チュケケンの村
少しこの世界のことが分かってきた──。
目覚めた部屋は、アパートのような二階建ての集合住宅。
俺が目覚めるまでの間にヤツが借りたようだ。
そこまで違和感が無い部屋。ツルッとした床と壁、天井。
少し寒い。
一応居間と個室が2つ。トイレは無い。建物共用のトイレ部屋があり椅子の形にはなっているが、水洗ではないようで少し匂う。用を足したくなくなるほどの不潔感は無い。
ちなみに風呂も無いようだ。洗濯機も無い。
照明器具はランプに光る石が入っているものを使うようた。
居間には扉が上下2つついた冷蔵庫。上の段には氷のような石が入っている。下の段には包装されていない食材らしきものがそのまま入っている。肉と野菜だと思う。
ドアが面白い。見慣れた形ではあるがドアノブが無い。通ろうとするとそのまま透けて通れる。壁は通れない。
あと窓が丸い。
外を出ると太陽が2つ。空は薄紫だがいわゆるこれが快晴のようだ。夜は薄っすら暗くなるが完全な闇にはならない。
季節は分からないが極端な寒さや暑さではない。
電柱や電線類は無い。多分電気という概念が無い。
二階以上の高さから眺めることができないので、街並みが続いた先はよく見えない。彼方には高い山脈が薄っすらある。この街は平地のようだ。
街の人はいわゆる様々な人種がいる様だ。太った人はほぼいない。体格は見慣れた大きさで小柄から大柄まで認識の許容範囲だ。肌色は濃いのから薄いのまで。瞳の色も多彩。鼻は高かったり平べったかったり。耳は尖っている人も見た。二足歩行。自転車は見かけないが馬車は見たので車輪はある様だ。性別は男女のみの模様。子供も大人もいる。
そして皆表情が一様に暗く、笑顔がまばらだ───。
ヤツが夕食時言った。
「まるでチュケケンの村だな」
は?なんだそれ?
<続く>