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怪談話の主役

「この建物から出られない?」

「説明希望」


「は、はい! そうなりますよね!」


 セツナはあわあわとしている。

 

 やはりおかしい。セツナがここにいることもそうだが、彼女の態度が気になってしまう。


 ミナヅキ編の悪役であるセツナは、それはもうお手本のような悪役だった。


 研究所で働いていた彼女は、表では真面目に魔獣対策について研究していたが、裏では逆に魔獣を強化する研究をしていたのだ。


 表裏が激しく、途中までは主人公たちの味方をしていたが重要な場面で裏切り、悪役となる。


 聖女である主人公のみが魔獣を倒すのではなく、鎮めることができる。

そのため、強化魔獣を生み出し続ける研究者VS鎮めることができる聖女と彼女を守る騎士の戦いが繰り広げられるのだ。


 裏切ってからは様々な地域に強化魔獣を放ち、ミナヅキは甚大な被害を被ることになる。


 もちろん最期は残酷だ。主人公が彼女を捕らえる直前、自らが生み出した強化魔獣に食べられてしまう。

捕まっていたら死ななかったかもしれない。

彼女は歴代作品の中でも一番"惜しかった"と言われている。


 そんなセツナだが、作中での裏切りシーンは本当に有名である。今までの友好的なお姉さんから豹変して悪の女王といった性格になるのだ。


 だがその豹変した姿が好きになる人も多かったな。


 今のセツナの性格は、裏切り前後のどちらにも該当しない。それに、ルリが彼女を半ば無理のある方法でここに誘導したのも気になる。


「なぜかこの建物を出る瞬間に意識がなくなって、気がついたらこの部屋に戻っているのを何回も繰り返しているんです! 持っていた食べ物を少しずつ食べたり、職員室から拝借はしているのですが、そろそろ気づかれそうでして……」

「あなたの事情は理解したわ。でも、1つだけ分からないことがあるの」


 クレアが見た夢について話した。が、セツナは「覚えがない」と再び半泣きになった。

彼女の食糧に余裕がないという話とクレアがお茶を飲んだという話には矛盾が発生してしまう。


 食糧が尽きそうなか弱い人を演じている可能性は否めないが、ひとまずは信じてみよう。


「クレア 会った?」

「いえ。儂がこの部屋に閉じ込められてから1ヶ月が経とうとしますが、誰もこの部屋に訪れてはいません」

「意外ね。生徒たちの間ではこの教室の怪談話が人気なのだけど」


 ベルギアはずっと持ち歩いていたバッグからお菓子を取り出した。そしてセツナに差し出す。


「こ、これを儂に……!?」

「……」

「ありがとうございます!」


 セツナは嬉しそうに頬張っている。

 時計を見るとちょうど日付が変わろうとしていた。


「お願いがあるのですが」

「承認」

「出口まで一緒に行ってはいただけないでしょうか?」


 セツナは何故この学園から出られないのか。

私たちが傍にいることで原因が判明するかもしれないし、何か変化が起きるかもしれない。


 セツナについては気になることも多いが、今の彼女は悪い人には見えない。


「行ってみよう」

「出発」

「本当にありがとうございます!」


 3人で校舎の玄関前に立つ。

 この扉を開いて1歩踏み出すと外に出られる。


「行きましょう! せーのっ」


 扉を開いて私たちは同時に一歩踏み出した。




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