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『生罪の悪魔』 ─ A Devil of life sin ─  作者: リクトシヨン
二章:新しい人生
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四話 『蘇』


7月7日──、


 朝五時、久しぶりの早起きかもしれなかった。けれど──、

「何が起こってるんだ……」

『何も我と契約しただけだが?』

「だからそれでどうなったって話なんだよ……」

──達成感なんて、一瞬で消し飛ぶぐらいに、朝から僕の頭は混乱していた。

 僕は死んだ筈なんだ。屋上から落ちて、ぐちゃぐちゃになって、無惨に死んだ筈なんだ。

 けど、生きていた。そして僕にだけ聞こえる『悪魔の声』と話している。

「僕は……その……死んだんだよな?」

『あぁ、貴様は一度死んださ』

「なんで、どうやって、僕は生き返ったんだ? バラム、お前は俺に、何をしたんだ?」

 僕はその悪魔に聞いた。

『我が何をしたと? それは違う……〈死にたくない〉と願ったのは、お前だろう? レイ?』

「……僕の願い?」

 僕は首を傾げた。

『あぁそうだとも。レイ、貴様は我と契約する時〈消えたくない〉と願っただろう?』

「……願ったというか、思ったというか……」

『契約者の〈願い〉を悪魔がその力を以てして、叶えられる限り叶えるのが、我々悪魔側の契約条件だ。もちろんその分、罪という代償は貰うがな』

「だとしても、どうやって体を治して、僕の体を運んだんだ?」

『それは我が〈力〉を使ったからだ』

「力?」

 僕が首をさらに深く傾げと、バラムはそれに答えた。

『悪魔とその契約者のみが使える〈悪魔の力〉だ。貴様の体が治ったのは、我がその悪魔の力の一つを我が使ったからだ』

「治癒って事か?」

『簡単に言えばそうだ』

 つまりは、悪魔の力に僕は体を治癒され、あの手遅れの状態からも生き返る事が出来たと言う訳だ。

「じゃあ、僕の体も?」

『ああ、それに関しては、少しだけ体を借りた』

「……ん? 借りた?」

『心臓を代償にしているのもあって有難いことに比較的動きやすかったぞ』

「……えっと? つまり? もしかして、僕の身体を乗っ取ったのか?」

『そうだ』

 これはまずいのかも知れない。悪魔に体何て乗っ取られなんかしたら、何をされるか——。

『あぁ、それなら安心しろ、貴様が罪を犯さねば、我は罪を味わ合う事も、得る事も出来ない』

「そういう問題じゃないんだよ……」

『ただ……しかし、部屋が分からなかったのでな、様子を見に来た人間に聞いたぞ』

「……あ」

 終わった。なんて聞いたかは知らないがどちらにせよ終わった。

「なんて聞いたんだ?」

『ん?〈我の部屋は何処にあるのだ?〉と聞いたが?』

「うーわぁ……」

 一人称の使い分けがままなってない。と頭を抱える。

『ただ、少しオマエの血で服が赤くなっていてな、少し怖がられた』

「……ほんとだ、少し……いや、少しどころか結構ついてるじゃないかコレ!?」

 起きたばかりというのもあって今言われて初めて気づいたが、胸元は完全に真っ赤に染まっていた。

「ていうか、血痕とか残っていないのか?!大丈夫なのか?」

『それに関しては安心しろ。幸いにも、夜に通り雨が降っていたぞ恐らく今頃すっかり跡えてるだろう』

「……心配だなぁ」

 確かに外を見れば、まだ少し雨が降っている様子だった。ベランダと窓に水滴が残っているのも見て、通り雨と言っても、それなりの雨が降っていたのであろう。

「……とりあえず、何か飲もう」

 と、僕はベッドから立ち上がり、リビングへ向かった。

『所でレイよ、どうするのだ?』

「『どうする?』って、僕はどうすればいいんだ?」

 朝から悪魔と言い合う日が来るなんて、考えもしなかった。

