6話 この世界の飯不味くない?
正午まで本を読み漁っていた僕にリオ団長のお迎えが来た。
僕は文字を教えてくれた女性に礼をしてから、リオ団長と共に第三騎士団の食堂へ向かう。
「まさかミアとお前が仲良くしてるなんてな。アイツ、態度悪いから仲良くするやつなんてあんまりいないのにな」
帰路の途中、リオ団長が僕に言った。あの人、ミアって名前なんだ。
「確かに口悪いですけど、優しい人でしたよ? 文字も教えてもらいまし?」
「……ほう? 珍しいこともあるもんだな。彼女は宮廷魔導師をしていてな。気に入った者としか喋らないんだ」
ほぇ〜。宮廷魔導師とかよく分からないけど、凄そうってことだけ分かった。
ミアさんの話をしていたらいつの間にか食堂へ着いていた。
そして、ここで今まで忘れていたことを思い出す。
この食堂の飯は味がしない!不味いとも言えないが美味しいとも言えない。
第三騎士団の食堂は美味しさより、栄養分重視なのだ。
「さて、飯だ。厨房から受け取って食べるといい。俺は部下達の訓練を見てくる」
そう言うとリオ団長は食堂から出ていった。僕は厨房へ向かう。
「あのすみません。キッチンって借りることができますかね?」
厨房に入ってすぐこの第三騎士団の料理をしていると思われるおばちゃんに言う。
「ん? あんた料理するのかね?」
「はい。どうもこの世界の味に馴染めないみたいで」
「それじゃあしゃあない。じゃんじゃん使っておくれ。食材はその冷凍箱に入ってるから」
あれ?意外とあっさりオッケーが出た。ちなみに、冷凍箱って言うのは魔法で常に冷えてる箱で冷蔵庫みたいな役割だった。
僕は日本にいた時、家族から家政夫みたいに扱われてたから、料理はお手のもんよ。
僕は生ゴミの骨を洗い、出汁を取っていく。そして、骨を取り出し、そこに人参やキャベツ、じゃがいも、薄く切ったお肉を順番に入れていく。そして、煮込んでる間、冷蔵箱に入っていたパンを常温になるまで放置する
「ほうほう。どうして骨を入れるのかね?」
僕の料理を見ていたおばちゃんが問いかけてくる。なるほど、異世界の料理に興味があったと見た。
「骨を入れると出汁が取れるのです。ワカメや鰹節とかあればもっと美味しくなるんですけどね」
「ワカメは無理だね。ここらへん海がないし滅多なことがないと手に入れれないよ。鰹節……とやらは聞いたことないね」
「う〜ん。情報感謝です。そして、とりあえず完成です。お味見してみます?」
「是非是非」
自分の昼食用とおばちゃんのお味見用の2つの皿に盛り付ける。
「いただきます」
「それも異世界の流儀ってやつかね?」
「そうですね。食材に感謝して、それを作るまでに関わった人達に感謝していただきますって意味だね」
「いい言葉だね。それじゃあ、私もいただきます」
僕はスープを口に運ぶ。
あ〜。美味しい。やっぱり、出汁は正義だわ。短時間しか出汁を取れなかったが、薄く切ったお肉からも出汁が出て、スープ全体に旨味が染み出ている。うん。美味しい。
「な、な、なんじゃこりゃ!? うまい!! だだ、野菜スープのはずなのにこの旨さ!?」
「これが出汁の力ってやつです。あ、パンいります?」
どこの国も変わらず、パンをスープにつけて食べる風習はあるみたいだった。そもそも、この世界のパンは硬すぎてスープとかに溶かさないと食べれないんだよね〜。
モクモクと食べるうちに完食してしまっていた。
「ごちそうさまでした」
「いや〜。いい勉強になったわ。出汁でこんなに変わるとわね」
「骨や海藻からはいい出汁とれるので試してみてください」
「ほうほう。なるほど。色々とありがとね。また、ここ使っていいから。皿とかは私が洗っておくからね」
「ありがとうございます。皿洗い手伝いますよ」
「いや〜できた男だね〜。それじゃあ、頼もうか」
僕とおばちゃんは料理についてなどで色々な話をしたのであった。特に臭みの消し方とかの料理法はとても好評だった。
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