4話 叡智の女神の使徒
気がつくと僕は謎の真っ白な空間にいた。周りには何もなく、終わりのない真っ白な世界だ。
第三騎士団の客室で眠りについたはずなんだけど……? もしや、また拉致られた?
「あんまり、人の部屋を見ないでほしいわね。まぁ、何もないけどね」
謎の空間を見渡しているといきなり、背後から話しかけられる。振り向いてみると、そこには、白髪でこの世の者とは思えないほどのかわいらしい美女がいた。
「……あなたは誰ですか? ここは何処ですか?」
「私? 私はこの世界の神の一人、叡智の女神ソフィアよ。そして、ここは私の部屋? 世界? まぁ、私だけの空間ね。あなたの魂だけをここに喚んだ感じよ」
神……ね……? そもそも、僕はそんな存在信じていなかったけれども、目の前にいるしね……。
「まだ、半信半疑ってところかな? まぁ、いいや。単刀直入に言うわ。あなた、私の使徒にならないかしら?」
「……ちょっと何言ってるか分かりませんね。僕以外にも異世界人や僕以上に有望な人はいたと思いますよ? それに、使徒と言うのがよく分かりませんね」
僕は思ったことを全て口にする。
「う〜ん。強いて言うならあなたの持ってる地球の知識が欲しいからね。私はね、この世界以外の世界記憶に感触できないのよ。でも、異世界から来た者が持ってる記憶はこの世界に来た時点で私の管轄に入るから感触ができる。あなたのクラスメートのおかげで知識のレパートリーが増えたわ。でも、精神的肉体的にどんな害も受けない【健康体】のスキルを持ってるあなただけは見れなかった。しかも、キョウヤの記憶ではあなたは一番の博識だったのよ。使徒の契約をすれば、私の精神干渉にスキルが引っかからない。だから、私の使徒にならないかしら?」
つまり、知識を寄越せってことね。そもそも、人の記憶を覗くなんて怖!
「大丈夫よ。エッチな記憶とか何千何万と見てきたのだから。別に私は恥ずかしくないわ」
いや、こっちが恥ずかしいんだよ! しかも、美女が言うことじゃない!
「もちろん、見返りは期待して頂戴。使徒のスキルと神器、それと、この件は私のワガママだから一つだけ願いを叶えてあげるわ」
……知識を渡すだけで3つも……。しかも、願いを叶えてくれる……。
「ちなみに、願いごとは私ができることの範囲よ? 魔王を倒して、とか言われても困るだけだもの」
バレたか……。女神パワーとかで倒してもらおうとか思ってたのにな〜。あっ、それなら……。
「その話、受ける」
「良かったわ! さぁ、儀式するわよ! そこで跪いて」
僕は叡智の女神の言うとおり跪く。って言うか気が早い。
「それじゃあ、やるわよ。【汝に、叡智の女神の名において、世界の秩序を正し、民を護り、魂の契約を交わすことを命ずる】」
ソフィア様がそういうと、僕の身体から謎の光が放ち、その光がソフィア様と僕を取り囲む。
「よし。これでオッケーよ。それにしても興味深い本ばっかり読んでいたのね。ふむふむ、日本も面白いわね」
ソフィア様がそう言うと謎の光はソフィア様に吸い込まれ、消えていった。これが魂の契約とやらなのだろう。ソフィア様が僕の記憶を見ているように見えるので多分成功したのだろう。
「今、【叡智】と【大賢者】の2つのスキルを与えたわ。【叡智】は世界記憶への最高干渉権を持つスキルで今まで起きたことなどを知ることができるわ。【大賢者】はその【叡智】から情報を読み取るために使う自律型スキルよ。膨大な量の情報が一気に頭に流れる頭がパンクしちゃうからね。ちょっと自分を【叡智】と【大賢者】で鑑定してみて頂戴。願うだけで見れると思うわよ」
【大賢者】、【叡智】で僕のステータスを見せて
『了解いたしました』
うぉ!? 脳内で声が響く。
【ステータス】
《名前》
佐久田 陸
《能力》
生命力:C+
魔力:C−
腕力:C
脚力:C−
器用力:B+
《スキル》
健康体 叡智 大賢者
【隠しステータス】
視力:S+
精神力:S+
知力:S+
反射神経:S+
魔力操作力:S+
適正属性:摂理
宗教:叡智の女神
色々とツッコみたいんだけど……。隠しステータスって何? 適切属性:摂理って何? なんで隠しステータス全部S+なの?