 リビングに着いた僕は冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに注ぐ。

『そうだな、まず罪を犯せ』

「どんなことをすればいい?」

『でかい内容から小さい内容までだ。例えば──』

「例えば?」

 牛乳を注いだコップを電子レンジの中に入れ、スイッチを──、

『──人殺しとかをだな』

「人ッ?!」

──思わずスイッチを押そうとする指が止まった。

『何を驚く? たかが人一人を殺すことぐらい簡単な事だろう?』

「殺すって……!そんなことしたら……!」

『したら?したらどうなる?』

 どうなるって、それは──、

「……それは……捕まるだろ!」

──そうなるだろ。

『……フフフッ、グハハハハ!!』

 それを聞いたバラムは、悪魔らしい笑い声を上げた。

「な! 何がおかしい!」

『ハハハッ! 捕まるなどと、そんな滑稽な様を考えて! 貴様は我と契約したのか!』

「いや、普通に考えて人を殺したら捕まるし、罰を受ける物だろ?! それに……」

『それに何だ?』

「……その人の、殺した人の家族とかが悲しむだろ?」

 と、自分の思う答えを返した。が──、

『何を言う? 殺す人間が増えるだけだろう?』

「……は?」

──どうやらそんな意見は悪魔にとってはむしろ逆効果らしい。

『罪を犯す邪魔をする者は殺すのみだ、そうして殺せば、殺す人間がまた増える! そしてまた殺す! それだけだ! グハハハハ!』

「ひ、人を殺す事で笑うなこの悪魔!」

『ん? 我は悪魔だが?』

「そうだった……」

 人殺しという不謹慎なワードで笑う辺りは、今話している命の恩人(というか恩魔?)とも言える存在が、しっかりと悪魔なんだなと再認識する。

「はぁ……」

 その事実に僕は溜息を吐きながら、電子レンジのボタンを押す。

『我は貴様が罪を犯せばそれでいい、言ってしまえば、それだけの為に我は貴様と、コンノレイと契約をしたのだ』

 と、バラムが言う一方、一つの疑問が浮かぶ。

「じゃあ、罪を犯さなかったらどうなる?」

『ん? そうだな……我が飢えを耐えれず貴様を殺すぞ?』

「殺す……? 僕を……?」

『そうだ、罪を犯さない契約者等、そんな人間と契約した悪魔からすれば、その契約はなんの得も無いからな』

 思わず背筋が凍り付く、悪魔に殺すと言われて、そうはならない人間なんて、果たしているのだろうか。

『まぁ、そう怖がるな、そうだな……あと三日は猶予をやろう』

「三日か……」

『ピピピピピ』と鳴る電子レンジの扉を開け、僕の背筋とは真逆にアツアツに温まったホットミルクを取り出し、テーブルに着くいた。

『夏なのにホットミルクを飲むのか?』

 と、バラム。

「逆に聞くけど、悪魔もホットミルクを知ってるのか?」

『知っている……ようだな、我々悪魔の知識という物は、最後の契約から引き継がれる物だ』

「……よくわからないけど、つまり『悪魔でも夏にホットミルクを飲むのは不思議な事』なんだな?」

『われの認識上ではそうなる』

 案外そういう所もあるんだなと、僕はそのコップに入ったホットミルクを啜った。

「夏でも朝は結構冷えるんだよ……それとも、悪魔からすれば季節外れのホットミルクを飲んだだけでも罪になるのか?」

 僕はテレビの電源を付け、いつも見ているニュース番組のチャンネルに切り替える。

『いや、そういうわけでは無いが、その割には、異様に罪を感じるのだ』

「そのバラムが言う罪ってのは、僕達にも感じ取れる物なのか?」

『そうだな……まず、我々の言う〈(つみ)〉という物は、罪を犯した〈人間の審判〉と〈それを罪と制定する契約相手の悪魔の審判〉そして〈天秤の神の審判〉があって、その〈三つの審判〉の内の二つが、その罪を〈罪)とした場合に〈罪〉は生まれる。我々悪魔はその生まれた罪を糧として自我を保ち、力を行使する事が出来るのだ……が、罪の生まれ方には少しばかり例外がある』

