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栄誉

 ルーシェが涙をこらえながらルリと共に走り去った後。


「ふぅ、ホント嫌な役目を選んじゃったなぁ……ねぇ、ロキ」

身体を貫いていた植物は消える。地面に倒れたロキに近づいたロートスは口元に耳を近づけた。


「はぁ!? 嘘でしょ。寝てるだけでまだ生きてんだけど。生命力すご……起きろ~いや今起きて悪竜になっても困るな」


(う~ん、アウラを呼ぶしかないかな……でもなぁ)


始まりは小さな口論だった。


「あ」

「最後の1つのお菓子……僕が年上だから僕のね」

「いやいやいや、ここはオレのだろ。取ろうとすんじゃねぇよ」

「あ?」


 最終的にアヴニールは島々から成る国になり、2人は大目玉をくらった。

そんな経緯があり、ロートスはアウラを出禁、アウラはロートスをエルフィン王国出禁にした。


 当時、アウラは誰にも心を許しておらず荒んでいた。家族のように気に入っていた少女を亡くして日が経っておらず、特に荒んでいた時期ともいえる。

ロートスはその経緯を知ってはいたが自分に逆らうのは気にくわなかった。


(気遣い……足りてなかったかなぁ。いや周りに当たるアウラもアウラでしょ……)


「魔力枯渇するだろうけど時差なしで呼ぶかぁ」

「う……」

「まっず、意識が戻ってきた。僕1人で耐えれるかなぁ……ん?」


 距離を取りかけたが再びロキに近づき傷口に触れる。


「あれ? 体内の毒減ってない? まさか」

「はっ!? 俺生きてるのか!?」

「ほんと驚いたんだけど。植物に貫かれて大量出血したことで、血に含まれていた毒が植物に吸われてたんだ。まだ毒自体残ってるけど、自然と体内で解毒されるね。僕の魔法優秀すぎる。……ほら、早く行ってきなよ。ここに集まってきてる魔獣は片付けてあげるから」


 起き上がりそのまま走り出す。


「何から何まですまないな」


「別に。これがルーシェのためになるならお安いご用。はぁ。来なよ。僕はキミたちに慈悲なんてものを持ち合わせていないからさ」


 地面から大量の植物が生え、蔦が魔獣を縛る。


「手っ取り早く、ね」


 串刺し。その間もロートスは1歩も動かなかった。


 同時刻

「はぁ、はぁ……リンドウ!」

「こっちは片付きました。早くルーシェ様と合流したいですが、一旦モールスさんのところに行きましょう」

「そうね……だけどルーシェ様の様子を見るにロキ様は……いえ、行きましょう」


 魔獣を掃討し、モールスたちと合流したラナたちは眼前の光景に驚愕した。


「嘘。本当にモールス様が」

「オロチの首が残り2本に……つまり6本を1人で」


 オロチの6本の首は焼けて無くなっていた。息を切らしながらモールスは残り2本に攻撃をしかける。


オロチは尾を振り回し、以前のフェンリルのように魔力を込めた光線を放つ。


「ハッハッハァ! やはり最強なのはこの魔獣の王フェンリルなのだ!」

「お前さん煽るな! なんかさっきから攻撃がひどくなってるのお前さんのせいだろ!」


 その軽口も攻撃を避けて反撃しながらだった。


「モールス様は何者なんでしょう」

「……どうやら首が残り2本になって焦ってるようだぞ。昔の儂を思い出す」


 更に攻撃がヒートアップしたことで苦戦を強いられるが、ラナとリンドウの援護でなんとか反撃した。


「チッ……増援か。儂の手下であれば頼もしかったがな」


(今の俺は教師だ。いくら聖女と騎士であろうと俺が守らなければならない。こいつらもルーシェも本来は学校に通い、自分のために生きられたはずなんだ)


「教師? お前さんが?」

「あぁ。本当は先生になりたかったんだ。結局親の借金のせいで売り飛ばされて傭兵になったけどな……だからこそ今もなりたいって思う。俺みたいな子どもを生み出さないためにも」


(そう言っていた相棒は俺を庇って死んだ。せめて俺だけはあいつの願いを覚えていないと)


 フェンリルの正体に気づいたのか。それとも一番弱いと思ったのか。突然、オロチはフェンリルを狙った。モールスがフェンリルを抱える。尾がかすり、モールスの片目に傷が入った。


「モールス!? 何故だ。目を犠牲にしてまで儂を助けるメリットなんて!」

「ある! お前さんがいるとなぁ!」


初めて出会ったときを思い出す。


「あ~ひどい目にあった。魔獣が暴走して俺たち皆意識失ってたってねぇ……ん?」


何故か突き出す気も起きず、敵との生活が始まった。


「儂は自分のしたことに後悔はない! いずれ復活して」「はいはい」

「聞けよ!」

「はぁ、お前さんな、後悔はなくとも罪悪感は?」

「ない!」

「清々しいが他のやつらの前でいうなよ……お前さんが自分の壊したものを理解するまではここに置いておくべきか」


……敵との生活。それは


「お前さんがいるとなぁ! お姉さんたちにモテモテなんだよ!」

「はぁ!? 儂をそんな目で見ておったのか!」


(それでいい。良くないことだが、やっぱりお前さんはそのままでいろ)


 オロチの追撃。片目が見えなくなったモールスは感覚が鈍り避けきれない。

が、その一撃は防がれた。


「フリ公、その姿」

「ハッハッハ! 驚いたか! そなたの思惑通りにはさせぬ! これでモテモテ作戦はダメになったなモールス!」


「フェンリルが」「以前私たちと敵対していた姿に戻っています!」


 魔獣の王の姿に戻り、オロチに光線を発射する。

首は残り1本となった。


「魔力切れだ! 聖女に騎士! 最後の栄誉はやる。感謝しろ!」

「……かつての仇敵ではありますが今だけは貴殿に敬意を示そう。リンドウ、参る」


 一閃。剣が最後の首を斬る。


「フリ公! 消えかけてないか!?」

「言ったであろう。これでモテモテ作戦はダメになると。さっきのが儂の最後の魔力だ。王国で負けてから魔獣が持つ魔力の自己回復能力は無くなっていたからな」


それでも、己の復活を、同胞の世界を。


「王が倒れたら国は終わるからな……でもまぁいい。たまには人間の傍にいるものだな」

「フェンリル。お前さんのこと嫌いじゃなかったぜ」


 魔獣は魔力で身体が構成される。その魔力を使い果たした今、光となってフェンリルは消えていく。


「以前、罪悪感について訊いてきたな。今でも後悔はないし人間共は憎い。だが、セツナに儂が謝罪していたと伝えてくれ」

「必ず伝える」

「そなたは儂の家臣だからな。必ず命を果たすのだぞ」


 光は完全に消えた。


「さぁ、行くか。王の命は絶対だ。こんなとこで休んでいられない」


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