「隠しステータスがこんなに規格外な人がいるなんてね。始めて見たわ。これも、リクを使徒にした理由ね」
「……何一つわからないので説明おねがいします」
『了解いたしました。
隠しステータスとは、基本的な情報を載せたステータスと違い、変わることのない情報を載せたものです。
適正属性:摂理とは、世界の摂理に干渉できる魔力属性です
ステータスS+とはステータスの評価の最上級です。E→D→C→B→A→Sの順に評価が上がります』
だ、【大賢者】ありがとう…。ソフィア様に聞いたんだけど、結果オーライだし、いっか。それじゃあ、魔法と魔力属性について教えてほしい。世界の摂理とかよく分からないし。
『了解いたしました。
魔法とは魔力を消費し、万物の現象を擬似的に起こすことです。このとき発生する現象は擬似的なので、魔力の供給がなくなれば消えます。
魔力属性とは、属性魔法を使うときに消費する魔力の種類です。魔力属性には火属性、水属性、土属性、風属性の四大属性と光属性、闇属性、生属性、死属性、聖属性、邪属性の六天属性があります。摂理属性は擬似的に現象を起こすのではなく実際に現象を起こすことができる属性で神の属性と呼ばれてます。他に、誰でも使える無属性魔法というものもあります』
え〜。聞いてわかったこと……。僕も意外とチートだわ。それと、魔法の解釈が間違っていれば、例えば火を魔法で出すとして、火属性の魔法で出したら、それは火で見えるような擬似的な火で、摂理属性の魔法で出したら、それは実際に水素や炭素が酸化してできた火ってことなのかな?
『その解釈であってます』
いや、面倒くさいし、ややこしいわ。この世界の理論。地球の理論も面倒くさかったけど、こっちは魔法とかも絡んできて余計面倒くさい。
「ねぇねぇ、自分のスキルとお話するのはいいけどさ〜。ずっと黙って待ってるのもつまらないんだけど?」
「あ、すいません」
ちょっと【大賢者】との話が盛り上がっちゃって怒られちゃったわ〜。
「はい。これがさっき言ってた神器ね。神殺しの短剣って名前よ。実際に神殺しに使われた短剣で、とても強力よ」
「ほうほう」
短剣を受け取ってみると驚いた。意外と重いのである。まぁ、短剣を持ったことすらないから分からないんだけどね。
「それと、その短剣は紋章として魂に保管することができるわ」
そう言うと短剣は右手に紋章を付け、光となり消えた。
なるほど、便利だ。
「さて、最後にリクの願いを聞きましょうか」
あ、始めて名前で呼んだ。そういえば、僕もさっきまで叡智の女神とか心の中で言ってたのに、今ではソフィア様って呼んでる。これも使徒になったせい? まっいっか。
ちなみに、願いは既に決まってる。
「僕の願いは、ソフィア様に恭也の手助けをしてほしいのです」
僕の親友である恭也の手助け、それが僕の願いだ。これなら、最前線で戦う恭也の生存の確率を上げることができる。
「手助け? 具体的には?」
「ん〜。恭也のためになりそうなスキルとか与えてあげれません?」
「いいわよ。それぐらいなら」
「ありがとうございます」
「よし。それじゃあ、そろそろ魂を体に戻すわね。あ、一応言っておくわ。リク死ぬんじゃないわよ。リクにはやってもらいたいことが沢山あるからね」
そう言うとソフィア様は僕の額にデコピンをして、手を振った。それと共に僕の意識も遠退いていった。
読んでいただきありがとうございます!
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モチベアップに繋がって執筆が捗るです(*´ω`*)




