35話 魔王軍四天王グラニ
《side恭也》
俺はスライムから放たれた伸びてくる触手を切り刻む。俺の精霊武器は触手をすぐ凍らせ、触手からの再生を防ぐのである程度戦えている。だが、防戦一方……、【全知全能の勇者】のスキルでも、あのスライムのステータスが分からないから弱点も分からない。スキルをフル活用しているがジリ貧だ。
「勇者様! 手助けいたす!」
いつの間にか、周りには貴族達を避難させ終わった第一騎士団の騎士達が取り囲んでいた。
「総員突撃ぃ!」
「「「おぉぉぉ!」」」
「おい! そんな武器じゃ」
第一騎士団に俺の声は届かず、そのまま突っ込んでいく。彼らはスライムの触手を次々に切り刻む。だが……。
「「「ぐわぁぁぁ」」」
スライムの触手はすぐに再生。そして、騎士達を薙ぎ払う。
ここで好機。スライムの気が騎士達へ向いたので俺への攻撃が減った。
「[風の歩み][光の歩み]【破砕】」
俺は魔法で加速し、スキルで触手ごとスライムの身体を吹き飛ばす。すると、核らしき球体が見えた。
「そこだぁ!」
俺は核に精霊武器を振りかざす。
「!?」
【危機察知】のスキルが反応した。そして振りかざすのをやめ、後方へ飛ぶ。次の瞬間、床から棘のような触手が生える。
キーーン。
俺は精霊武器で触手を防ぐと金属同士がぶつかったときのような音が鳴り響く。
さっきまで柔らかい触手だったのにいきなり金属みたいになったぞ!?
「うむ。これも防ぐのですか」
「人の形をしてなくても喋れるんだな」
「私の能力は擬態。発音器官だけ再現すれば喋ることも容易なことです」
「それはめんどくさいな」
「なるほど、見抜いておられますか」
擬態……。柔らかい触手だったのが硬くなったのは、動物の針か金属の組織とかを真似したのだろう。この剣でも斬れないから厄介だ。
「そういえば、名乗ってませんでしたね。魔王軍四天王の1人、変幻自在のグラニです」
スライムは思い出したかのように名乗る。
グラニ……。アメリア様から聞いたことある。魔王軍の4柱であり、全てを喰らうスライム。取り込んだ者に完璧に擬態し、奇襲をかけると言う。
キツイな。こっちはこの世界に来て、たったの半年……。勝てるかどうか……。
「それにしても、厄介ですね」
次の瞬間、四方八方から触手が突き出る。
「[魔力障壁]」
俺は障壁魔法を展開、プラス精霊武器を盾の形にして防ぐ。
「普通の生き物ならばこれに反応できる訳がないのですが……。それにその武器も厄介ですね」
「俺の親友の特製だからな」
「確か名はリク。早々に始末しておけばよかったですな」
「陸はお前なんかに負けはしないさ。なんなら、俺より強いかもしれないぜ?」
「……確かに彼自身も厄介そうですね」
グラニはスライムの状態でもわかるほどニヤッとする。
「なら、お前たちを殺したあとリクも殺してあげますよ」
「そうなことさせねぇよ!」
俺は触手を切り刻みながら、グラニへ接近するのであった。
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