解放]し、頬に痣が現れると同時にエックスに斬りかかった。


 「くッ...........!」

 クリスの一撃は大量の蛆虫が壁となり、蛆虫の肉に包まれて止まり、衝撃を殺していた。数十匹を殺したがエックスには届かず、エックスはクリスの腕を掴もうとし、クリスはすぐに二撃目を薙ごうと振りかぶるがエックスは顔面の焼けた団員を盾にし、クリスの動きが止まる。


 「味方を殺せないタイプかな、優しいんだね」

 エックスは笑いながらその団員をクリスに向かって蹴り飛ばすとクリスは受け止めるがその時に指に痛みが走る。

 指を見ると蛆虫が指を食い破ろうと蠢いておりクリスは払い除ける。

 「なぜこんな残虐なことを.....」

 あまりにも惨いそれを見て、エックスに疑問をぶつける。だがしかし帰ってきたその言葉はどこか嘘くさい声で笑っていた。

 「戦いでいちいち気にしてられないでしょ?」

 「.....君とは分かり合えないよ」


 クリスは団員を横にすると即座に斬撃をエックスに向かって放つ、だがその斬撃をエックスは余裕そうに全てを完全に避け続ける。


 「そんな大剣をよく軽々と持てるねぇ、すごいすごい! でもそんな闇雲じゃ当たらないよ〜?」

 エックスの軽口に乗る必要はないと剣を振り続けるが当たらず、足元からはゆっくりと蛆虫が足を伝ってのぼり始めていた。

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