「例外?」

『……神が、それを罪か一方的に決める事がある』

「理不尽……というか、神様らしいな……。ちなみにその時に罪は?」

『不本意だが、罪とみなされたからには罪は生まれる』

「なるほど……」

 バラムせかす様に、今からでも人殺し以外の方法で何かしらの罪を犯した方がいいのかも知れないが、どうしたものか……。

「なぁバラム」

『なんだ?』

「一体、どれぐらいの罪を犯せばいいんだ?」

『ふむ、そうだな……一週間に五人殺して贅沢、と言ったところだな』

「つまり『一週間に人を二人殺して普通』ぐらいなのか?」

『そうだ』

「なるほど……」

『正直言って、一つの事がどれぐらい罪を得れるかは僕には分からないが、ひとまず小さい罪を日頃から行っていれば大丈夫そうか……?』などと考えていると──、

『続いてのニュースです。昨日未明、坂見市神港(かみみなと)区美田町のマンションの四階に住む“由崎悟(ゆざきさとる)”さん“由崎愛里(ゆざきあいり)”さん、の夫婦二名が死亡しているのが発見されました。警察は両名とも複数の刃物のような物で切り付けられた跡がある事から、殺人事件として捜査しています。また、亡くなった二名の息子である“由崎大輝(ゆざきだいき)”くんも行方が分からなくなっている事から、警察側は誘拐殺人事件として捜査を続けております──』

 そんなニュースがテレビから小耳に入る。

 そう言えば、利秋さんがそんな事件があったとか言っていたようなと、思い返していると。

『フム、面白いではないか』

 と、バラムが言う。

「何がだ?」

『そのテレビとかいうので話している事件のコトだ……臭うのだよ』

「……? 臭うって何が?」

『……同類の臭いだ。それもかなり濃い、こんな機械越しでも臭う程にな』

「悪魔の臭い?」

『……良かったなレイ、今のこの世には貴様以外にも契約者が、我以外にも悪魔がいる様だ』

「それってつまり……?」

『そのつまりだ』

「そんな……」

 つまり、バラムが間接的に僕に言いたいのは『僕以外にも悪魔と契約した人間がいるという事』とそ『その契約者』は……、

「『二人も殺した』のか……?!」

『そうだろうな……フフフ、人を殺した時の罪の味……思い出すだけで涎が溢れ出る……』

 仕方が無いのかもしれない、僕と同じ状況で、死にかけていた時に、生きたくて契約した人なのかもしれない、でも──、

「酷いな……」

──その人は、生きたいから殺したのか?

