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学生といえばテストですよね

 私がノーブルやクレアと友達になってから1ヶ月が過ぎた。


 今日も今日とていつものメンバーと中庭のベンチで雑談をしている。


 クレアはまだ少し緊張しながらも、ノーブル王子と楽しそうに話している。

ノーブルも楽しそうに笑っているので、これからはこの2人が幸せになれるように頑張る所存だ。


 このまま推したちを見守る壁になりたいが、そういうわけにもいかない。

そろそろお菓子を食べるロキを止めなければ。

 

「ロキ? それ私の鞄に入っていたお菓子よね」


 ロキはやっと食べる手を止めた。私のお菓子は8割無くなっていた。


「俺にあげるって言ってたから」

「それは今日の昼食の話! おやつは別腹でありカウントされないわ!」


 ノーブル王子とクレアが温かい目でこちらを見てくる。

それによって上品な令嬢ではなく、素の私でいたことに気がついた。


「え、あ、これは…」

「別にこいつらなら取り繕う必要はないんじゃないか?」


「自然体で話してくださると距離が近づいた気がして嬉しいです!」

「僕たちにもロキと同じように接して欲しい」


 ルーシェとして生きてきて初めて素の状態で話せる相手が出来た。それも3人。

信頼できる人間、そして友人が増えたことは嬉しいものだ。


「そういえば、ルーシェ様とロキ様はとても仲が良いのですね。」

「俺が見てないと危なっかしいからな」

「私の家と逆方向に歩き出した人に言われたくないわ」


 ダメだ。何を言ってもノーブルとクレアは微笑んで私たちを見る。

これは……近所のワンちゃんたちがじゃれ合っているのを眺める人と同じ笑顔だ。


 最初は死なないことに必死で、絶対に関わりたくないと思っていたノーブル、そしてクレアと共に笑い合っているのが少し不思議だ。

もしかしたら、未来を変えられているのではないだろうか?


 この調子なら平穏で楽しい学生生活を送れそうだ……

なんてこの時の私は思っていたのです。


「ところで、4ヶ月後にある精霊の儀式のことだが」


 王子の言ったことが分からない。

精霊はもうロキだけでお腹いっぱいだ。


「儀式について僕は詳しく知らない。3人は何か知っているか?」


 あ、王子であるノーブルも詳しくは知らないのね。よかった。


 クレアも分からないという顔をしている。

 まぁ、ここには専門家どころか本物の精霊がいるのだ。説明してもらおうではないか。


「ロキは知っている……よね?」

「あぁ、儀式の日には自分を祝福した精霊に感謝の祈りを捧げるんだ。炎属性ならサラマンドラ、光属性ならパナケアだな」


 すべて初耳だ。もうどれが裏設定なのか分からない。

これはもう設定の外側の話という可能性もある。


「エルフィン王国編」では精霊とか儀式とかの描写は全くなかった。

 基本的には学校内での日常や王子を巡る三角関係がメインで、魔法が出てくるのはルーシェが嫌がらせをするときや、ケガをした登場人物の手当てをする時だけだ。


 もしかしたら、私がまだ思い出せていない他のシリーズでは語られているのかもしれないけど。思い出せないのは本当に痛手だ。


「知り合いの先輩から泊まりがけの行事があると聞いたことがあります。それって……」

「この儀式だ。祈りを捧げる場所はエルフィン王国北の街と決まっているから、1泊2日で行く必要がある。だがその前にも面倒なことがあるだろ」


 え、なになに。定期の筆記テストはまだだよね? それだけはちゃんと確認している。


「あぁ、来週だな」

「そうですね、頑張らないとですね」

「………」


 3人がジトーっとした目でこちらを見てくる。とりあえず笑顔でいよう。


「…ははは」

「おーまーえー!」


 ロキがすごい勢いで私の肩をブンブン揺らす。

太陽光で動くおもちゃのように揺れる私を見て、ノーブルとクレアは笑いを堪えていた。もういっそのこと声を出して笑ってくれ……


「来週は魔法実技テストだぞ!!」

「そんなものがあるのね……私、一回も魔法を使ったことがないから何も分からないわ」


「魔法を使ったことがないのですか!?」


 私以外全員が「あり得ない」と叫ぶ。


 ノーブルもクレアも、家で最低限の魔法の指導を受けたらしい。

私はというと魔法を使った記憶がない。指導も受けていない。


 3人が「ヤバイぞ」「どうしましょう」「僕たちで……」と話している。


私、何かやっちゃいましたか?

…いや逆か。何もしていないのだ。


「ルーシェ様、明日から放課後は学園裏の森で特訓をしましょう」


私は思い出した。前世の学生時代のテスト前、友人に

「今回、点数を取れなければあなたは留年します!」

と言われながら勉強を教えてもらったことを。 


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