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出会いの春

「ルーシェ様! お久しぶりですね!」

「そうね…私が旅行に行っていたから春休み中も会えなかったものね」


 始業式とはどこの世界でも教師からの長い長い話を聞く必要があるらしい。

ようやくその試練を乗り越えた私たちは、いつもの中庭で春休みの思い出について話していた。


「そういえばルーシェはどこへ旅行していたんだ?」

「えーと、ミナヅキよ」


 事前にアウラさんからミナヅキについて教えてもらっておいて正解だった。様々な思い出という名の幻想を話すことができる。


 私は家族でミナヅキに旅行へ行った体になっている。

逆に家族には友人とミナヅキに行った体になっている。ボロを出さぬよう気をつけねば。


「ミナヅキは観光地としても人気ですよね! あの独特な文化も素敵です」

「そうだな」


 ノーブルはというと姉の無事を確認できたうえに、訪問の約束まで出来たからか、いつも通りに戻っていた。むしろ元気がいい。


「ノーブルも春休み前より元気になったようでよかったわ」

「実は春休み中、クレアが城に来て僕を励ましてくれてな……」


 おや? クレアの顔が少し赤い。

どこまで話したのかは分からないけれど、元気のないノーブルを励ましていたのは事実のようだ。


「ところで……ロキ、君は春休み前から休んでいたがどこに行っていたんだい?」

「ちょっと実家で色々とあった」


 隣国のお城の中に捕らえられていました。なんてことは口が裂けてもいえない。それについては私も同じだ。


「大変だったんだな……」

「あぁ、本当にな」


 ロキの言葉が重い。家の事情ということでノーブルもクレアも深くは訊かなかったようだ。


 始業式の翌日の放課後、クレアが1人の少女と会話している姿を見た。

その少女は目の下に隈があり、肌は青白く、そしてとても細い。それに加えてずっと無表情だ。


 確か彼女は……小説の中では主人公クレアの友人のベルギアだ。小説ではクレアの最初の友人だったな。

彼女は淡々とした態度ではあるものの思いやりがあり、最後までクレアの友人だった。


 しかし、作中では彼女の詳しい情報は語られることはなかった。


「あ! ルーシェ様!」

「こんにちはクレア。そちらの方は……」

「こんにちは 私 ベルギア よろしく」


 そうそう。ベルギアは独特な話し方をするのだ。原因は育った環境だとか。

 そして内容も独特なものが多いため周囲から孤立していたのだ。

そこで元庶民だということで友人をつくることに躊躇いを持っていたクレアと出会い、友人となる。


「私はルーシェです。よろしくお願いしますベルギアさん」

「敬語不要 敬称不要 同様許可求む」

「分かった。同様についてはもちろんよ」

「さすがはルーシェ様です!」


 クレアは最初ベルギアとの会話に苦戦したらしい。私は小説で理解できる範囲なら大丈夫だ。


「ルーシェ 優しい 感謝」


 ベルギアは無表情のままだが声音が少し柔らかくなった。なぜか猫ちゃんを彷彿とさせる。


「帰るぞ」とロキが私の元へ来た。


「ん?」

「……」


 ベルギアがほんの少しだけ目を見開く。ほんの少しだ。じっくり見ないと気づくことができないだろう。


「ロキ 存在 何故」

「待て、何故その言葉をチョイスした。俺の存在ごと否定されている気分だ」

「謝罪 帰路 共有」


 クレアは用事があるとかで3人で帰ることになった。

私とベルギアとは初対面だから気まずくなりそうだったが、どうやらロキは顔見知りのようだ。

そのはずなのに何故かロキは先ほどから気まずそうにしている。


 つまり……


「ベルギア」

「問い 解答」

「ロキと知り合いのようね」

「正解 私 精霊」


 ロキはというと

「お前なんでいるんだよ」

と不機嫌そうに訊いている。

 ベルギアは「学習」と答えた。人間についてだろうか。


「ルーシェ クロノス 祝福?」

「そう! 私がそのルーシェよ!」

「胸を張って言うな」


 そういえばベルギアは何を司っているのだろう。残るところは光、樹、闇だ。

それについては聞く前にロキが説明してくれた。


「ベルギアの本名はパナケアだ。つまり光の精霊ってことだな」

「そうなの!?」


 ベルギア改めパナケアはこくりと頷いた。


 精霊だと知った時点で少し驚いたが、まさか光の精霊だったとは。ベルギアは祝福した人間たちと同じ学舎に通っているということだ。


「詳細説明 希望 家 招待 許可求む」

「家に招いてくれるの? 今日は半日授業だったし時間は大丈夫よ。それに友達の家に行くのってワクワクするわ!」


 ベルギアは何度も頷いた。相変わらず無表情だが動きで喜びを表現しているように見える。


「トモダチ 招待 歓喜 ロキ 自由」

「俺についてはどっちでもいいってことか!? 無視して進むな!」


 何故かベルギアはロキを置いて早足で進みかけたが、突然、一時停止ボタンを押されたかのように歩いていた足をピタリと止める。


「同居人 ロキ 初対面 不安 安全確保困難 了承求む」

「え、同居人とロキが会ったら危ないの?」

「肯定 ルーシェ 大丈夫 ロキ 不明」


 ベルギアはなんとか言葉を見つけて、自分の考えを紡いでいく。

どうやら説明ができなくて混乱して、ロキを置いていきかけたようだ。


「そうか。まぁ誰が同居人かは読めてきたから大丈夫だ。着いていく」


 ロキと会うとどうなるか分からない同居人。不安はあるけど、とりあえず会うしかないようだ。

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