表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、悪役令嬢  作者: 陽炎氷柱
フラグが見える悪役令嬢の話
3/5

転生したら頭上にフラグが見えるんだが。上

 フラグ。

 旗という意味のこの単語は、一部のコミュニティーにおいては伏線と似たような使い方をするようになった。いわゆる「お決まりのパターン」というやつである。例えば、映画の終盤で主役とその親友がピンチに陥ったとする。そんな中、親友がこう言ったとしよう。



「ここは俺に任せていけ!あとで必ず追いつくから」



 おわかりいただけただろうか。この瞬間、親友に死亡フラグが立ったのである。そして大体の場合、この親友は戻ってこない。





 突然だが、私にはこういうフラグが見える。

 そしてさらに言えば、私は転生者である。


 トラックにはねられて、気づいたら赤ん坊だった。混乱する私が目にしたのは、嬉しそうに微笑む西洋女性と、その頭上に浮かんでいる死亡フラグだった。




 これは悪い夢だと思って、盛大に泣いた。




 。。。



 頭に死亡フラグを生やした女性は、私の今世の母親だった。

 しかもその数は年々増えており、五年がたった今では五本もの死亡フラグが乱立している。我が母ながら恨み買いすぎでは?と戦慄したのだが、その真相を知ったのは私が六歳の年だった。


 私が転生したのはあまり化学が進んでいない世界で、ただの風邪でも人が死ぬことがある。母はその年の流行り病にかかり、公爵家のお抱え医者でも回復することはなかった。病床で日に日に弱っていく母が本当にそのまま亡くなってしまいそうなのに、医学が分からない私には何もできない。

 母の頭上に立つ六本の死亡フラグが恨めしくて、私が折れればいいのにという気持ちで眠る母の頭を撫でた。


 パキッ


 小気味よい音が手の平から聞こえた。恐る恐る自分の手を見てみると、そこには真っ二つになった死亡フラグがあった。


 ハッと母の頭を見る。

 そこにあったはずの毒々しい色をしていた死亡フラグは、五つ。心なしか母の顔色が良くなった気がする。希望が見えた気がして、もう一度母の頭に手を伸ばした。


 パキッ、パキパキパキパキッ


 音が五回聞こえたところで手をどけると、そこには穏やかな顔で眠る母の姿があった。



 生まれた時からずっと母の頭上で群生していた死亡フラグは、もう一つもなかった。




 。。。


 あれから検証を続け、フラグの特徴も大分わかってきた。


 季節は冬から春になり、王都を騒がせていた流行り病も落ち着いてきたころ、我が一家は王宮に招かれた。母は現王妃と仲が良く、王妃が元気になった母に会いたかったらしい。



「アリア!貴女が回復して本当に良かったわ。危険な状態にあるって聞いたとき、わたくしがどんなに心配したのか分かっているの?」

「私が持ち直したのはリリアーナのおかげよ」

「それはどういうことかしら?」



 それを皮切りに、二人は盛り上がってしまった。父の方も国王と何か話を始めてしまい、とても割込めそうにない。

 私が所在無さげにしていたからだろうか。今までずっと無言で私に圧をかけていた王子が、とてもいい笑顔で話しかけてきた。



「はじめまして、リリアーナ嬢。ご存知でしょうが、俺の名前はレオンハルト・トラクテンバーグです」



 癖で彼の頭上を見た私は、そのあまりものフラグの多さについまじまじと見てしまった。

 過労フラグ、重圧フラグ、数え切れない程の恋愛フラグがレオンハルトの蜂蜜色の髪の上に立っており、その中心には黒いオーラを放つ責務と書かれたフラグが鎮座している。一体神様はこの少年になんの恨みがあるというのか。


 おざなりな返事しか返さないくせに、じっと見つめてくる私に困ったのか。レオンハルトはぽんっと不快と困惑が書かれたフラグを立たせた。



「先ほどから俺を見ているようですが、何かありました?」



 私なんでもありませんと答えようとして、やめた。

 物々しいフラグをつけている目の前の少年が可哀想だったからだ。今この瞬間も恋愛フラグや過労フラグが増えているのだから。



「いえ、殿下が少々疲れているように見えまして。私の気のせいであればよいのですが、無理をなさっていませんか?」



 ついでに頭を撫でるふりをして、やばそうなフラグを少し折ってやる。因縁深そうなフラグはすぐに折れないのだ。



「______。」





 場がしらけた。

 現在の光景を認識して、勢いよく手を引っ込める。


 フラグの多さについ声をかけてしまったが、2つも年下の小娘からそんなこと言われても説得力がないだろう。しかも王子の頭をいきなり撫でるなど、もしかしたらとんでもない不敬では……?


 誓ってやましい気持ちは1ミリもないが、傍から見ればアウトではないか。


 ぽんっ


 軽快なこの音は、この数年ですっかり聞き慣れたフラグが立つ音だ。自分の頭上は見えないし、鏡で確認しようにもフラグは肉眼でしか見えない。つまり自分のフラグは確認できないし、見えないと折れないのだが______。













 これ、どう考えても死亡フラグが立ったのでは?



少しでも面白いと感じていただけたら、評価やブクマをお願いしますm(_ _)m

励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