『酷いも何も、オマエもいずれこうなるのだぞ、レイよ……』

「……嫌だ」

『……?』

「僕は『人殺し』何て事はしない」

 自分が生き残るために、他人を巻き込んで、幸せを奪ってまで生きる気はない。それでこそ死んだ方がマシだ。

『フフフ、グハハハハハ!!』

 悪魔はそれを嘲笑った。頭だけではなく、体の隅々にまでその悪魔の笑い声が響いた。

『面白い!面白いぞレイ!』

「僕は絶対に人を殺して罪は……」

『レイよ、貴様は蚊だったり、蟻だったりの虫を殺したことがあるか?』

 バラムは自身気に僕に聞いた。

「……あるよ」

『その時に罪悪感を感じたりはしなかったか?』

「……少しは」

『ふむ、レイ、オマエはどうやらまだマシらしいな』

「何がだ?」

『罪悪感がだ』

「……?」

 確かに今までに虫は何度か殺したことはある。蚊は夏に湧いてたかってくるし、なんなら昨日も授業中に纏わりついてくるのを一匹殺した。

『罪悪感、罪の感じやすさという物はいつか薄れていく、そうなると罪も薄れていくものだ』

「……何が言いたい?」

『いずれは〈人を殺さねば罪を感じなくなる〉という事だ。良いかレイよ、食事に置いて大事なのは量ではなく味だ』

「……勝手に言ってろ」

『フッ、そのうち貴様も実感するさ』

「……」

 僕はテレビの電源を落として、ベッドの上に戻った。



******


『レイよ』

「なんだ?」

『何をしているのだ?』

「学校へ行く準備だ」

『学校だと?!』

「悪いか?」

 シャワーを浴びた後、僕は血まみれの部屋着から制服に着替える。

『学び場など別にいかなくても良いだろう?!』

「いいや、こうして生き返ったからには行かないわけにはいかない」

『何故だ?』

「約束事がある」

『特に詳しい待ち合わせ場所とかは決めてなかったな』と、僕はスマホを手に取る。

 画面を付けて一番最初に見えるた時計の時刻は『7:30』普段なら僕はそろそろ屋上へと向かう時間な訳だが──、

『かんな:紺野先輩へ、先に屋上で待っています』

──と時計の下に見えるSNSアプリの通知が『別に連絡を取らなくても大丈夫』とでも言うかの様だった。

 通知の届いた時刻は七時十分、僕が準備をしている間に届いたらしい。つまり現状は十九分以上は彼女を待たせていた訳だ。こうして人を待たせるのは申し訳なくなるから好きじゃない。

