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続くよよーん

急に実感した。

もうお別れなんだ、と。

それはある日ある時ではなく(点では無く)。

既に始まっていてその延長線上にあるものだった。


哀しいことでは無い。喜ばしいことだ。

僕が家を出て一人暮らしを始めた後、

しばらく父は僕の幼名を呼んでいたという。

その気持ちを今、今日初めて実感として理解した。

湧いて出てきた。

泉は湧く前から染みていたのだ。

この地点は既に残滓だ。


君の土壌に何かを染み込ませて、それが多少なりとも君の養分となっていたら、と前向きに思える。

その地点になったら、空港の見送りのように慌ただしく、

言葉を正面から紡ぐこともできないだろうから。


前もって伝えておく。

おめでとう。

そしてありがとう。

お父さんはとても楽しかったよ。


────


どこまで憶えてるか分からないけど、旅行のことについて。

時差で眠い中引きまわして不機嫌になった君を怒ったことは思い出すと(記録を見ると)ズキズキする。

あの旅行は楽しい思い出だったのだろうか?怒られたことしか憶えてないのだろうか?


「この旅行のことを憶えててくれると良いけれど…」

と言った僕に、同行してた年配の方が

「大丈夫。きっと憶えてるよ」

と諭してくれたのは、大分励みになっている。


────


もう少し一緒に遊びたかった、伝えられることがあると思っていたけれど、既に君は助走中だった。

そのことにやっと気付いた。


ここでぐっと手元に引き寄せる真似はしてはいけない。

このぐっと引き寄せたくなる気持ちがずっとあることに気づいた。なので(今の君を直視せず)幼少の君を追いかけて応えてくれる呼びかけをする。

これは失礼なことだね。


見送ることができることに喜びを感じなければならない。

噛み締めて反芻してそして呑み込むだけの思い出を君がくれたから。


尚、これは遺書では無い。

死別は、まだまだ先の話だと思ってくれていい。

分からないけど、まだ健康で居るので。


────まだ続くよよーん。


君は君自身があまり思いだしたく無いであろう引越した直後のあの時期、言葉にも出せずに居たが、とても傷付いていた。

外的に症状として表れていたんだ。とても切ない気持ちになった。後悔した。

一方的な僕たち親の都合に巻き込んでしまったことに。


取り繕うことなく乱暴な言葉を使うならば…

既に躯体にヒビが入っていた関係をぶち壊したのはお父さんだ。巻き込んで申し訳ない。

一生の傷として残らないよう、お母さんも大分頑張ってくれたお陰でその症状は表に出なくなった。

そして遅れて弟が塞ぎ込んだ。


いま立ち直る最中の弟にかかりきりで君の話しを聞けていない。

君に言葉を届け足りない。と自覚している。

けれど。

けれど、だ。

助走中の君は振り返る必要は無いし、振り返る気が無くていい。

そうであるべきだ。


────


以上を異世界風に言うならば

「ここは任せて先に行け!」



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