魂の叫び
大学の時の話
「そろそろ帰らなくていいの?」
そう問いかけてくるのは大学で出逢った俺の師匠。彼女は俺の祖父さんの知り合いでもあり、俺を師事すると勝手に言い出した人でもある。
「いやぁ、帰りたいのは山々なんですが、今日は帰れないんですよ」
「うん? だってキミ一人暮らしだよね? お爺ちゃんからも言われてるけど、自堕落はダメだよ?」
「ああ、いや、自堕落じゃなくてですね。最近隣が引っ越したんですけど、騒がしくて」
毎週金曜日、日付が変わろうかという時間に必ず隣から音が聞こえてくるようになったのは隣の住人が引っ越してから一週間程度経ってからだっただろうか。
「引っ越してきたの?」
「逆です。出て行ったんです。霊障のせいで」
俺の隣の部屋は出入りが激しい。半年居ればいい方じゃなかろうか。
原因はさっきも言った通り霊障だ。何故それが霊障だとわかるかというと。
「日付変わるくらいになると聞こえるんですよ」
「お経とか?」
「いや、ソウルフルなシャウトです」
そう。死して未だ叫んでいるのだ。
「そう、本当の意味でのソウルフルなシャウトです。メタルとかあんな感じの曲で出てきそうな。思わずヘドバンしそうになりますよ」
そう告げると彼女は途端に胡散臭いものを見るような目でもって俺を見る。言いたいことはわかるんだ。でも、そうだな。実際聞いてみてもらった方が早いんじゃなかろうか?
「それも面白そうね。でも⋯⋯キミの部屋かぁ」
「そうですね。俺の部屋ですよ」
「なんていうかさぁ、血は争えないのよね」
「どーゆう意味ですかねぇ」
「だって、お爺ちゃんと一緒でキミも蒐集してるでしょ?」
そりゃそうだ。祖父さんに影響された俺の部屋には古いものがいくつかある。それも曰く付きのものが。
「ま、原因はキミだから仕方がないか」
聞き捨てならないことを言われた気がしたが、結局その晩彼女は俺の部屋で件のシャウトを聞いてブチギレていた。
結果は即霊障は収まったからよしとしよう。
ああ、なんでブチギレたかって?
それ彼女が生粋のメタラーだから、シャウトの仕方が気に入らなかったという一点だけだ。