『おおっと、罪を感じたぞ?』

 それこそこの悪魔が言う様に罪悪感を感じる。

「……」

『なるほど、人をこの少しの時間待たせただけでこの罪の味……! 悪くはないぞレイよ!』

「黙ってろ」

『グハハハ! 別に良いだろう? これでオマエは、我から殺される事を少しだけ遠ざける事が出来たんだからな』

 バラムの笑い声を聞きながら、僕は部屋の扉を開けて外へと出た。

 透き通るような青空に、鼻から入り気道を冷やす朝の空気。もう二度と体感する事はないと思っていたこの感覚に身を包まれながら、僕は階段を登っていく。

『にしても、誰と待ち合わせをしているのだ?』

「後輩だよ、言っておくけど、手出しはするつもり無いからな」

『ほう……』

 階段を登り切ると、そこにはた、ベンチに座り本を読む、あの眼鏡をかけた彼女の姿があった。

「……ッ」

 日に照らされた余りの美しさに僕は思わず息を飲むんだ。相変わらずの『声をかけるか思わず悩んでしまう程の美しさ』だった。

『なるほど、女か』

 が、そんな悩み何て一瞬にして消し飛ぶ、悪だくみをたくらむ様な悪魔の声が聞こえた。

『そうだな、ここは今すぐその女を突き倒して──』

「絶対にしない!」

『何を言う、罪を犯さねば貴様は──』

「いいか!そんな事は!絶対に──!」

 等とバラムと言い合っていると──、

「えっと……何を話しているんですか?先輩?」

「……!」

──もう二度と聞く事が無いと思っていたその声が聞こえた。

「大丈夫ですか?」

「……」

「あの……?先輩?」

「……」

「紺野せんぱーい?」

「……」

『おい、大丈夫かレイ?』

「……大丈夫」と、彼女の顔を見て言う。すると彼女は──、

「なら良かったです!おはようございます!先輩!」

──あの満面の笑みを僕に返してくれた。

「お! おはよう日出さん!」

 まさかその顔を今日も見れるとは思えなかった。

「今日も……その……!いい天気だね!」

 なんて酷い話かけ方だと自分でも思ったが、こうして生き返ったとしても『どうせは昨日だけの付き合いだろう』と思い切っていた故に、それぐらいの感動が僕の心にあった。

「そうですね!今日もいい天気です!」

 そんな酷い話しかけ方でも、真正面から目を見て綺麗に返してくれる辺りが日出さんだと、彼女だと感動した。

「あ!そう言えば……!」

 日出さんはカバンの中に手を入れて──、

「お返しします!」

 と、両手で差し出してきたのは、昨日貸したままにしていた本だった。

「あ、そういえばそうだった」

「ハイ!ありがとうございました!」

「……」

「その!読み終わった後の背徳感が凄かったです……!どれも話が良くできてそれでも短編らしさを保ったまま──!」


 すっかり忘れていた。

 どうして僕は忘れていたんだろう。

 

「私的には二つ目の話……!いや!六つ目の話も捨てがたくて──!」

 こんなに大事にしてくれて、こんなにしっかりと読んでくれていたのに──、

「でも!この話と1つ目の話って——!」

 どうして僕は感想も聞かずに死のうとしていたんだろう。

 相手が読みたいからじゃなくて──、

「どう思いますか——!」

──読んで欲しいから、感想が聞きたいから本を貸したんじゃないのか?

「──あのー、先輩? 大丈夫ですか?」

「……あ! ゴメン! ちょっとボーッとしちゃってた!」

「あ! その……! 良いんですよ! 私だってちょっとお話が長かった気がしますし……その……」

 お互いに目を合わせる。

 そして僕の口から出てきた言葉が──、

「読んでくれてありがとう」

──なんてベタな言葉だった。

「私も! 貸してくださって有難うございました!」

 けれど可も無く不可も無い、単純な感謝の言葉だった。

「とりあえず!こちらをお返ししますね」

 と、改めて日出さんは両手で僕にその本を手で渡す。

 僕は「うん」と言って、僕は手をさし伸ばして本を──、


『ムニュッ』


──ムニュッ?

「あ……え……その……こんの……先輩?」

 その手は、本では無く、日出さんの胸を掴んで……いや、コレは掴むを超えて確実に揉んでいる。僕は無意識のうちに彼女の胸を揉んでいた?

「あの……手……」

『ふむ、良い触感、良い罪だ』

 そのバラムの声が聞こえて、何となく察しがついた。

「あああああああああああ!!」

 僕は急いでその手を引いた。

 何で? どうして? こんな事あるのか?! いやそれよりも先に——!

「誠に申し訳ございませんでしたあああああ!!」

 僕はその場で精いっパイ……!いいや!精一杯の謝罪の構え、日本人に古きより伝わる謝罪の究極形態である『土下座』をして大声で誤った。

 どうせならまた身投げした方が良いんじゃないか? 今度は夜じゃなくて今、明るいうちに自分を見せしめるようにして──!

『少し気になったのでな、手を使わせてもらったぞ?』

 この悪魔!

『まったく、貴様も男だろう?気になったのであれば男気を出せば良いだろうに』

 そんな感じで男気と言う言葉を悪魔に使ってほしくない!

 よし! また死のう! 今度こそは皆が僕の死を求めている筈──、

「……顔を上げてください先輩!」

 だけど──、

「コチラこそ!ごめんなさい!」

 彼女は馬鹿と言えるほど人が良いようで。

「どうして……ってええ?!」

 僕が頭を上げると、日出さんまで頭を下げていた。

「私があの高さに本を差し出したのがいけないんです! 私の方が身長が低いのに! 先輩は手を下げて取らないといけないので……! その……! ごめんなさい!」

 流石に無理が有る。

 けれど──、

「その、だからお互いさまと言う事で……!」

 それが彼女なりの生き方の様で──、

「お互い様です!先輩!」

──顔を赤くしながら、僕を許してくれてしまった。

「……フフッ!」

「あハハッ!」

 気付けば僕達は笑っていた。

 そうしてお互いの恥ずかしさを隠す様に笑った後、僕は日出さんから本を受け取り、彼女と共に學校へと向かうのであった。










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